59 / 189
4
理解できないもの
しおりを挟む「本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
れおんが少し遅く帰ってきた日、なんだか暗い顔をしていたから尋ねるとれおんの両親が僕に会いたがっているという話を聞いて、週末の今日会うことになった。
お母さんの記憶もうっすらとしかないから、親っていうものがあまり分かっていない僕。どんな感じでいればいいのかもわからない。
それよりも、お父さんって存在がより一層わからない。だから少し怖いけれど、れおんのお父さんとお母さんだし、会ってみたいって気持ちも、ある。
「いらっしゃい!!!!周くんね!!大きくなって!!幼稚園の時、話したことはなかったけれど、れおんが周が~周が~って言うから顔は知ってたのよ!!」
す、すごい勢いで、話してる、、え、どうしたらいい?
「え、えっと、、初めまして、れおんさんの番にしてもらいました、周です、」
「母さん、周がびっくりしてるじゃないか。リビングに行ってからちゃんと話そう。」
少し怖がっている僕に気づいているれおんは家の中なのにずっと手を繋いでくれている。
なんだか気まづいけれど、手を離すことはできない。安心するから。
「改めまして、南かりんです。れおんの母です。お母さんって呼んで欲しいな。」
「お、おかあさん、、、、、」
「僕はれおんの父だよ。お父さんって呼んでくれな。」
お父さんって言われた時、少しビクッとしてしまった。それに気づいたれおんが両親の前なのにぎゅっと抱きしめてきた。
「大丈夫、大丈夫だから。怖がらなくて大丈夫。俺の父さんだから。安心していいから。」
「・・・ごめん、、だ、大丈夫、、、」
くそっ、、、なんで、怖くなんてないはずなのに。
僕たちの前に誰かがしゃがみ込んだ気配がした。恐る恐るそちらを見ると、
「周くん、僕たちは周くんの家族だよ。れおんの番になったんだ。僕たちのこともれおんと同じくらい頼って欲しい。絶対に君に危害を与えないし、れおんと共に君を守ることを誓うよ。」
「周くん、れおんも洋輔も、もちろん私もあなたを守る。それにね、私は周くんと同じΩなの。Ωとしても先輩だからね、いろいろ教えられると思うわ。」
か、ぞく、、、、。
「か、ぞく、、、わからない、です。僕、よくわからない。」
「周、、、」
だってわからない。僕にとって父親は僕を道具として扱う人で、兄は僕を傷つける人で、、、家族だから頼るって何?
「いきなり信用しなくていい。家族になったばかりなんだ。一歩ずつ、進んだり戻ったりしながらだ。」
そう言って、れおんのお父さんは僕のことを抱きしめてくれた。
理由もなく涙が出た。
26
お気に入りに追加
1,650
あなたにおすすめの小説
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
この恋は無双
ぽめた
BL
タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。
サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。
とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。
*←少し性的な表現を含みます。
苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる