OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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黒鳥の湖

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 儚げと言うか、これは自分が何とかしてあげなきゃいけないんじゃ って思わせる、そんな風情を目の当たりにすると、蛤貝が選ばれるのはこう言うところなんだろうなって心の冷めた部分が納得した。

「でも  」

 ちらりと部屋に備え付けられているカレンダーに目を遣ると、赤い丸が二つつけられている日付が目に入る。

 一つは蛤貝の発情期、そしてもう一つはオレの発情期だ。

「……今更言い出しても、もうすぐヒートに入るんだよ?」
「だから嫌だって言ってるの!ヒートになったら、あんな怖い人でも好きになっちゃうのかもって思ったら、どうにかなりそう!偉そうな物言いだし!態度も横柄でっ……全然優しくないっそんな人に体を開いて、そんな人の赤ちゃんを産むなんて嫌だっ‼︎」


 どん!


 蛤貝の語尾をかき消すように踏み鳴らされた床板に、蛤貝だけでなくオレも一緒に飛び上がる、辛うじて情けない声を上げることは避けられたけれど、今にも心臓が口から転げだしそうだった。

「なんか、面白い話してんな?」

 ふ と鼻先をくすぐるのは青臭い栗の花のような、あまりいい臭いとは言い難いものだ。

 意識してそうしているわけではないのだけれど、思わず寄ってしまった眉間の皺を指差して笑う人物へとそろそろと向き直る。
 オレ達よりも幾分年上で、結わえていない長髪にお裁っ着け袴を履かずにだらしなく着流し姿で柱に凭れ掛かっているのは薄墨で、今現在、この『盤』唯一の下の部屋にいる白手だ。

 まずいことを聞かれた と思わず視線を伏せると、着崩れた着物の裾から伸びた足にとろとろと伝う白濁の液が見える。

「  ────っ それっ」

 直視するのが恥ずかしくて、そこからも視線を避けてそう言うと、やはりまたからからとした笑いが響く。

「あ?さっきまでお仕事だったんだよね、気になる?あはは!おぼこいなぁ?」

 あー……と漏れた声はもうすでに笑いを含んでおらず、どっと心臓が跳ね上がるのを感じて何かに祈りたい気分になる。

「そんなおぼこいから、あんな生温いこと言ってんのか?」

 にじり寄るように薄墨が一歩足を前に出すと、日本の足の奥からぽたぽたと白く濁った液体がしたたり落ちた。

 薄墨の言うように、それがなんであるかわからない なんて初々しいことを言うつもりはないけれど、正視するのに抵抗がある程度には馴染まない物だ。
 つい先ほどまで情交があったと知らしめるそれに、顔が赤くなるのは仕方のないことで……



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