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旦那様と迷子
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「華鈴、ものすごく可愛いな。普段の華鈴からは想像できん。このような服も似合うのだな、今日は似たようなものを買おうか」
「え、え!?」
お褒めのお言葉は嬉しいのですが、似たような服を買うとは一体?!
「そうと決まれば、早く行こうぞ。ぬしに似合う服を色々見にな」
「え、私の服だけではなく、旦那様のも――」
旦那様が私の手を握り部屋から出ようとします。
その時、初めて今の旦那様をしっかりと見ることができました。
いつもの着物や、黒い布で顔を隠していない旦那様。
黒いスキニーズボンと、だぼっとした柄付きTシャツ。フード付きのパーカーを着ております。
首元には黒いサングラスを引っかけており、動く度揺れております。
か、かっこいい。かっこいいです。
見惚れていると、二口女さんが旦那様を呼び止めました。
「七氏様、少々お待ちください」
「む? どうしたのだ?」
「少し、髪をまとめましょう」
「い、いや、我は……」
ニコニコと笑みを浮かべながら、二口女さんが櫛と赤い髪紐を持ってきました。
旦那様の髪、まとめると言いますと……。
どのようにまとめるのでしょうか、どのようになるのでしょうか。
今まで旦那様は、あまり髪はまとめたり結ってはおりません、楽しみです!
期待しながら旦那様を見上げますと、なぜか苦笑いを浮かべられました。
なぜでしょう……。
「わかった、頼めるか? 二口女」
「お任せください」
一度手を離し、旦那様は部屋を後にします。
後ろに続き、二口女さんが私に一礼をし行ってしまわれました。
どのような旦那様も美しく、かっこいいのでしょう。
楽しみ過ぎて、顔が緩んでしまいます!!
はしたない顔を浮かべないように頬を抑えていますと、後ろから鎌鼬さんに肩をぽんとされました。
「奥様、こちらも少々髪を結いませんか?」
「え? ですが、私は自分で髪を結うことができません……」
「そこは、私が行いますよ。では、やりましょう」
「え、え?」
鎌鼬さんが私の背中を押し、化粧台の椅子に座らされてしまいました。
「失礼しますね」
「お、お願いします?」
私の黒い髪をまず櫛でとかし、二口女さんが持っていた髪紐と同じ色の紐で、私の髪をまとめてくださいます。
――――――――静かな空間、優しい手つきなので心地が良いです。
少し眠たくなってきてしまいました。
ウトウトしていると終わったみたいで、鎌鼬さんが合わせ鏡をし、見せてくださいました。
「わぁ、このような髪はしたことがありません! ありがとうございます!」
私の髪は今、ハーフアップされております。
ただのハーフアップではなく、横髪をくるくると回されており、結び目から余った紐をたらし、私が顔を動かす度に揺れて可愛いです。
「このような簡単な物しかできませんが、少しでもお役に立てたのなら光栄です」
「鎌鼬さん、この髪型、ものすごく嬉しいです! すごいです! ありがとうございます!!」
何度も何度も鏡を見て、顔を右、左と揺らしてしまいます。
すごい、可愛い、素敵。私も、このような髪を自分で出来たらいいのですが……。
まじまじと鏡を見ていますと、旦那様が戻って来ました。
「またせて悪かったな、華鈴――む?」
「あ、旦那さ……ま……」
――――ハッ。だ、旦那様!! 旦那様の銀髪が、銀髪が!!
「かっこいいです旦那様!!」
「お、おう。華鈴もものすごく可愛いぞ」
旦那様の右横髪はみつあみになっており、後ろは一つにまとめられております。
上の方で結んでいるため、旦那様が顔を動かすたび、ふわふわの髪と揺れております。
赤い髪紐がゆらゆらと揺れており、素敵です!
「もう、七氏様。もっとかっこよくできると言っているでしょう? まだ完成ではありませんよ!」
「うっ、い、いや。もうこれでよいぞ。これ以上、華鈴を待たせるわけにはいかぬだろう」
「そうですが……でも、もっとかっこよくさせてください。奥様もその方が嬉しいはずです!」
「ん、うーん……。す、すまない。これ以上は付き合ってられんのだ! 行くぞ、華鈴!」
「え、え!? 旦那様!?」
旦那様が私の手を握り、二口女さんの隣をすり抜け外まで走り出してしまいました!
後ろでは二口女さんや他の女中さんのお声が聞こえますが、旦那様は笑顔を浮かべ走り続けます。
「だ、旦那様?! いいのですか!?」
「良いのだ。あれ以上付き合ってしまうと、買い物の時間が減ってしまう。早く現代に行こうぞ」
そのまま、旦那様が準備していました馬車に乗り込み、走り出します。
ほ、本当によろしいのでしょうか。
息を整えながら横目で旦那様を見ますと汗が首筋から流れ、暑そうに首辺りをパタパタと空気の入れ替えておりました。
い、今まで隠れていた旦那様のうなじが、見えます。陽光で汗が輝いて見えます。
こ、これは、目に毒でございます!!!!
「…………む? ど、どうしたのだ、華鈴よ。目を塞いで……。何があった?」
「旦那様がかっこよすぎてしまい、私の目が潰れてしまうのでつい…………」
「それは、大丈夫なのか?」
「大丈夫です、旦那様がかっこよく素敵で尊いだけなので。あと数時間で慣れるかと」
「数時間かかるのか」
呆れているようなお声が聞えますが、すいません!!
