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ロック王国物語編

Episode.2

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「作戦はいかほどだ?」
ザスールは1階の小部屋で衛兵と話をしていた。

小部屋と言えどこの図書館にあった感じの部屋だ。


僕も気になりザスールの元に向かった。
「こちらの戦況でよろしいかと」
「今回は陛下は同行しないがこれでよいのか?」
「ええ、この数の多さなら敗北は免れます」

ちらっと戦略を見た。
ザスールと衛兵が小部屋から出て誰もいなくなると僕はそれを触った。

「これだと負ける」

意識がこの紙の中に飛ぶ。
挟み撃ちの攻撃じゃないと我々の軍は負けます。と声が飛び交っていた。
負けるのはどこまで痛手なのか。

「おい!! なにをしている」
意識を取り戻すと衛兵に手を抑えられていた。

「いっ……」
「この曲者め!!」

「ああ、戦略がめちゃくちゃだ」
「この!!」
鞭で叩こうとしたところにザスールが割り込み

「このお方は陛下の物だ、罰則は許さぬ」
「な、も……申し訳ございません」
と下がった。


「ヒスイ様、大丈夫でしょうか?」
「はい……」
少し震えてしまった。

ザスールが膝をつき
「ヒスイ様、怖い思いをさせてしまい申し訳ございません、ですがこちらは戦略を立てる部屋です、入り口にも関係者以外は立ち入り禁止とあります」
「……申し訳ございません」

ザスールは立ち上がり衛兵に向かって告げる。
「すまない、説明不足はこちらの非だ。怒りを収めてくれないか?」
「はい」


「では、ヒスイ様他の場所を案内しますので、どうぞ」と手を差し伸べてくれたのでそれで立ち上がった。


「そこの者、食堂室にいるマーガレット姫君にヒスイ様の案内は庭園に向かうと告げてくれ」
「かしこまりました」


図書室から庭園に移動した。
手首が少し痛むのは黙っておいたほうがいいか大したことはない。


「ヒスイ様、こちらが庭園でございます、庭園は何カ所かあり、ここはヒスイ様のお部屋からも一番近いところになります」

扉を抜けると温室があり、城から見える外の景色はとても綺麗なものだった。
「すごい、綺麗です」
「海が見える一番いい庭園です」


真っ青に広がる海はきらきらと太陽の日差しによって輝いていた。
漁船も出ていて漁獲量はロック王国が一番と聞いていたのにも納得した。

「夜の食事は漁で採れた新鮮な魚を頂けますよ」
「楽しみにしてます」

マーガレットと合流しザスールは他の仕事に行くといい別れた。

「そういえばヒスイ様はΩなんですよね?」


「はい」と答えると

「Ωの分際でよく城にこれましたね」と非難してきた。

「……えっと僕はただその施設にいただけで……陛下が…」
あれ? これって他の人に言って良いんだっけ?


ザスールの言葉を思い出す
「いいですか、陛下があなた様をご購入されたことは秘密になさってくださいね」

とそうだ、このことは誰にも言ってはいけないことだ、確かこの世界でのΩの立ち位置は奴隷または家畜としての存在しか認められていない。

こうして城の入ることやましてや王の妻候補としてここにいることなんてあっていいわけじゃない。


「陛下がどうされました?」


「あ……いえその……」
マーガレットが寄ってきて壁と挟まれる。

首に顔が近づき匂いを嗅いだ。
「本当に臭いわ、Ωなんていなくなればいいのに」
と耳元で小さく呟いた。

鼓動がびっくりするくらいに早く動いた。
「マーガレット様なにをされているのかしら?」

そこに来たのはビオラだった。


「あら、ビオラ様、陛下のご様子どうでしたか?」
「ええ、本日も気持ちがよかったですわ」


「そうでしたか」
「あら、ヒスイ様が困ってらしゃるわよ」

「ごめんなさいね」とマーガレットは離れていった。
姫達怖すぎる。


それにビオラが言った、気持ちが良いこととはいったいなんのことなのだろうか。
もしかして風呂を一緒にしたとか?
でも伯爵家のご令嬢ともあろうものがそのようなことをしてもよいのだろうか。


「あら、興味がおありなのかしら?」
ビオラがこちらに来て顎をくいっと持ち上げられた。


「お顔を真っ赤にされて、さぞ美味なのでしょうね」

「え?」

顔が近づき耳元でこう告げた。
「陛下と戯れです」と

戯れ……=性行為。

「あ、そ、そうなのですね」
あまりの衝撃的な発言に僕はあたふたしてしまった。

「ヒスイ様そろそろお部屋にお戻りになったほうがいいかと思いますわ」
とマーガレットに言われたので僕は姫達を後にした。


高鳴る鼓動よ落ち着け、姫候補なのだ当たり前じゃないか、、、。
陛下が誰を抱こうと僕には関係ないことだ。

部屋の前に衛兵が立っていた。
「あ、お帰りなさいませヒスイ様」
と笑顔で接してくれるのはβの衛兵、ロジャーだった。


「た、ただいま戻りました」
「お顔が赤いですが大丈夫ですか?」
「あっ……だ、大丈夫です、あのロジャーさんはここにずっとおられるのですか?」
「はい、交代制ではありますがヒスイ様の護衛です」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
ぺこっと挨拶して部屋に入った。


ザスール様に僕の部屋の前はβにしておくねと言われてたのを思いだした。
ご苦労なことだ。
Ωの僕なんかを護衛したっていいわけないのに。


夜の時間まで部屋に入りベッドで一眠りすることにした。
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