冒険者ギルド受付の癒し枠~ネコ娘は追放系主人公が気になるようです

八華

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ネコ娘、かき氷を食べる

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 飲み会やらケーキバイキングやら、アタイの周囲は平和だった。
 でも、世間はダンジョンの発生ラッシュで、ちょっと慌ただしくなっていた。

 冒険者ギルド。
 アタイは掲示板で新しく、目立つ大きな張り紙を見つけた。

「南部ダンジョンレアドロップ狩りの募集?」

 ちょっと距離のある南部地方に、珍しいドロップの出るダンジョンが発生したらしい。

「何でこんな離れた街にまで募集が出るんだ?」

 首を捻っていると、受付からルイスが出てきた。

「ああ、そのダンジョン、僕も手伝いに向かうんです。よかったら一緒に行きませんか?」
「ルイスも行くのか。こんな遠くまで募集がかかるって、何なんだ?」
「クーラーボックスっていう、保冷と空間拡張の2つが付与された魔道具が出たんです」
「へえ~」

 以前にミノタダンジョンでとった牛革リュックの上位版っぽいな。

「ダンジョンの出現した場所が砂漠で、管理し続けるのが難しいようです。それで、たくさんの冒険者さんに集中して狩ってもらい、そのあと閉鎖することになりました」
「なるほど」

 今しか手に入らないレアアイテムか。売れば金になるし、自分たちで持つにも良さそうだ。

「メリーとササミの同意が要るけど、たぶん行くと思う」
「そうですか。ぜひ、ご一緒できるといいですね」

 ルイスにそう言われたら、行くしかないじゃないか!



* * *



 魔導列車とギルドが用意したバスを乗り継いで、2日かけて目的の砂漠ダンジョンまでやってきた。

 岩石砂漠にそびえ立つ巨石の間が、ダンジョンの入り口になっていた。周辺には、冒険者ギルドがいくつもテントを立てている。
 ルイスはテントの1つで、また食べ物を売っていた。

「かき氷屋です」
「かき氷?」

 彼は製氷機の魔道具から氷を取り出し、ガリガリと削っていく。
 この暑い砂漠で氷を大量に作る魔道具を動かすなんて、そうとう魔石を消費しているはずだ。僻地まで来てくれた冒険者へのサービスなんだろうけど、ギルドって金持ってるよなぁ。

「シロップの代わりに酒をかけて欲しいっス」

 氷を削るルイスを見ながら、ササミがボソリとつぶやいた。ササミはブレない酒好きだ。

「いいですよ~。でも、お仕事前ですから、香りをつけるくらいにしましょうね」

 ルイスは赤いシロップにベリーを散らしたお洒落なかき氷をササミの前に置いた。

「ラムベリーです」

 見た目も香りも良い。周辺の女子の視線が集まってきた。

「アタシは宇治金時ね」
「じゃあ、アタイはマンゴー……」

 かき氷を受け取って食べながら歩く。いつの間にか、ルイスの屋台には長蛇の列ができていた。


「そういや、レトリーさんは来なかったんっスね」

 暑さにとけたかき氷の汁をすすりながら、ササミが言う。

「姉ちゃんは休暇中だから。それに、暑いの苦手なんだ」
「そっスか」

 姉ちゃんが参加してれば戦力アップだったけど、いつもの3人でも問題ない。レアドロップ狙いで同じ敵を狩り続けるだけだ。
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