今は本当に見ることができません!!
「え、え!?」
お褒めのお言葉は嬉しいのですが、似たような服を買うとは一体?!
「そうと決まれば、早く行こうぞ。ぬしに似合う服を色々見にな」
「え、私の服だけではなく、旦那様のも――」
旦那様が私の手を握り部屋から出ようとします。
その時、初めて今の旦那様をしっかりと見ることができました。
いつもの着物や、黒い布で顔を隠していない旦那様。
黒いスキニーズボンと、だぼっとした柄付きTシャツ。フード付きのパーカーを着ております。
首元には黒いサングラスを引っかけており、動く度揺れております。
か、かっこいい。かっこいいです。
見惚れていると、二口女さんが旦那様を呼び止めました。
「七氏様、少々お待ちください」
「む? どうしたのだ?」
「少し、髪をまとめましょう」
「い、いや、我は……」
ニコニコと笑みを浮かべながら、二口女さんが櫛と赤い髪紐を持ってきました。
旦那様の髪、まとめると言いますと……。
どのようにまとめるのでしょうか、どのようになるのでしょうか。
今まで旦那様は、あまり髪はまとめたり結ってはおりません、楽しみです!
期待しながら旦那様を見上げますと、なぜか苦笑いを浮かべられました。
なぜでしょう……。
「わかった、頼めるか? 二口女」
「お任せください」
一度手を離し、旦那様は部屋を後にします。
後ろに続き、二口女さんが私に一礼をし行ってしまわれました。
どのような旦那様も美しく、かっこいいのでしょう。
楽しみ過ぎて、顔が緩んでしまいます!!
はしたない顔を浮かべないように頬を抑えていますと、後ろから鎌鼬さんに肩をぽんとされました。
「奥様、こちらも少々髪を結いませんか?」
「え? ですが、私は自分で髪を結うことができません……」
「そこは、私が行いますよ。では、やりましょう」
「え、え?」
鎌鼬さんが私の背中を押し、化粧台の椅子に座らされてしまいました。
「失礼しますね」
「お、お願いします?」
私の黒い髪をまず櫛でとかし、二口女さんが持っていた髪紐と同じ色の紐で、私の髪をまとめてくださいます。
――――――――静かな空間、優しい手つきなので心地が良いです。
少し眠たくなってきてしまいました。
ウトウトしていると終わったみたいで、鎌鼬さんが合わせ鏡をし、見せてくださいました。
「わぁ、このような髪はしたことがありません! ありがとうございます!」
私の髪は今、ハーフアップされております。
ただのハーフアップではなく、横髪をくるくると回されており、結び目から余った紐をたらし、私が顔を動かす度に揺れて可愛いです。
「このような簡単な物しかできませんが、少しでもお役に立てたのなら光栄です」
「鎌鼬さん、この髪型、ものすごく嬉しいです! すごいです! ありがとうございます!!」
何度も何度も鏡を見て、顔を右、左と揺らしてしまいます。
すごい、可愛い、素敵。私も、このような髪を自分で出来たらいいのですが……。
まじまじと鏡を見ていますと、旦那様が戻って来ました。
「またせて悪かったな、華鈴――む?」
「あ、旦那さ……ま……」
――――ハッ。だ、旦那様!! 旦那様の銀髪が、銀髪が!!
「かっこいいです旦那様!!」
「お、おう。華鈴もものすごく可愛いぞ」
旦那様の右横髪はみつあみになっており、後ろは一つにまとめられております。
上の方で結んでいるため、旦那様が顔を動かすたび、ふわふわの髪と揺れております。
赤い髪紐がゆらゆらと揺れており、素敵です!
「もう、七氏様。もっとかっこよくできると言っているでしょう? まだ完成ではありませんよ!」
「うっ、い、いや。もうこれでよいぞ。これ以上、華鈴を待たせるわけにはいかぬだろう」
「そうですが……でも、もっとかっこよくさせてください。奥様もその方が嬉しいはずです!」
「ん、うーん……。す、すまない。これ以上は付き合ってられんのだ! 行くぞ、華鈴!」
「え、え!? 旦那様!?」
旦那様が私の手を握り、二口女さんの隣をすり抜け外まで走り出してしまいました!
後ろでは二口女さんや他の女中さんのお声が聞こえますが、旦那様は笑顔を浮かべ走り続けます。
「だ、旦那様?! いいのですか!?」
「良いのだ。あれ以上付き合ってしまうと、買い物の時間が減ってしまう。早く現代に行こうぞ」
そのまま、旦那様が準備していました馬車に乗り込み、走り出します。
ほ、本当によろしいのでしょうか。
息を整えながら横目で旦那様を見ますと汗が首筋から流れ、暑そうに首辺りをパタパタと空気の入れ替えておりました。
い、今まで隠れていた旦那様のうなじが、見えます。陽光で汗が輝いて見えます。
こ、これは、目に毒でございます!!!!
「…………む? ど、どうしたのだ、華鈴よ。目を塞いで……。何があった?」
「旦那様がかっこよすぎてしまい、私の目が潰れてしまうのでつい…………」
「それは、大丈夫なのか?」
「大丈夫です、旦那様がかっこよく素敵で尊いだけなので。あと数時間で慣れるかと」
「数時間かかるのか」
呆れているようなお声が聞えますが、すいません!!
今は本当に見ることができません!!
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