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本編
逆襲と臨戦態勢
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バキッとかバギャッとかそんな感じの音。
そんな音を立てて砂の中から掘り起こした物体が砕けた。
と同時に、ロクに緋眼や目を凝らして魔力を見るまでもなく、濃密な魔力が溢れ出す。
「なぁっ!?」
『下がれっ!!』
シャルに言われずとも、慌てて後ろに飛びずさる。
両手で銀剣を握りしめて臨戦態勢を取り、緋眼を意識して強化。
嫌悪感を覚えるほど大量に溢れ出る魔力に、たらりと背筋に垂れる脂汗。
今気づいたが、あの変な物体の中はどうやら空洞だったらしい。
中に何か──あるいは誰かが入っていた?こんな所で、いや、こんな地中で?
──封印。そんな言葉が頭の中を駆け抜けていった。
まさか、あの六角錐を二つくっつけたようなあの箱は、何者かを出られないように封印していたものだった?
そいつが発する魔力が漏れ出て、それが結果として妨害となっていた?
そこまで思考がたどり着いた瞬間、半ば反射的にマキナの名前を叫ぶようにして呼んでいた。
「マキナッッッ!!」
しかし──
『────。』
「!?」
マキナが反応しない。過去に一度もなかった事だ。明らかに異常事態だ。
「ちィ!」
久々に自力で《千変》を操り、俺の身体に纏わせていく。
それと並行して、シャルに声をかける。
「シャル、血界の全面使用の許可をくれ」
『緊急事態だ。やれ』
『《血呪》──限定展開』
即座に血界を手足のみに絞って発動。もしもなにかしてくるのなら、即座に反応出来るよう、中腰になって構える。
その瞬間、撒き散らされていた魔力が唐突に掻き消える。
いや違う。これは消えたんじゃない。
使用された。そう直感した。
「《血鎧》!!」
背中が燃え上がるように熱を持ち、体内の血を消費してさらに血界を発動。《血呪》の上から《血鎧》の赤い紋様が身体中に浮かび上がる。
そう認識したと同時に、俺の左肩から血がどぽっ、と溢れ出す。
『っ…!?』
『なっ…《血鎧》は発動しているのか!?』
している。間違いない。
鎧の上から軽く傷口を見てみると、恐ろしく鋭利な刃物か何かで切り裂かれたらしい。いっそ美しいとすら思える傷口が見えた。
『物理か?』
『いや、魔法…魔術だ』
証拠に、俺の《血鎧》は効果がしっかり発揮されている。莫大な魔力を蓄えこんだ《血鎧》の紋様が熱を帯び、熱いとすら思えるほどだ。
つまり。
ただただ純粋に《血鎧》のキャパオーバー。
空恐ろしいまでの魔力が込められた魔法、あるいは魔術の攻撃に、《血鎧》の方が音をあげたのだ。
『上等、ぶっ殺してその首持ち帰ってやらぁ』
「む?人か?」
と。
俺でもシャルでも、ましてやマキナの声でもない声がした。
もちろん──と言っていいのか分からないが──その声は箱の中から。
ひょいと顔を出したのは、蜂蜜のような金の髪と、空より澄んだ青い瞳を持つ少女。
彼女を見た瞬間、背中の《勇者紋》がざわついた。
『………てめぇ誰だ?』
それを無視し、ひねり出した言葉はそんな言葉。
すると、少女は俺の目を見返し、こちらも全く答えにならないことを呟いた。
「…ん?いや、貴様は人ではないな?《勇者》か」
そんな音を立てて砂の中から掘り起こした物体が砕けた。
と同時に、ロクに緋眼や目を凝らして魔力を見るまでもなく、濃密な魔力が溢れ出す。
「なぁっ!?」
『下がれっ!!』
シャルに言われずとも、慌てて後ろに飛びずさる。
両手で銀剣を握りしめて臨戦態勢を取り、緋眼を意識して強化。
嫌悪感を覚えるほど大量に溢れ出る魔力に、たらりと背筋に垂れる脂汗。
今気づいたが、あの変な物体の中はどうやら空洞だったらしい。
中に何か──あるいは誰かが入っていた?こんな所で、いや、こんな地中で?
──封印。そんな言葉が頭の中を駆け抜けていった。
まさか、あの六角錐を二つくっつけたようなあの箱は、何者かを出られないように封印していたものだった?
そいつが発する魔力が漏れ出て、それが結果として妨害となっていた?
そこまで思考がたどり着いた瞬間、半ば反射的にマキナの名前を叫ぶようにして呼んでいた。
「マキナッッッ!!」
しかし──
『────。』
「!?」
マキナが反応しない。過去に一度もなかった事だ。明らかに異常事態だ。
「ちィ!」
久々に自力で《千変》を操り、俺の身体に纏わせていく。
それと並行して、シャルに声をかける。
「シャル、血界の全面使用の許可をくれ」
『緊急事態だ。やれ』
『《血呪》──限定展開』
即座に血界を手足のみに絞って発動。もしもなにかしてくるのなら、即座に反応出来るよう、中腰になって構える。
その瞬間、撒き散らされていた魔力が唐突に掻き消える。
いや違う。これは消えたんじゃない。
使用された。そう直感した。
「《血鎧》!!」
背中が燃え上がるように熱を持ち、体内の血を消費してさらに血界を発動。《血呪》の上から《血鎧》の赤い紋様が身体中に浮かび上がる。
そう認識したと同時に、俺の左肩から血がどぽっ、と溢れ出す。
『っ…!?』
『なっ…《血鎧》は発動しているのか!?』
している。間違いない。
鎧の上から軽く傷口を見てみると、恐ろしく鋭利な刃物か何かで切り裂かれたらしい。いっそ美しいとすら思える傷口が見えた。
『物理か?』
『いや、魔法…魔術だ』
証拠に、俺の《血鎧》は効果がしっかり発揮されている。莫大な魔力を蓄えこんだ《血鎧》の紋様が熱を帯び、熱いとすら思えるほどだ。
つまり。
ただただ純粋に《血鎧》のキャパオーバー。
空恐ろしいまでの魔力が込められた魔法、あるいは魔術の攻撃に、《血鎧》の方が音をあげたのだ。
『上等、ぶっ殺してその首持ち帰ってやらぁ』
「む?人か?」
と。
俺でもシャルでも、ましてやマキナの声でもない声がした。
もちろん──と言っていいのか分からないが──その声は箱の中から。
ひょいと顔を出したのは、蜂蜜のような金の髪と、空より澄んだ青い瞳を持つ少女。
彼女を見た瞬間、背中の《勇者紋》がざわついた。
『………てめぇ誰だ?』
それを無視し、ひねり出した言葉はそんな言葉。
すると、少女は俺の目を見返し、こちらも全く答えにならないことを呟いた。
「…ん?いや、貴様は人ではないな?《勇者》か」
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