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第八篇第二章 運命の会談
王女が継ぎし太陽“約束”
しおりを挟むそして、シェリーの記憶の中へ飛び込んだ
彼等の意識毎、時計の針は十年の刻を刻む。
王女シェリー・ノスタルジア十五歳。
つまりは、今から三年前の出来事だ。
シェリーの父であり国王が病床に伏せる事態
となり政に置いても母ローラ・ノスタルジア
は中心となって動き始めて行く。
ノスタルジアという王家だけではないが王族
には本家と分家が得てして存在する。
シェリーの産まれた血族は本家の血筋。
だが親戚同士に相当する本家と分家は通例の
親戚関係とは程遠くいざこざの絶えない関係
を何百年と保って来ていた。
其の理由は所謂、跡目争いである。
本家と分家は入れ替わって来た歴史を持つ。
例えば、本家に子が産まれず養子を取るなど
しても其れは本家の血筋では無いと周りから
やっかみの対象となり分家の声を肥大させる
事にも発展しかねないからだ。
言い難いが政治の世界にも与党と野党が存在
する関係値をイメージして貰いたい。
国王が倒れた事で母ローラが矢面に立ち王女
であるシェリーはまだ十五歳。
分家の人間達がこぞって政に口出しを始める
事を皮切りに二年の刻をまた進める。
母ローラすら病床に伏してしまった。
勿論、十七歳となったシェリーが出張れる程
国家の浮き沈みを担う政治とは壁が高い。
バルモアの中枢は今やノスタルジアの分家の
人間達が中心となってしまっている。
其処に運命が新たな火種を持ち込んだ。
プレジアからの謁見希望者が現れたのだ。
其の人物とは王国プレジアの独立師団革命軍
の総長を名乗るノア・クオンタム。
プレジアの開国を果たすべくバルモアの王家
の人間を公使として招きたいとの腹積もりを
訊いてシェリーは母の元へと訪れた。
「お母様っ…」
「あら、シェリー…どうしたの?」
仰向けでベッドに寝転がるローラの表情は
とても暗く体調の悪さを知るには一瞥すれば
充分という容態であった。
そんな表情の母を見てより一層シェリーの
覚悟は確固たる物へと変貌して行った。
「先程、プレジアから使者が来ていました。その使者が言うにはプレジアを開国させるおつもりらしいのです…ですから、お母様っ…かならず一緒にあの景色を見に行きましょうねっ」
シェリーが軽く首を横に曲げて笑顔を浮かべ
るとローラは幼少期の出来事を思い浮かべて
目頭を熱くさせると頷いてまた眠りに付く。
「姫様…本当に此のお話に自らが乗るおつもりですか?」
「レザノフ…貴方は心配ですか?」
廊下に出たシェリーを待ち受けていたのは
執事であるレザノフ・スタールマンだった。
心配そうな表情でシェリーを見つめていた
レザノフに向かってシェリーが続ける。
「彼等の話を全て鵜呑みにしたとして適任は私以外には居ません…両国を繋ぐ架け橋としてお母様に元気になって貰う為に頑張りますっ」
シェリーは公使へ自ら推挙へと押し進む。
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