27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良

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「書いてあったんだ。じゃあ注文しなくて良かったね」
紗香の顔は敢えて視界に入れず、にっこりと杏果に笑顔を向けた。この場合、紗香の顔色を窺ってはいけないということは経験でわかっている。

「で、紗香。キール、頼んでみる?白ワインが飲めるならいけると思うけど」
見るがいい。この、鍛え抜かれた営業スマイルを。

満面の笑みで無茶振りをする上司に育てられると、有無を言わさない満面の笑みを習得できる、という特殊能力がついてくるのだ。

「……ワインなら、やめとく」
目を逸らし、明らかに不貞腐れている。そこには敢えて触れない。

自分の思い通りにいかなかった時は、ひたすら不機嫌を決め込むのがこの女王様、紗香だ。そもそも、紗香の手元のグラスにはまだカシスソーダがなみなみと入っていた。

「そうだ、唯。合コンやったげるよ?彼氏の男友達とかでフリーの人いるかもだし」
何事も無かったように紗香はまた薄ら笑いを浮かべて私の予想した通りの言葉を放った。いやその前にさ。杏果に謝るところじゃないの?これは。

「合コン……疲れるんだよね」
ただでさえ初対面の好みじゃないどうでもいい男達と強制的に食事やお酒を共にしなければいけないあの空間。あの時間。私には拷問以外のものでは無い。そうでなくてもその場に紗香がいるだけで疲れるというのに。

「合コンが疲れるとか言ってる場合じゃないでしょ。27歳彼氏無しって、結構やばいと思うけど」
うん、この台詞も紗香に言われると思っていたよ。私の予知能力ってすごい。
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