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暗黒大陸
LV238 急転直下
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モンペロがリニューアルオープンをして2ヶ月が経とうとしている。
フミヤは相も変わらずモンペロで料理を作る忙しい毎日を送っており、神と交わした「新メニューを作ったら暗黒大陸へ行く」という約束を忘れていた。
勇者ヴィオラのパーティーも魔法国家ムジャールから帰国後には、暗黒大陸には行かず、一時解散なり各自が好きな暮らしを送っていた。
トーレムグレイグ王の考えでは、本来であればヴィオラ達にも暗黒大陸へ行ってもらいたかった。しかし、渡航手段の確保に時間がかかる事、広い暗黒大陸では先鋒隊との合流が困難な事を理由にしばらく静観という選択肢に至った。
だが、さらに6日が経った日、事態は急変する。
夜中遅く、フミヤの家の扉を激しく叩く音が聞こえる。
「なんだなんだ」とフミヤが家の扉を開けると、そこには全身にケガを負い青ざめた表情をするドレンの姿があった。
「ド、ドレン。どうした⁉」
「ぜ、ぜん……全滅……」
ドレンは体から力が抜けたようにその場倒れようとしていた。フミヤは咄嗟にドレンの体を受け止めた。
翌日、ドレンはトーレムグレイグ城の特別来賓室にある広いベッドに寝かされ処置を受ける。ドレンの体には見た事もない機材が数々と取り付けられていた。
「しかし、豪華な部屋だな」
フミヤは辺りを見渡す。
「私も、二回だけ泊まった事があるけど、あまりに豪華すぎてなかなか寝付けなかったよ」
「ヴィオラは泊まった事があるんだ」
「うん」
豪華な絨毯に豪華なテーブル。見た事のない大きな彫像にあきらかに高そうな絵画。どれもフミヤが初めて見る物であった。
ドレンはベッドに寝かされ、A級医療チームの処置を受ける。ドレンが負った傷は、ヴィオラのメガヒールで完全に癒えてはいる。だが、ドレンは目を覚まさないでいた。
A級医療チームの主任、ドクトンがドレンの瞼を開き目を観察する。
「脳の損傷ありません」
「うむ」
「毒検出されません」
「うむ」
「麻痺異常もないようです」
「うむ」
「呪い感知できません」
「うむ……おかしいの」
*ドクトンはサマナーを唱えた。
*ドレンは目を覚まさない。
「駄目だな」
フミヤとヴィオラは体が埋まるほどの柔らかいソファーに座り、その様子を少し離れた位置から見守る。
そこへ入り口の扉が開き、トーレムグレイグ王と客室執事のネアンジが入って来る。
「どうじゃ、目を覚ましたのか?」
「いえ、駄目です。調べてはいるのですが、原因が分かりません。呪いや毒の類《たぐ》いではないようですが」
「そうか……しばらく待つしかないの」
「おそらくは精神的なモノかと……」
その様子を見ていたフミヤは立ち上がりドレンの傍に寄る。
「おーい、ドレン。起きろ――!」
「おーい、ドレン! 朝だぞーーというか昼だぞ!」
*ドレンは目を覚まさない。
「無駄ですよ。声掛けなら私共《わたくしども》がすでにずっと前からやっています」
ドクトンはポンポンとフミヤの肩を叩く。
「後は私共に任せて、自宅で少し休まれたらいかがです……」
そうドクトンが言いかけた直後、フミヤは突如としてドレンの胸ぐらを掴む。
「起きろ! ドレン」
*フミヤはドレンを激しく揺さぶった。
*ドレンは目を覚まさない。
「ちょ、ちょっと、フミヤ殿」
慌てるトーレムグレイグ王。
「駄目か。それなら……起きろ。いつまで寝てるんだ!」
*フミヤはドレンに往復びんたを食らわせた。
「君は何をしているんだ!」
慌ててA級医療チームがフミヤを押さえ込もうとする。
「うるせぇ、離せ!」
フミヤはA級医療チームの制止を振りほどく。
*フミヤはさらにドレンに往復びんたを食らわせた。
「ああ、誰か止めてください」
ドクトンは自分達ではフミヤを止められないと助けを求める。
「ま、まあ良い。また、ヴィオラにメガヒールをかけてもらえば傷は治る」
「王よ、しかし……」
すると、ドレンの指がかすかに動く。
「ドレーン、目を覚ませ! 冒険に行くぞーー!」
*フミヤは雄たけびをあげた。
「………………」
「…………」
「……ん、フミヤ?」
*ドレンは目を覚ました。
「ええええええええええええええええ」
*A級医療チームは驚き戸惑っている。
何故かヴィオラはクスクスと笑う。
「昔からどちらかが、寝ている時や気絶した時にはこの起こし方だった」と、フミヤは後《のち》に語る。
