RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第八篇第二章 運命の会談

金獅子の目醒め“死別”

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エルヴィスはひた走る。

恐怖で足が何度も攣りそうになりながらも
其の足を止める事をレイナが見せたあの表情
がさせてくれないのだ。

エルヴィスを支配したのは「恐怖」。

其の恐怖がエルヴィスをひたすらに走らせて
居たのだが、ふと野盗達の眼を思い出す。



「(アイツ等…イカれた眼してやがった…)」



レイナの表情、そして野盗達の雰囲気が五歳
のエルヴィスの根源的恐怖を呼び覚ます。

だが、其処で何故かエルヴィスは足を止める
事がやっと出来る様になっていた。

其れは何故か。

ふと現実を思い出したからだ。



「あれ…?イカれた目をしてた野盗共の所に…姉ちゃんを一人で…。アレ、でも姉ちゃんは「走れ」って。なんだ…なんかがおかしいぞ…」



エルヴィスは振り返る。

来た道を振り返り自身の過ちに気付き血の気
が引いて行くのと同時に唇を噛むと来た道を
全速力で引き返して行った。



「クソッ…!なにやってんだ…俺は…姉ちゃんの笑顔をまもるんだろ…?まもらなきゃいけないんだろ…?」



息を切らしながら二股の別れ道に戻って来た
エルヴィスは左右を見渡しレイナを探す。

そして、右の道の奥にレイナが持っていた
買い物袋が無造作に転がっていた。

其れを見た瞬間に今度は右の道を走る。



「無事でいてくれよ…姉ちゃんッ!!今助けに行く…絶対に俺が“護る”からッ!!」



そして、エルヴィスは走った。

ただただ、ひたすらに走って行った。

だが、日が落ち切り山道が夜の帳に包まれて
もレイナの姿を見つけられていなかった。

もう限界が近いのか、足元がフラつく中で
エルヴィスは小さな灯りが見える古びた倉庫
の様な建物を発見する。

誘われるかの様に中へと入り込むエルヴィス
に少し高い位置から声が聞こえて来る。



「……ん?オイ、此のガキ。さっきのガキじゃねぇか…?」


「おっ。マジだ…噂のエル君じゃねぇの」



ヘラヘラと薄気味悪く笑う五人組が居た。

エルヴィスの入って来た入り口よりも少し
高い位置に座り込む五人組の周りには灯りが
置かれていて視界には映り込む。

だが、其れ以外は暗くて何も見えない。

エルヴィスはフラフラと五人組にレイナの事
を尋ねようと近付いて行くのだが其処で何か
に躓き上半身から転がってしまう。

そんなエルヴィスを嘲笑う五人組の事などは
何一つ気にして等居られなかった。

エルヴィスは自身が躓いた其の何かを近くで
覗き込むと全身を震えさせて言葉を失う。





其の何かとは、全裸に剥かれ冷たくなった
姉、レイナの変わり果てた姿だったからだ。

エルヴィスはふと手のひらで姉レイナの遺体
の頬に触れると其の死に際の姿が見えるかの
様な状態なのだと知ってしまった。

涙の跡がくっきりと見える。



「あー…ちょっと遊んでやってたんだがなあ。ケッサクだったぜ…?最後まで…「エル、ごめんねぇ」って何度も何度もよォ…!」



野盗の一人の声に他の四人も手を叩いて
嘲笑い始めるとエルヴィスが立ち上がる。
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