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5章 新しい街の建設

5-おまけ 魔石集め 1. 上層

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 僕が氷魔法のアイスを付与した魔石は、今年の夏、大ヒットした。

 氷魔法も付与魔法も使える人が希少ではないが少ないため、その両方が使える人はかなり少ない。僕はブランとの契約のおかげで氷魔法が使え、付与スキルのおかげで付与魔法が使える。
 アルの元カノが現れて、僕がうじうじしていた時に、部屋に籠ってないで何かしようと友人であるシリウスと考えて、魔法を付与した魔石を売ることにした。
 商人の勧めで、他にやっている人がいない、魔石自体が凍るアイスの付与をした魔石に絞って試作したところ評判が良く、僕の名前は伏せて、商品化された。

 今年の春から売り始めて、少し高めの値段設定だったにもかかわらず、夏は在庫がないので可能な限り納品してほしいと言われるくらいに売れた。
 この国は冬は雪に閉ざされるで、氷室に氷を作って夏に利用するが、自然のものなので気候に左右される。氷魔法は使える人が少ないので、魔法で作った氷は、かなり高価だ。
 アイスの魔石は、氷でなくても冷やすために使いたい場面に大活躍したのだ。

 僕のアイテムボックスに大量に入っていた魔石は、すべて使ってしまったので、来年の夏に向けて、魔石を調達しなければならない。
 ということで、カークトゥルスにやってきた。といっても目的はフロアボスとボスがドロップするマジックバッグではなく、それ以外のすべてのモンスターがドロップする魔石だ。
 ここのダンジョン、ボスとフロアボス以外は、魔石しかドロップしないので、見向きもされないのだが、僕たちにしてみれば、効率よく、しかも他の冒険者とのモンスターの取り合いにもならず、魔石を手に入れることができる。
 ちなみに魔石というのは、魔素を内包した石の総称だ。基本的にはただ魔素を内包しているだけだが、たまにその魔素に属性がついていることがある。属性のついている魔石は買取価格が上がるため人気だが、属性のついていない魔石は魔道具の燃料としてつかわれるもので、ありふれているので買取価格が高くない。なので、ダンジョンでドロップしても、運べる荷物に限りがある状態ではあまり回収されない。

 冬の間は街道が雪で移動しづらいので、1つの街にとどまってダンジョンに潜ることが多い。
 今年は、冬の間サネバにとどまり、カークトゥルスで魔石を集める。
 僕たちが冬の間サネバにとどまると知ったギルドは、当初これでたくさんマジックバッグが供給されると喜び、僕たちの目的が魔石でマジックバッグではないと知ると嘆いた。このギルドで買い取られた魔石は全て渡すから、マジックバッグを取ってきてくれとまで懇願されてしまった。

 カークトゥルスは入れる冒険者をSランクの3年以上モクリークで活動している人の許可制にしているため、ダンジョンに入れるパーティーが少ない上に、階層が多く、下層はSランクの複数パーティーが推奨され、モクリーク内でも最高難度だ。そのため、ほとんどのパーティーは、自分たち用のマジックバッグを入手した時点で攻略を諦めるため、カークトゥルス解放から1年半がたった今でも、期待したほど買取が増えていない。
 軍も攻略しているが、軍の手に入れたマジックバッグは全て国で使用するため、一般には出回らない。
 春にカークトゥルスにきた獣道は、他のSランクのパーティーと協力して、2回攻略したらしい。2回だったのは、最下層のドロップが1つで、両パーティー共に自分たちで使いたいからだ。残念ながら2回とも特大の時間遅延は出なかったが、大の時間遅延が出たらしい。獣道はその後、まだサネバにいるが、カークトゥルスではない上級ダンジョンに潜っている。

 ギルドに懇願されたので、フロアボスと最下層のボスにも挑戦するため、獣道に一緒にカークトゥルス攻略に行こうと、ギルドに伝言を残し、獣道と合流するまでは、上層で魔石拾いをするため、ギルドに紹介してもらったAランクのパーティーを荷物持ち雇い、カークトゥルスの上層に潜った。


