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3.
しおりを挟む「カシスミルク、お願いします」
「えー、杏果、キールにしてよ。私気になるんだってば」
「じゃあ自分で頼めばいいじゃん」
我慢できず、つい口を出した。杏果は紗香の強引さに弱い傾向がある。それをいいことに、杏果が紗香に言いくるめられている場面を今まで何度となく見せられてきた。
「え……でも」
私が真顔になっているのに気づき、狼狽えた紗香は、舞と杏果に媚びるような表情をした。
「キール気になってるのは杏果じゃなくて紗香なんでしょ。自分で飲んでみればいいじゃん」
「でも飲んだこと無いし……私、ひと口でいいんだよね」
ああだめ。これ以上会話を続けてたら正論ぶっかましコース、一直線だ。
「すいません、とりあえずカシスミルクだけで。追加はまた後からお願いします」
私達のテーブルの前で立ったまま、困り顔になっていた店員さんに舞が告げた。ありがとう舞ちゃん。キミのおかげで平和を取り戻そうという気になったよ。私、まだまだ修行が足りないな。
「すみません。また、後で」
申し訳ない気持ちと共に、店員さんに告げた。みっともない。この醜いやり取りは店員さんを待たせてまですることではなかった。でも。紗香の横暴というか、傍若無人というか……いつもの紗香節で杏果のメンタルがやられるのは、見逃せなかった。
「キールは白ワインがベースのカクテルだってメニューに書いてあるよ。杏果、ワイン飲めなかったよね?」
舞がドリンクメニューに書かれていたカクテルの説明を読み上げた。そうじゃん。説明書き読めば済んだ話じゃん。
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