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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標
混沌を呼ぶ者
しおりを挟むロードとソフィアが激突していた大滝の内側
に新たな猛者が飛び込んで来た。
其の人間の名前を呼ぶ前にロード達の元へと
今度は腕に傷を負い血を流しながら現れた男
に一度視線が集中する事になる。
「…ッ!おい、シルヴァ…!アンタ大丈夫かよッ!?」
滝の内側へと舞い降りた革命軍シルヴァは腕
を支えながらほんの少し眉間に皺を寄せる。
「………大丈夫。だが、彼奴は何者だ?」
「……アイツにやられたのか…?」
「………いや、此の傷は別だ。だが割って入って来た彼奴があの裏帝軍の男を呆気なく吹き飛ばした……」
シルヴァの肩を支えて声を聞いていたロード
だったが砂煙が消えて行ったタイミングで
怒りに満ち溢れた男の声が轟く。
「…ッがァ……テメェ…此の俺を吹き飛ばしやがってェ……何で邪魔しやがんだッ!?蜘蛛野郎ッ!!!」
砂煙の中から現れたのは怒りで我を忘れた
裏帝軍幹部のアノン・ヴィルヘルムだった。
「……あんな性格やったか?あんのヒョロデカ…」
「もう少し落ち着いた方だった様な…」
余りにも変貌したアノンに対してシルヴァの
背後へと移動したシェリーとシグマが驚く。
そして整理が付いて来た。
革命軍シルヴァと裏帝軍アノンが滝の上の丘
で戦闘を繰り広げて居た筈が気付けばアノン
は滝を割り此の内部の洞窟へと飛ばされた。
だが、其れをしたのは戦闘中だった革命軍
シルヴァでは無く乱入を果たした外套の男。
またも外套の男に視線が集まると其の男は
不気味な笑みを浮かべながら外套のフード
を緩り緩りと頭から外して行く。
「……まさか君も此処に来るとは…」
「……どうして貴方まで…」
「……やっぱりテメェか…ッ…」
此の場で其の男を知らないのは新参者で異国
出身のシグマだけであり周りの反応にシグマ
はキョロキョロと目線を泳がせる。
革命軍シルヴァや裏帝軍のアノンすら其の男
の所属と名を知っている程の人物。
ロードやシェリーにとっても因縁を持ち横に
立つソフィアにとっては現在の仲間となる。
毛先の赤い髪を揺らした不気味な蛇の様に
怪しく笑みを浮かべた死蜘蛛狂天三大幹部
が一人、ディル・ウォンリザードだ。
「………フフフ…此れは此れは…。何処を見ても大物だらけ…随分な人気ですね…?ガスタ殿…!」
ガスタを一瞥したディルはニヤリと笑って
またも周りを緩りと見渡し始めるとシェリー
を見た後でロードで視線を止める。
「……フフフ…怖い顔だね…赤髪の流浪人…。一応、久方振りだと言っておこうか…」
「別に会いたくも無かったっつうの…」
ロードにとっては此の男の真意、腹の底に
眠る何かが不気味で堪らなく何一つ考えが
読めて来る事は無かった。
無条件で流れる冷や汗を垂らしながらロード
は笑みを浮かべるディルを睨み続けて行く。
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