 アルとブランが片っ端から倒してドロップした魔石を、荷物持ちのパーティーに拾ってもらう。前回ここで魔石を拾うのがとても大変だったので、荷物持ちを雇ったのだ。僕もこの時のために作ってもらったマジックハンドを使って魔石を拾い、背中に背負った籠に入れていく。何度も中腰になって腰が痛くなるので、その対策だ。
 ブランはちょっと強いシルバーウルフくらいの感じでモンスターを追いかけまわしてかじっている。雪の中を走り回る犬みたいで、楽しそうだ。
 この階層のモンスターを狩りつくし、次の階層に進む。といってもしばらくすればモンスターは復活する。

 荷物持ちの報酬は、日給だ。今回は食事はこちらからは提供しないし、荷物も預からない。自分たちの食料は自分たちで用意してもらう。本来は僕たちの食料もドロップ品も彼らが運ぶのだが、それはしない代わりに、魔石を拾ってもらう。
 僕たちが荷物持ちを雇うのは初めてなので、報酬はギルドに決めてもらい、仕事上の付き合いのみに限ることにした。セーフティーエリアでも必要以上の会話はしない。荷物持ちのパーティーもそこはギルドから言い含められているようで、近寄ってこない。

 順調に魔石を拾って階層を進めていき、上層も真ん中あたりまで来た時に、あとから潜ってきた軍の小隊と出会った。
 籠を背負って、マジックハンドで魔石を拾う僕を見て、絶句している。分かるよ、ダンジョンで何やってるんだって思うよね。でもこれ、栗拾いから思いついたんだけど、便利。
 ブランとアルが僕のそばに戻ってきた。

「これは、氷花のみなさま。なかなか斬新な魔石の拾い方ですね」
「腰が痛くならないので、便利ですよ」
「我々も導入を検討してみます。それはそうと、ドロップ品のご提供ありがとうございました。国が買い上げたものは、我々がここで攻略に使用しています。見合う結果が出せるよう努力いたします」

 そう言って進んで行った。おそらく荷物持ちのパーティーがいるから、マジックバッグの詳細を言わなかったのだろう。気遣いのできる隊長さんだな。
 そばに来たブランをもふって、栗拾いならぬ魔石拾いに戻る。

 それからも、たまに他のパーティーに会うと二度見されているが、使ってみてこの便利さを思い知るがいい。荷物持ちのパーティーが羨ましそうに見ているが予備はない。
 ちなみにこの栗拾いスタイル、その後定着して、ギルドで貸し出されるようになった。

 10日間潜り、そこからまたモンスターを一掃しながら、地上へ戻った。途中、午前休や午後休をはさみながらだったけど、さすがに20日間毎日毎日魔石を拾うのは疲れた。
 でもおかげで、今年売ったのと同じくらいの魔石が集まった。今後獣道との攻略中にも拾えば、もっと集まるだろう。

 地上に戻って、荷物持ちのパーティーの依頼達成報告と支払いのためにギルドへ行くと、ちょうど獣道のメンバー、狐の獣人のオラジェさんがいた。

「お、帰って来た。まだ帰ってこないようなら、俺たちも魔石取りに行こうかと思って、聞きに来たんだよ」
「待たせてすまない。ユウが魔石拾いで疲れたので、5日くらいは地上で休みたい。その間にどこかに潜るなら待つが」
「いや、いいよ」

 5日後に一緒に食料買い出しをして、翌日から潜ることになった。しかも今回は、下層のフロアボスに可能な限り挑戦するという、長期戦を予定している。
 僕のアイテムボックスがあるので、食料や水が続く限りとなると、おそらく冬も越せるが、その前に僕がダメになると思う。太陽の光を浴びないと、メンタルによくないんじゃなかったっけ。それになによりお風呂入りたい。

 4日間は宿でのんびり、アルといちゃいちゃしながら過ごした。あんまりいちゃいちゃしていたら、ブランが近寄ってこなくなったので、反省してふたりでブラッシングする。
 でもブラッシング中にアルと目があったら、やっぱりキスしたくなってしていたら、ブランが逃げてしまった。実質新婚だから見逃して。
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