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本編
多頭竜と魔法 終
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それは稲妻にも見える炎。
或いは炎にも見える稲妻。
それがヒュドラの喉奥に見えた途端、俺は思わずとある力を使いそうになった。
すなわち、──第一血界である《血鎖》を。
事実、それは喉のあたりまでせり上がっていた。
が、しかし。
それが発動することは無かった。
理由は至って単純。
ヤツキがそれを防いだからだ。
どうやって?
金剣を──否、理をもってして防いだからだ。
「守護者の《理》をもって命ずる──」
その途端、ヤツキの持っている金剣と、俺が渡し損ねた白剣がその言葉に呼応して熱を持ち、僅かに輝き始める。
それは朝日などを反射して輝く他の光ではなく、明らかに金剣白剣が自ら輝き、発した光だ。
「魔の理を正す力をここに」
次の瞬間、爆発じみた音と共にヒュドラの口から魔法が放たれる。
それは一筋の竜。明けの空を奔る、一匹の竜。
その竜の目標はヤツキを超えてその後ろ──アーネ。
確実に守れると判断してアーネのすぐ側にいたが、しかしこの魔法──迅すぎる!!
今から血界を発動して間に合うかどうか。
ならせめて、魔法に耐性のあるこの身体を盾にしてでも──!!
『いいや、その心配は無用だぜ。今代の』
シャルがそういった瞬間、がくんっ、と。
魔法の勢いが落ちる──否、断じて否。
魔法の勢いが落ちてるのではない。
魔法の竜が細く細く、どんどんと痩せこけていく。
一体何が──
視線をヒュドラの方へと戻していく最中で、あるものを見つけた。
ヤツキが光輝く金剣で、ヒュドラが放った魔法が通ったであろう空間を突き刺しているのを。
そして、そこから魔法の竜が末端からまるで解かれるようにして消えていくのを。
「なんだありゃ…」
ヒュドラすら困惑したように口を開けたまま呆けている。
当然俺もだ。
金剣のあんな能力、俺は知らない。ナナキが使っていたところを見たことすらない。
それなのに、なぜヤツキがあんな能力をさも昔から知っていたかのように行使できる──!?
『さぁな。本人に聞け』
シャルの拒絶じみた言葉を耳にするとほぼ同時に魔法の竜が消滅する。
「理はここに正された」
ヤツキがそう言うと、剣の発光現象も収まる。
その途端、ヒュドラが思い出したように、あるいは猛り狂ったように吼える。
よく見れば首を飛ばした後、焼かなかったために首が生えている。幼体のため、増えることは無かったようだが──それでも双頭の竜は充分すぎるほど厄介だ。
「そう言えばな──」
ヤツキが余裕と共に口を開く。
「俺の得物は元々こっちでな。黒い長剣なんて物より、こっちの方が圧倒的に扱い易い。そもそも武装の点で言えば明らかに理の方が格上だしな」
しかし──何故だろう。
俺にはあのヒュドラが、ヤツキを恐れているようにしか見えない。
「だから……なのか?まぁいい。ともかく、お前にこれで勝ち目は無くなった。元々ありもしなかった可能性だが、無くも無かった可能性が完全に無くなった」
圧倒的な強者、その言葉が相応しく思えた。
「祈るなら祈れ。ただし神には祈るな」
再びヤツキが地を蹴り、ヒュドラの首を刎ねにかかる。
日が昇ったのはそれから約五分後。
それより前にヒュドラの首は完全に無くなり、焦げた首無し死体が転がっていた。
或いは炎にも見える稲妻。
それがヒュドラの喉奥に見えた途端、俺は思わずとある力を使いそうになった。
すなわち、──第一血界である《血鎖》を。
事実、それは喉のあたりまでせり上がっていた。
が、しかし。
それが発動することは無かった。
理由は至って単純。
ヤツキがそれを防いだからだ。
どうやって?
金剣を──否、理をもってして防いだからだ。
「守護者の《理》をもって命ずる──」
その途端、ヤツキの持っている金剣と、俺が渡し損ねた白剣がその言葉に呼応して熱を持ち、僅かに輝き始める。
それは朝日などを反射して輝く他の光ではなく、明らかに金剣白剣が自ら輝き、発した光だ。
「魔の理を正す力をここに」
次の瞬間、爆発じみた音と共にヒュドラの口から魔法が放たれる。
それは一筋の竜。明けの空を奔る、一匹の竜。
その竜の目標はヤツキを超えてその後ろ──アーネ。
確実に守れると判断してアーネのすぐ側にいたが、しかしこの魔法──迅すぎる!!
今から血界を発動して間に合うかどうか。
ならせめて、魔法に耐性のあるこの身体を盾にしてでも──!!
『いいや、その心配は無用だぜ。今代の』
シャルがそういった瞬間、がくんっ、と。
魔法の勢いが落ちる──否、断じて否。
魔法の勢いが落ちてるのではない。
魔法の竜が細く細く、どんどんと痩せこけていく。
一体何が──
視線をヒュドラの方へと戻していく最中で、あるものを見つけた。
ヤツキが光輝く金剣で、ヒュドラが放った魔法が通ったであろう空間を突き刺しているのを。
そして、そこから魔法の竜が末端からまるで解かれるようにして消えていくのを。
「なんだありゃ…」
ヒュドラすら困惑したように口を開けたまま呆けている。
当然俺もだ。
金剣のあんな能力、俺は知らない。ナナキが使っていたところを見たことすらない。
それなのに、なぜヤツキがあんな能力をさも昔から知っていたかのように行使できる──!?
『さぁな。本人に聞け』
シャルの拒絶じみた言葉を耳にするとほぼ同時に魔法の竜が消滅する。
「理はここに正された」
ヤツキがそう言うと、剣の発光現象も収まる。
その途端、ヒュドラが思い出したように、あるいは猛り狂ったように吼える。
よく見れば首を飛ばした後、焼かなかったために首が生えている。幼体のため、増えることは無かったようだが──それでも双頭の竜は充分すぎるほど厄介だ。
「そう言えばな──」
ヤツキが余裕と共に口を開く。
「俺の得物は元々こっちでな。黒い長剣なんて物より、こっちの方が圧倒的に扱い易い。そもそも武装の点で言えば明らかに理の方が格上だしな」
しかし──何故だろう。
俺にはあのヒュドラが、ヤツキを恐れているようにしか見えない。
「だから……なのか?まぁいい。ともかく、お前にこれで勝ち目は無くなった。元々ありもしなかった可能性だが、無くも無かった可能性が完全に無くなった」
圧倒的な強者、その言葉が相応しく思えた。
「祈るなら祈れ。ただし神には祈るな」
再びヤツキが地を蹴り、ヒュドラの首を刎ねにかかる。
日が昇ったのはそれから約五分後。
それより前にヒュドラの首は完全に無くなり、焦げた首無し死体が転がっていた。
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