フミヤのこの懐かしい行動がもしかしたらドレンの精神を呼び戻したのかもしれない。
フミヤは相も変わらずモンペロで料理を作る忙しい毎日を送っており、神と交わした「新メニューを作ったら暗黒大陸へ行く」という約束を忘れていた。
勇者ヴィオラのパーティーも魔法国家ムジャールから帰国後には、暗黒大陸には行かず、一時解散なり各自が好きな暮らしを送っていた。
トーレムグレイグ王の考えでは、本来であればヴィオラ達にも暗黒大陸へ行ってもらいたかった。しかし、渡航手段の確保に時間がかかる事、広い暗黒大陸では先鋒隊との合流が困難な事を理由にしばらく静観という選択肢に至った。
だが、さらに6日が経った日、事態は急変する。
夜中遅く、フミヤの家の扉を激しく叩く音が聞こえる。
「なんだなんだ」とフミヤが家の扉を開けると、そこには全身にケガを負い青ざめた表情をするドレンの姿があった。
「ド、ドレン。どうした⁉」
「ぜ、ぜん……全滅……」
ドレンは体から力が抜けたようにその場倒れようとしていた。フミヤは咄嗟にドレンの体を受け止めた。
翌日、ドレンはトーレムグレイグ城の特別来賓室にある広いベッドに寝かされ処置を受ける。ドレンの体には見た事もない機材が数々と取り付けられていた。
「しかし、豪華な部屋だな」
フミヤは辺りを見渡す。
「私も、二回だけ泊まった事があるけど、あまりに豪華すぎてなかなか寝付けなかったよ」
「ヴィオラは泊まった事があるんだ」
「うん」
豪華な絨毯に豪華なテーブル。見た事のない大きな彫像にあきらかに高そうな絵画。どれもフミヤが初めて見る物であった。
ドレンはベッドに寝かされ、A級医療チームの処置を受ける。ドレンが負った傷は、ヴィオラのメガヒールで完全に癒えてはいる。だが、ドレンは目を覚まさないでいた。
A級医療チームの主任、ドクトンがドレンの瞼を開き目を観察する。
「脳の損傷ありません」
「うむ」
「毒検出されません」
「うむ」
「麻痺異常もないようです」
「うむ」
「呪い感知できません」
「うむ……おかしいの」
*ドクトンはサマナーを唱えた。
*ドレンは目を覚まさない。
「駄目だな」
フミヤとヴィオラは体が埋まるほどの柔らかいソファーに座り、その様子を少し離れた位置から見守る。
そこへ入り口の扉が開き、トーレムグレイグ王と客室執事のネアンジが入って来る。
「どうじゃ、目を覚ましたのか?」
「いえ、駄目です。調べてはいるのですが、原因が分かりません。呪いや毒の類《たぐ》いではないようですが」
「そうか……しばらく待つしかないの」
「おそらくは精神的なモノかと……」
その様子を見ていたフミヤは立ち上がりドレンの傍に寄る。
「おーい、ドレン。起きろ――!」
「おーい、ドレン! 朝だぞーーというか昼だぞ!」
*ドレンは目を覚まさない。
「無駄ですよ。声掛けなら私共《わたくしども》がすでにずっと前からやっています」
ドクトンはポンポンとフミヤの肩を叩く。
「後は私共に任せて、自宅で少し休まれたらいかがです……」
そうドクトンが言いかけた直後、フミヤは突如としてドレンの胸ぐらを掴む。
「起きろ! ドレン」
*フミヤはドレンを激しく揺さぶった。
*ドレンは目を覚まさない。
「ちょ、ちょっと、フミヤ殿」
慌てるトーレムグレイグ王。
「駄目か。それなら……起きろ。いつまで寝てるんだ!」
*フミヤはドレンに往復びんたを食らわせた。
「君は何をしているんだ!」
慌ててA級医療チームがフミヤを押さえ込もうとする。
「うるせぇ、離せ!」
フミヤはA級医療チームの制止を振りほどく。
*フミヤはさらにドレンに往復びんたを食らわせた。
「ああ、誰か止めてください」
ドクトンは自分達ではフミヤを止められないと助けを求める。
「ま、まあ良い。また、ヴィオラにメガヒールをかけてもらえば傷は治る」
「王よ、しかし……」
すると、ドレンの指がかすかに動く。
「ドレーン、目を覚ませ! 冒険に行くぞーー!」
*フミヤは雄たけびをあげた。
「………………」
「…………」
「……ん、フミヤ?」
*ドレンは目を覚ました。
「ええええええええええええええええ」
*A級医療チームは驚き戸惑っている。
何故かヴィオラはクスクスと笑う。
「昔からどちらかが、寝ている時や気絶した時にはこの起こし方だった」と、フミヤは後《のち》に語る。
フミヤのこの懐かしい行動がもしかしたらドレンの精神を呼び戻したのかもしれない。
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