生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

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旦那様と迷子

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 馬車で移動し、神木へと辿り着きました。

 神木を見上げるといつも体に鳥肌が立ち、思わず見入ってしまいます。
 ですが、今日はそれより、やってしまったという気持ちでいっぱいです。

 勢いのまま着替えないで、ミニスカートのままで来てしまいました。

 髪はものすごく素敵に結っていただけて、ものすごく嬉しいのです。
 ブラウスも、ハートが刺繍されており可愛いです。ですが……。

 一番の問題はこの、膝上までの短さであるミニスカートです!!
 屈んでしまうと見えてしまいそうなので、思うように動けません。

 着物も、お腹辺りが締め付けられている為、最初は動くことが難しかったのですが、それとはまた別です。
 気になってしまい、意識がそっちに……。

「それでは行く――む? 華鈴? 何か気になるのか?」

「へ? い、いえ。なんでもありません!!」

 スカートの短さを気にしているなど、言えるわけがありません!!
 だ、大丈夫、変に動き回ったり、しゃがまなければ問題ありません!!

「そうか? 気になる事は遠慮なく言うのだぞ? 華鈴は我慢し過ぎだ、もっと我を頼れ」

「あ、ありがとうございます…………」

 旦那様が私の手を握り、いつものように神木に手を触れ、現代への道を開きます。
 そのまま神木の中へと二人で入りました。

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「よっと。大丈夫か、華鈴」

「はい。ご心配、ありがとうございます」

 私に伸ばしてくださっている旦那様の手をお借りし、地面に降ります。
 浮いている感覚はどうしても慣れません、まだ体が浮かんでいるような気がします。

「歩けるか?」

「はい。あの、今回も百目さんの運転でショッピングに向かうのでしょうか?」

「その予定ではあったが、百目にはちょうど予約者がいるらしく無理だったのだ。だから、今回は現代の公共交通機関を使おうと考えている」

 公共交通機関といいますと、バスや電車ですね。
 ここからだと、確かバスが一本出ていたはず。
 まずはそれで駅まで向かおうとしているのでしょうか。

「あとは、我が華鈴を抱え、すぐに目的地に向かうのも可能だな」

「瞬間移動という事でしょうか?」

「そうだ。場所はもう確認済み、行けるぞ」

 ケラケラと笑う旦那様、可愛いです!!
 ――って、そこではなかった。違います、違います。

「旦那様は、どちらがよろしいのでしょうか?」

「我か? 我はどちらでも良いぞ。ここからだと距離的にも体力はそこまで使わん。すぐにショッピングモールに行きたいのなら、すぐに行くぞ」

 むっ、そうなのですね。
 うーん、どうしましょう。ゆっくり行きたい気もしますが、早く旦那様と共にショッピングモールを楽しみたい気持ちもあります。

 私が真剣に悩んでいますと、カサカサと誰かが歩いているような音が聞こえてきました。

「華鈴、後ろに下がれ」

「っ、旦那様?」

 私の前に立つと、旦那様は警戒するように周りを見回します。
 まさかこの足音は、危険な者が近づいてきている証拠でしょうか。

 私も旦那様の服を掴み周りを見ていますと、木の影から一人の男性が姿を現しました。

「――――っ、……て。え、神空しんくうさん!? なぜ、こんな所に……」

 姿を確認すると、旦那様が驚きの声を上げました。

 この反応……。旦那様のお知り合いなのでしょうか。
 改めてこちらへ向かってきている男性を見ますと、優しげな感じのお方で少し安心。

 水色の髪に、黒い眼鏡。
 お偉い様が着ているようなお洋服を身に着けております。

「やぁ、これからお買い物ですか? 七氏」

「はい、これから妻と共に、前回教えていただいたショッピングモールに向かおうかと思っております」

「あぁ、あそこですね。おすすめですよ、私はもう数十回も行っています」

 あっはっはっと笑いながら神空さんは、教えてくれました。
 よかった、素敵な所なんですね。数十回も行きたいと思う程に――数十回?

 ――あ、あれ? 最近出来たばかりのショッピングモールなんですよね? 
 数十回? 十回以上、行っているということ?

「数十回……。凄いですね……」

「君達も行けばわかると思いますよ。一日ですべてを回るのは難しいですので」

 いつでもニコニコしている方のようです。
 今も優しく微笑みながら、旦那様とお話をされております。

 私が旦那様の影から顔を出すと、深緑色の瞳と目が合いました。

「おや、こちらが七氏の奥様ですか?」

「あ、はい」

 お、お二人が私を見てきます。
 こ、これは何かを言わなけれっ──はっ、何をしているのですか華鈴。このまま旦那様の後ろに隠れていてはだめですよ! 挨拶をしなければなりません!

 旦那様の後ろから前に出ると、神空さんが笑顔を向けてくださいます。
 柔らかい笑み、肩に入っていた力が抜けました。

「御挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、七氏様の妻の九火華鈴といいます」

 腰を折り挨拶をしますと、上から聞こえてきたのは手を叩く音。

「素晴らしい。素敵な御挨拶、ありがとうございます。では、こちらも自己紹介をさせていただきますね」

 顔を上げると、今度は神空さんが姿勢を正し、胸に手を当て自己紹介をしてくださいました。

「私の名前は神空チガヤ。人間世界の長――簡単に言うと神です。ですが、固くならなくても大丈夫ですよ。友達と話すような感覚で気楽に接してくださると嬉しいです」

 …………か、神!? え、か、神様!? 神様なのですか!?
 思わず驚き、開いた口がしばらくの間、塞がりませんでした。
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