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第八篇第三章 プレジアの宰相
反乱軍が向かう未来
しおりを挟む「へっ…お情けかよ。アンタ本当に甘くなったよな」
「エルヴィス…お前が其れを言うのか?」
「確かに」と笑うエルヴィスの横でクスリと
笑みを浮かべたウィルフィンは足並みを揃え
山道へと抜けて行く事となった。
「なあ、ウィルフィン…。幹部達には全て話した…更に其の下の連中には幹部の口から今回の会談の件は伝わってる…」
「ああ。会談終了後に話した今回の顛末は幹部達にも波紋を拡げるだろう」
「納得しない奴も出て来るだろう。もし、組織を離れたいと言って来るヤツが居たらその通りにしてやってくれ…」
ウィルフィンは夕刻前の会談終了後に無線で
にはなるが幹部達に事の顛末を伝えている。
其処に同席しなかったエルヴィスは幹部達の
反応をまだ知らないままだったのだ。
だからこそ、エルヴィスの話す不安を一笑に
伏してしまったのかもしれない。
幹部達の声だけを拾い上げれば此れ迄に築き
上げて来た総長エルヴィスへの忠誠心はそう
簡単に途切れる物では無かった。
ウィルフィンの言う“波紋”とは、変わらずに
反乱軍としての責務を全うすると返事をした
幹部達に示す次の指針次第という事。
たった一つ、組織を継続させるならば其処の
判断だけは間違っては行けないとエルヴィス
の次の判断を待つ事となった。
すると、夕焼けに染まった焦がれる様な真紅
の空を見上げてエルヴィスが口を開く。
「…ウィルフィン。バルモア王女シェリーの件は決定通りだ…そして俺は先に為すべき事を後回しにしてしまっていた事を今になって自覚したよ…」
「そうか…やはり、そうなるよな」
「ああ。其れにはやっぱりアイツ等の力が必要なんだ…悪いが全員に声を掛けて欲しい」
エルヴィスの一言に頷いたウィルフィンは
歩みを進めながら懐に備えた無線機を手に
再び幹部達へとある意思決定と報告を兼ねて
電波を飛ばす事となった。
異国の人間を夷狄と呼び排除する事に拘りを
見せて来た護国師団反乱軍。
其の総長であるエルヴィスが今回のバルモア
王女シェリー・ノスタルジアとの会談で決定
した此の決断から新たな指針が反乱軍幹部達
に伝えられて行く。
異国の人間を見逃して、先に為すべき護国の
為の事案を聞いた幹部達の反応は「遂に」と
言った様な反応だった様だ。
中には腕をぶす者、残酷な結末を想像する者
一人の女性は涙を流しながら此の判断を聞き
入れる様な背景もあった様だ。
「…決着を付けよう。俺達の永きに渡る因縁に…!」
そう呟いたエルヴィスの隣でウィルフィンの
髪が緩やかな風に吹かれて行く。
護国師団反乱軍が見据える未来は混沌の結末
を予感させる物だが、避けては通れない。
其れは後に語られる事となる大事件。
其の大事件の行く先に“最悪の結果”が待つ事
は今は誰も知る事の出来ない物語だ。
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