RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標

氷解の笑顔

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「……ディル。何故貴方が此処に…」


「……フフフ……ソフィア。貴女と同じ、私にとっての仕事の為です…」


「……仕事……?あの男の件は私に一任された筈では…」


「……フフフ……別件ですよ…。ですが余りにも人が揃いすぎました…貴女は此処で退きなさい。逃げられた事にしましょう…!」


「……ッ…何を…?」



ディルの突然の撤退命令に氷の様に冷たい
表情をしていたソフィアですら困惑を隠し
切れずに口を開けて驚いてしまう。

だが、ほんの少しの沈黙の後にディルの命令
ならばとソフィアは武器を仕舞い込んだ。

死蜘蛛狂天の同じ三大幹部の一人と言えども
権威の優劣はある様で渋々納得した形だ。



「……オイ…テメェは勝手に割り込んで来て自由気ままに場を纏め上げてんじゃねぇぞッ!?潰してやるから来いよォ…ッ!!」


「……フフフ……裏帝軍アノン…。誠に勝手ながら私達は此処で退かせて頂きますよ…」



其の言葉と共にディルも刀を腰元の鞘に緩り
と納刀するとフードを被り直した。

撤退を図ろうとしたディルとソフィアを止め
ようと動いたのは傷だらけのアノンだけでは
無くロードもソフィアに声を張り上げる。



「待てッ!!まだ…話は終わってねぇぞッ!オイ、アンタ…兄貴の伝言がまだ…ッ…」



そう叫んでいたロードの言葉が止まる。

何故なら目の前にソフィアが一度の跳躍で
身軽に移動して来ており顔を突き合わせる様
に上目遣いでロードを見つめている。

余りにも近い女性との距離感にほんの少し顔
を赤らめたロードだったがソフィアの言葉で
動揺は瞬時に掻き消される事となる。



「……聞かせて欲しい…兄からの言葉…」



ロードはソフィアの其の言葉に緩りと心の内
に大切に仕舞い込んで居たサバネからの伝言
を一つずつ確かに言葉へと変えて行く。



『ソフィア…。私に取っては君が元気で居てくれる事…そして…君が昔のままの優しい人間で或る事…それだけで私の心は落ち着ける…無茶をするのは幼い時から何も変わっていないんだから…』



紡がれたサバネの伝言を聞いたソフィアが
ロードへと其の返事を言葉にして行く。

だが、驚いたのはソフィアの表情であった。

ロードと背後に居たシグマは何やら頬を紅に
染め上げてタジタジとした姿を見せる。

同じ女性のシェリーすら口に手を当てて鼓動
が早くなりドキドキを感じた自分自身を自覚
しているのは何故か、理由は其の表情。



「……悪いんだけど伝えておいてくれる?…『心配かけてごめん…あと少しなの…お願いだからあと少し…時間を頂戴…ちゃんと謝りに行くから…。あと…今でも変わらず…大好きだよ?お兄ちゃんっ…』って…」



ソフィアはそう言って氷の様な表情を溶かし
まるで太陽かの様に笑顔で兄への伝言を託し
背を向けてディルの元へと走る。

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