17 / 44
ネコ娘、かき氷を食べる
しおりを挟む
飲み会やらケーキバイキングやら、アタイの周囲は平和だった。
でも、世間はダンジョンの発生ラッシュで、ちょっと慌ただしくなっていた。
冒険者ギルド。
アタイは掲示板で新しく、目立つ大きな張り紙を見つけた。
「南部ダンジョンレアドロップ狩りの募集?」
ちょっと距離のある南部地方に、珍しいドロップの出るダンジョンが発生したらしい。
「何でこんな離れた街にまで募集が出るんだ?」
首を捻っていると、受付からルイスが出てきた。
「ああ、そのダンジョン、僕も手伝いに向かうんです。よかったら一緒に行きませんか?」
「ルイスも行くのか。こんな遠くまで募集がかかるって、何なんだ?」
「クーラーボックスっていう、保冷と空間拡張の2つが付与された魔道具が出たんです」
「へえ~」
以前にミノタダンジョンでとった牛革リュックの上位版っぽいな。
「ダンジョンの出現した場所が砂漠で、管理し続けるのが難しいようです。それで、たくさんの冒険者さんに集中して狩ってもらい、そのあと閉鎖することになりました」
「なるほど」
今しか手に入らないレアアイテムか。売れば金になるし、自分たちで持つにも良さそうだ。
「メリーとササミの同意が要るけど、たぶん行くと思う」
「そうですか。ぜひ、ご一緒できるといいですね」
ルイスにそう言われたら、行くしかないじゃないか!
* * *
魔導列車とギルドが用意したバスを乗り継いで、2日かけて目的の砂漠ダンジョンまでやってきた。
岩石砂漠にそびえ立つ巨石の間が、ダンジョンの入り口になっていた。周辺には、冒険者ギルドがいくつもテントを立てている。
ルイスはテントの1つで、また食べ物を売っていた。
「かき氷屋です」
「かき氷?」
彼は製氷機の魔道具から氷を取り出し、ガリガリと削っていく。
この暑い砂漠で氷を大量に作る魔道具を動かすなんて、そうとう魔石を消費しているはずだ。僻地まで来てくれた冒険者へのサービスなんだろうけど、ギルドって金持ってるよなぁ。
「シロップの代わりに酒をかけて欲しいっス」
氷を削るルイスを見ながら、ササミがボソリとつぶやいた。ササミはブレない酒好きだ。
「いいですよ~。でも、お仕事前ですから、香りをつけるくらいにしましょうね」
ルイスは赤いシロップにベリーを散らしたお洒落なかき氷をササミの前に置いた。
「ラムベリーです」
見た目も香りも良い。周辺の女子の視線が集まってきた。
「アタシは宇治金時ね」
「じゃあ、アタイはマンゴー……」
かき氷を受け取って食べながら歩く。いつの間にか、ルイスの屋台には長蛇の列ができていた。
「そういや、レトリーさんは来なかったんっスね」
暑さにとけたかき氷の汁をすすりながら、ササミが言う。
「姉ちゃんは休暇中だから。それに、暑いの苦手なんだ」
「そっスか」
姉ちゃんが参加してれば戦力アップだったけど、いつもの3人でも問題ない。レアドロップ狙いで同じ敵を狩り続けるだけだ。
でも、世間はダンジョンの発生ラッシュで、ちょっと慌ただしくなっていた。
冒険者ギルド。
アタイは掲示板で新しく、目立つ大きな張り紙を見つけた。
「南部ダンジョンレアドロップ狩りの募集?」
ちょっと距離のある南部地方に、珍しいドロップの出るダンジョンが発生したらしい。
「何でこんな離れた街にまで募集が出るんだ?」
首を捻っていると、受付からルイスが出てきた。
「ああ、そのダンジョン、僕も手伝いに向かうんです。よかったら一緒に行きませんか?」
「ルイスも行くのか。こんな遠くまで募集がかかるって、何なんだ?」
「クーラーボックスっていう、保冷と空間拡張の2つが付与された魔道具が出たんです」
「へえ~」
以前にミノタダンジョンでとった牛革リュックの上位版っぽいな。
「ダンジョンの出現した場所が砂漠で、管理し続けるのが難しいようです。それで、たくさんの冒険者さんに集中して狩ってもらい、そのあと閉鎖することになりました」
「なるほど」
今しか手に入らないレアアイテムか。売れば金になるし、自分たちで持つにも良さそうだ。
「メリーとササミの同意が要るけど、たぶん行くと思う」
「そうですか。ぜひ、ご一緒できるといいですね」
ルイスにそう言われたら、行くしかないじゃないか!
* * *
魔導列車とギルドが用意したバスを乗り継いで、2日かけて目的の砂漠ダンジョンまでやってきた。
岩石砂漠にそびえ立つ巨石の間が、ダンジョンの入り口になっていた。周辺には、冒険者ギルドがいくつもテントを立てている。
ルイスはテントの1つで、また食べ物を売っていた。
「かき氷屋です」
「かき氷?」
彼は製氷機の魔道具から氷を取り出し、ガリガリと削っていく。
この暑い砂漠で氷を大量に作る魔道具を動かすなんて、そうとう魔石を消費しているはずだ。僻地まで来てくれた冒険者へのサービスなんだろうけど、ギルドって金持ってるよなぁ。
「シロップの代わりに酒をかけて欲しいっス」
氷を削るルイスを見ながら、ササミがボソリとつぶやいた。ササミはブレない酒好きだ。
「いいですよ~。でも、お仕事前ですから、香りをつけるくらいにしましょうね」
ルイスは赤いシロップにベリーを散らしたお洒落なかき氷をササミの前に置いた。
「ラムベリーです」
見た目も香りも良い。周辺の女子の視線が集まってきた。
「アタシは宇治金時ね」
「じゃあ、アタイはマンゴー……」
かき氷を受け取って食べながら歩く。いつの間にか、ルイスの屋台には長蛇の列ができていた。
「そういや、レトリーさんは来なかったんっスね」
暑さにとけたかき氷の汁をすすりながら、ササミが言う。
「姉ちゃんは休暇中だから。それに、暑いの苦手なんだ」
「そっスか」
姉ちゃんが参加してれば戦力アップだったけど、いつもの3人でも問題ない。レアドロップ狙いで同じ敵を狩り続けるだけだ。
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる