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ネコ娘、ケーキバイキングをする

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 ケーキバイキング当日。

「うわぁ」
「お菓子がいっぱーいっ」

 アザレア大姐さんの家の食堂のテーブルに、色とりどりのケーキが並べられている。
 定番の苺のショートケーキ、モンブラン、チョコレートケーキ、ベイクドチーズケーキ……。

「好きなのを好きなだけ食べていいそうだ。何せ、小麦粉大袋3つ、卵100個、砂糖大袋5つ持ち込まれてたからな」

 呆れ気味のアザレア大姐さんが、子どもたちに向けて言う。
 厨房のルイスは今も見えない速さで手を動かしていた。

「「「いただきまーすっ」」」

 子どもたちはめいめい皿を持って好きなケーキをとっていった。
 子どもの他に招待されたのは、アタイら3人と、レトリー姉ちゃん。

「凄いわね、ルイスさん。ダンジョンでもうまく攻撃を避けていたし、器用さが並外れて高いのかしら」

 レトリー姉ちゃんの尻尾がすごい勢いで振られている。姉ちゃんは甘い物に目がないから。皿に大量のケーキをとって次々と胃袋に放り込んでいた。

「アタシは塩っ辛い酒のつまみみたいなのも、こういう甘いケーキも、どっちも好きなんだよね」

 メリーも上機嫌だ。

「これ、ブランデーの香りがするっス」

 ササミはケーキでも酒の入ったものを嗅ぎ分けていた。

「追加のシフォンケーキとガトーショコラですよ」

 ケーキはみんなの口の中にどんどん消えていく。それに負けじと、ルイスも追加の手を緩めなかった。

「それと、この間のカフェを真似た、フルーツタルトも作ってみたんです」

 ルイスのフルーツタルトは、店で食べたものより美味しかった。
 夢中になってタルトを頬張る。
 お洒落なカフェとちがって、モグモグたくさん食べるアタイを、ルイスは満足げに見ていた。


「エルザにしては、うまくやってるじゃないか」

 キッチンに戻るルイスと入れ替わりに、メリーが声をかけてきた。
 うまくって、えっと……。

「エルザの好きな王子様、やっぱ、エルザが気に入るだけにぶっ飛んだキャラだよね」

 アタイと同じフルーツタルトを食べながら、メリーがつぶやく。
 ぶっ飛んでって、……うん。
 最初は、絵本の王子様みたいだと思ってたけど。
 アタイの好きな人は、王子様から、だんだんルイスになっていった。
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