大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

穴掘りと物体

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『んー、上はないな』
「何も見えないか、シャル」
『どこまでも青い空だ。雲とたまに飛んでる鳥ぐらいだな。あと太陽がやたら眩しいぐらいだな』
となると下……か。
なにか埋まってんのかね。
「マキナ、掘れるか?」
『可か不可かと問われますと・可です』
その言い方は嫌だという意思表示だろう。それも最大級の。命令すれば拒否権がないコイツがこう言うのは初めて聞いたが、よっぽど嫌なんだろうな。
「ま、分かったよ。自力で何とかする」
ひらひらと手を振り、髪をスプーンのような形にして掘り進めることにする。
幸い、この辺りは地面や土と言うよりもカラカラに乾いた砂に近い。
もしも固めの土だったら、銀剣をスコップ代りにザックザックと──
『すんなよ?絶対にすんなよ?いくら頑丈な上、多少刃こぼれしても治るような剣だからって絶対にすんじゃねぇぞ?フリじゃないからな?』
「わぁってるよ」
と。
五十センチ程掘った所で、何か尖ったもの土の中から出てきた。
まだ下に埋まっているのだろうが、ひとまずここから見たところ六角錐の物体が顔を覗かせていた。
材質は…なんだろう。真っ白で少しざらつく手触りだ。見たこともない材質だな。
「なんだこりゃ」
一度銀腕を解除し、軽く蹴飛ばしてみる。
微動だにしないということは、まだまだ深く埋まっているのだろう。どうしたものか。
「マキナ、これに間違いないか?」
『これを中心に妨害が放たれています・相違ないかと』
ここからぶった切っても上手いこと壊れそうにないな…一度掘り返した方がいいだろうな。
「よっ」
しゃがみこみ、出来るだけ頭を近づけた上でサラサラとした砂の中に髪を百本前後滑り込ませ、ガチリと表面を掴む。
んー……これ、持ち上がるかな?
「いよッ、」
ズッ、ズズっ、と少しずつ謎の物体が持ち上がる。いけるな、意外と。
『頭皮大丈夫か?』
大丈夫だと思いたい。てーか、後でぜってー頭洗う。頭ジャリジャリして最悪。
「と!」
立ち上がりながら引き上げるが、まだ埋まっている。
「もう、いっ、かい!」
砂の中にもう一度髪を入れ、埋まっていた物体を完全に引っこ抜く。
「……なんだこりゃ」
『不明です』
『知らねぇなぁ』
「…だろうよ」
六角錐を二つ、底をピタリとくっつけたような形をしたそれの大きさはざっと五メートル。デケぇ。
「もう一回確認するが、これが原因なんだな?」
『この物体から極めて強力なジャミングが発されています・間違いないかと』
「了解了解……と」
見るからに硬そうなこれを叩き割るとしたら…銀剣の方が良さそうだな。
まずはこれをぶっ壊して、みんなとメッセージを繋ぐかな。日が落ちる前に連絡が取れそうで良かった。
「《破断》」
確かな手応えと共に、俺はその物体を叩き砕いた。
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