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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標
大滝に開けられた風穴
しおりを挟む「…ニャロウ…兄貴にも話せないのかよ?アンタがそこにいる理由を…!今じゃたった一人の家族なんだろうがッ!!」
ロードは足を振り上げていたソフィアに向け
自身の胸の内に沈み込んでいた想いを口から
吐き出して叫ぶがソフィアの氷の様な表情は
何一つ変わる事は無く唇を噛んで見せた。
「心配は要らない。いつかは話せる時が来るわ…だからこそ今の私にとっては目的が全てなの…だから邪魔をしないで…」
淡々と放たれるソフィアの口振りからロード
はやはり何物にも変えられない彼女が抱えた
彼女なりの理由が在る事を悟って行く。
ロードは拭い去れない悔しさを露わにする。
「…ニャロウ…なんでだよッ…どいつもこいつも頭ごなしに否定できねぇんだ…大義名分掲げやがってよ…アンタがただの刺客だったらどんだけ楽だったか…」
身体を震わせながらグッと柄を握る手のひら
に力が込もって行く様は悔しさに浸る。
出逢って来た反乱軍の人間、そして革命軍に
帝国軍の人間達の姿も思い浮かべた。
其々が己にとっての戦う理由を明確に持つ。
だからこそ嫌いになれる筈も無い。
シェリーを殺しに来た裏帝軍のライアもそう
だったが只々殺しに愉悦を覚える人間になど
ロードからしても思えなかった。
各々にとっての宿願成就の為に辛酸を舐めて
歯を食い縛り戦いに浸る此の世の中を呪う。
やはり此の男は誰にも劣らず優しい。
いや優し過ぎるからこそ他人の事で此処まで
悩みを抱え込めるのだろう。
そして悔しさも同時に溢れ出して行く。
そうは言っても自分自身も戦いに染まり上げ
なければ言葉に真剣さが灯らない事に。
「…頼むから…兄貴からの伝言聞いてくれよ…?なあ…ソフィアさん…」
ロードの苦心の言葉が冷たい氷の様だった
ソフィアの表情をほんの少し砕く。
フッと力が抜けた様に戦闘体勢を緩ませる
ソフィアだったが此処で場面は転換する。
ロード達は一斉に背後を振り返った。
其処からは何故か外から吹雪が勢いよく大滝
の内側へ舞い込んで来ていた。
凄まじい轟音と共に滝の流れで一刀両断され
隠されていたレイノルズ家の墓標が其の姿を
見せつける様に外からの吹雪に晒される。
其の音と大滝に開けられた風穴に驚くロード
達を他所目に何かが大滝内部の岩の地面へと
衝突すると衝突音と共に砂煙を上げる。
「なんや…何があったんや…!!」
「わかんねぇ!!滝を破って何かが飛んで来やがった…!」
「はわわわわわわっ…なんなんですかぁ!」
狼狽えるロード達の言葉の締めと同時に其の
大滝の中へと黒い何かが飛び込んで来る。
凄まじい速度で飛来した其の黒い何かが段々
と彼等の目から見ても鮮明に姿を現す。
其れは黒い外套を纏い刀を握った一人の男。
大滝内部の岩の地面に着地した其の男の纏う
外套が揺れて浮き上がる様に見えた瞬間に
ロード達は其の男の正体を知った。
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