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その後も、お店で使う備品の注文書の作成や、従業員の皆さんが使う休憩室のお茶やお菓子の補充、事務所や休憩室の掃除など細々とした仕事が色々とあり、マリアさんが一つ一つ教えてくれました。商会と言うと華やかなイメージが強いですが、裏方の仕事は思った以上に地味と言いますか普通なのですね。
「レアちゃん、お茶淹れられる?」
「え?い、一応は…」
午後になって仕事が一段落した頃、休憩室の掃除を終えた私にマリアさんがそう尋ねてきました。仕事もある程度片付いたので、お茶にしようとダニエルさんが言い出したようです。事務所のソファーが休憩場所らしく、今はリシャール様とダニエルさん、マリアさんと私の四人だけです。お茶を淹れるのも私の仕事のようで、私はマリアさんに教えて貰いながらお茶を淹れました。
基本的に高位貴族の令嬢がお茶を淹れる事はないのですが、どういう訳か王妃様は何かと私に茶を淹れろと要求されたので、実はお茶を淹れるのは得意なのです。これも散々酷評されたので、必死に勉強し練習も重ねたのですよね。
「え?レアちゃん、お茶淹れるのめっちゃ上手!」
「ほんとだ、別の茶葉使ってるんじゃねぇの?」
「そんな事ないわ。いつものやつだもの」
私が入れたお茶を飲んだマリアさんとダニエルさんが褒めてくれました。今までは両親くらいしか褒めてくれなかったので、それ以外の人に褒められるなんて嬉しいですわ。
「そうですか?」
「うん、私が淹れてもこんなにいい味にならないわ」
「マリアは時間かけ過ぎなんだよ」
「もう、ダニエルさんったら、酷いわ!」
ダニエルさんとマリアさんが言い合いを始めました。最初は何かと言い合いになるお二人なので仲が悪いのかと思って冷や冷やしましたが、どうやら仲がいいみたいです。そんな二人をよそにそっとリシャール様の様子を伺いましたが、リシャール様は書類に目を通しながらお茶を飲んでいます。特に表情の変化がありませんし、これは感想を頂けそうにはないですわね。押しかけ女房ならぬ押しかけ従業員ですので、歓迎されていないのはわかっていますが…さすがにちょっと凹みますわ。
「レアちゃん、字もお茶を淹れるのも上手だから、就職先には困らないわよ」
「そうなのですか?」
「そうよ~貴族様の中には代筆を専門に雇うところもあるのよ。レアちゃんならそれだけで食べていけそうよ」
「まさか…」
「それにお茶を淹れるのが上手ければ、どこかの高位貴族の奥様の専属侍女も出来るわよ」
マリアさんが興奮しながらそう教えてくれました。どちらも泣きながら睡眠時間を削って頑張ったものですが、あの努力は無駄ではなかったようです。
とまぁ、初日はこんな感じで過ぎました。やはり想像した通り、リシャール様と仲良く…と言う展開は微塵もありませんでした。それどころか…
(大事な事を全然伝えてなかったなんて…私の馬鹿---!!!)
自分の迂闊さに泣きたい気分ですし、この先の事を考えると心が負けそうですが、今日はクビにならなかっただけでも御の字、でしょうか…慣れない種類の疲れに、私はベッドに転がるとあっという間に眠りの世界に落ちていきました。
「レアちゃん、お茶淹れられる?」
「え?い、一応は…」
午後になって仕事が一段落した頃、休憩室の掃除を終えた私にマリアさんがそう尋ねてきました。仕事もある程度片付いたので、お茶にしようとダニエルさんが言い出したようです。事務所のソファーが休憩場所らしく、今はリシャール様とダニエルさん、マリアさんと私の四人だけです。お茶を淹れるのも私の仕事のようで、私はマリアさんに教えて貰いながらお茶を淹れました。
基本的に高位貴族の令嬢がお茶を淹れる事はないのですが、どういう訳か王妃様は何かと私に茶を淹れろと要求されたので、実はお茶を淹れるのは得意なのです。これも散々酷評されたので、必死に勉強し練習も重ねたのですよね。
「え?レアちゃん、お茶淹れるのめっちゃ上手!」
「ほんとだ、別の茶葉使ってるんじゃねぇの?」
「そんな事ないわ。いつものやつだもの」
私が入れたお茶を飲んだマリアさんとダニエルさんが褒めてくれました。今までは両親くらいしか褒めてくれなかったので、それ以外の人に褒められるなんて嬉しいですわ。
「そうですか?」
「うん、私が淹れてもこんなにいい味にならないわ」
「マリアは時間かけ過ぎなんだよ」
「もう、ダニエルさんったら、酷いわ!」
ダニエルさんとマリアさんが言い合いを始めました。最初は何かと言い合いになるお二人なので仲が悪いのかと思って冷や冷やしましたが、どうやら仲がいいみたいです。そんな二人をよそにそっとリシャール様の様子を伺いましたが、リシャール様は書類に目を通しながらお茶を飲んでいます。特に表情の変化がありませんし、これは感想を頂けそうにはないですわね。押しかけ女房ならぬ押しかけ従業員ですので、歓迎されていないのはわかっていますが…さすがにちょっと凹みますわ。
「レアちゃん、字もお茶を淹れるのも上手だから、就職先には困らないわよ」
「そうなのですか?」
「そうよ~貴族様の中には代筆を専門に雇うところもあるのよ。レアちゃんならそれだけで食べていけそうよ」
「まさか…」
「それにお茶を淹れるのが上手ければ、どこかの高位貴族の奥様の専属侍女も出来るわよ」
マリアさんが興奮しながらそう教えてくれました。どちらも泣きながら睡眠時間を削って頑張ったものですが、あの努力は無駄ではなかったようです。
とまぁ、初日はこんな感じで過ぎました。やはり想像した通り、リシャール様と仲良く…と言う展開は微塵もありませんでした。それどころか…
(大事な事を全然伝えてなかったなんて…私の馬鹿---!!!)
自分の迂闊さに泣きたい気分ですし、この先の事を考えると心が負けそうですが、今日はクビにならなかっただけでも御の字、でしょうか…慣れない種類の疲れに、私はベッドに転がるとあっという間に眠りの世界に落ちていきました。
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