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第八篇第二章 運命の会談
金獅子の目醒め“覚悟”
しおりを挟むレイナはエルヴィスを引き寄せ正面から此方
へ歩いて来る野盗の様な見た目の五人組から
わざと遠ざかる様に道の隅を歩く。
するとニヤニヤと笑みを浮かべた野盗の一人
がレイナを見て口を開いて声を掛けて来た。
「お嬢ちゃん達、もう日が暮れるぜ?あぶねーよ?早くおウチ帰んなきゃ…」
レイナは更にエルヴィスの事を引き寄せると
黙って其の場をやり過ごそうと考えた。
「あらら?何コイツ?無視してやんの」
「ん?でもちょっとべっぴんじゃねぇの?」
「はあ?ガキが趣味だったか?お前」
「んな事今はどうでもいいんだよ。腹も減ったしよ…それに…女なんてもっと足りてねぇだろ…?」
「ギャハハ…違いねぇ…!」
言いたい放題言ってのける野盗共はレイナ達
を背後からゆらりゆらりと追って来る。
一度は通り過ぎたが引き返して来たのだ。
レイナは身震いする程の根源的な恐怖を其の
身で感じ取り悪寒が由来の寒気に襲われる。
そして、エルヴィスの事をチラッと一瞥する
と、とある判断を下してしまう。
目の前が丁度二股に別れた道。
左に行けば村落へは真っ直ぐで右に行けば
少しだけ遠回りになるが村落へは辿り着く。
「エルっ、ごめんっ!お姉ちゃん一つ買い忘れしちゃったみたい…!ちょっと行って来るけど日も暮れちゃいそうだから先にエルは戻ってて?」
「え…?俺も…一緒に行くよ…」
「いいからッ!!お姉ちゃんの言う事が聞けないのッ!!?」
エルヴィスはビクッと身体を固まらせる。
其れも其の筈、産まれてこの方、姉のレイナ
が怒鳴る所も怒る所すら見た事が無かった。
エルヴィスは首を横に振りたいのだが吐息を
荒くして睨み付ける様に怒鳴るレイナの表情
が其れをさせてくれない。
「早くッ!!走りなさいッ!!エルッ!!」
レイナの其の一言がトドメとなった。
怖さで油汗を掻きながらエルヴィスは何も
言わず、いや正確には言えずに振り返ると
いつも通り左の道へと一目散に走った。
其の姿を見送るレイナも肩で息をしながら
汗が其の表情を崩し冷静さを失わせていた。
「オイオイ…何そっちだけで盛り上がってんだよ…?そろそろ俺達とも盛り上がろうぜ?なあ…お嬢ちゃん…!」
「ば、馬鹿言わないで…誰がアンタ達なんかと…」
近寄って来る男達の姿を一瞥したレイナも
脇目を振らずに右の道へと駆け出した。
そして、こんなになってでもエルヴィスの事
を逃したレイナの思惑は完全に解る。
レイナにだけ見えていたのだ。
彼等が腰元からサッと取り出していた刃先が
鋭く、そして怪しく光るナイフの存在を。
だからこそエルヴィスを逃す事を最優先と
考え二股の道で別れる事を選んだ。
レイナは恐怖に支配され声すらまともに出す
事を出来なくなっていた。
其々が別れ道を境に一心不乱に駆ける。
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