大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

休息と持ち主

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ヤツキに剣のことを聞きたかったが、別にそれから逃げたわけでは無いだろうが……「疲れた、寝る」と言ってそのまま木に登り、また糸を取りだして巻いて寝てしまった。まぁ、ヒュドラとの戦いが激戦だったのは分かるのだから仕方ないと言えば仕方ないが。
「全く、何か言ってもいいだろうに…」
多少の文句が出るが、逆に言うとそれだけ。俺も疲れているから、休みたいという彼女の気持ちも良くわかる。
「あ、アーネお疲れ様。しばらく寝てていいぞ。そろそろシエルも起きるだろうし」
昨晩の終盤に差し掛かる少し前ぐらいにシエルが「眠い」と言ってフラフラし始めたので、先に寝させていた。ヒュドラ戦の時に居なかったのはそういう理由だ。
「わかりましたわ…大丈夫ですの?」
「何がだ?」
「貴方も丸一日起きていますし…疲労が溜まってるんじゃありませんの?」
アーネがそう気遣うが…
「大丈夫だよ。これぐらいならな。早く寝て少しでも早く俺を休ませてくれる方が今はありがたい」
いつもならもう少し食い下がるだろうが、アーネもアーネでそれなりに疲労しているのだろう。あまり言わずに持ってきた寝袋で寝始めた。
「…さて」
ヤツキに返された金剣と白剣を持ち直し、じっと見つめる。確かヤツキはあの時こう言ったか──
「守護者の理をもって命ずる」
しかし剣は反応しない。
ん?言葉はあってるはずなんだがな…?
となると何か条件が?
だが、ヤツキよりも俺の方がこの剣を長い間使っているはずだし…
…そう言えば、俺が愛用している金剣銀剣だが、よくよく考えればどちらもナナキから譲り受けた物だ。最初に銀剣黒剣、そして半年ほど前に金剣白剣。
その時に譲ってもらってから使っていたが…この剣のことをよく知らない。大貴族達の宝剣だったらしいが……それを三代目聖女がこの森へ運んできた。
何故?
そしてこの宝剣、一般市民達は存在を知っていても、どんなものかは知らない人がほとんどだというのは聖学祭の王都でなんの反応も無かったことから察せる。
つまりこの剣は──大貴族達でも放置するしかなかった?
何故?
そちらの方はすぐに予測がついた。
大貴族達も使えなかったから、か?
だから宝剣として飾り、奉った?有り得そうな話だ。
だがそうなると──本来の持ち主は誰だ?
答えは三代目の聖女が示した、そう考えられないか?
つまり三代目は──本来の持ち主のナナキに返しにこの森へ来た?
そしてナナキは七騎というホムンクルスである前にある存在でもあった。
「先代の…《勇者》?」
ようやく話が見え始めた。
そして招かれざる客も。
『ギャシャアアアアアア!!』
「叫ぶな叫ぶな。睡眠不足の頭に響くだろうが」
金剣を髪に持たせ、黒剣を拾い直す。
十秒で切り刻んでやる。
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