383 / 2,022
本編
一閃と一戦 終
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世界が白と黒、そして不完全な灰色に彩られる。
戦いにおいて、色という情報は限りなく不要な情報だ。最初にそれが抜け落ち、代わりに目に映るもの全てがゆっくりと、粘度の高い水の中にいるようにゆっくりと、ゆっくりと動く。
ニケの足を伝うエネルギーが太もも、膝、足首を通る瞬間ごとに加速、より強大な力を持ち、つま先にそのエネルギーが流れ込んだ瞬間、そのエネルギーが消えた。
違う、踏み込んだんだ。
身体全身を使っての跳躍。
ぐっ、と小さくなっていたニケの身体が地面を離れ、それと同時に全力で伸びる。
文字にすればたったそれだけの行動だが、ニケが──スキル《超加速》を持つ者がそれをするという事においては意味が全く変わってくる。
緋眼が熱を持ったように熱くなる。もっと、もっとだ。
もっと踏み込め。
ここからが本番だ。
色だけでなく、俺とニケ以外の風景、それすらも溶けて掻き消え、黒一色の地面と薄気味悪い灰色の空のみが俺の目に映る。
ニケの身体が宙に浮いた瞬間にスキルを使ったのか、このゆっくりと動く世界であってもその速度は異常。
地面を見れば、あんな勢いで踏み込んだのに、陥没などしていない。
あまりの早さに、地面が陥没するより早く彼女が地面を離れたらしい。
つくづく、馬鹿らしくなるほど疾い。
狙いは──右足?なるほど、確実に足を落として捕縛する気か。
やったことはないが、多分足も髪のように切り離されても動きそうだが…まぁ、切り離される気はサラサラない。
彼女と違い、ノロノロとしか動けない俺の身体。
彼女ほど早くは動けないが、こうすればいい。
いつもよりずっと強く柄を握り、心の中で呟いた。
──《破断》
肩に担がれていた銀剣、それを俺の足目掛けて流星の如く駆けるニケ目掛けて振るう。
普通の斬撃より速い斬撃を繰り出すのなら、戦技に頼ればよい。威力も速度も段違いの物が出る。
気のせいか、彼女が一瞬驚いたような顔をしたが、構わずにそのまま突撃してくる。戦技は発動した後、止めることは出来ないからだ。
それに。
いくら早くとも、銀剣の刃が彼女を割るより早く、彼女の細剣が俺の足を断ち切るだろう。
ニケが残り一メートルで俺の足へ着弾するような距離になってようやく、俺の銀剣が振り下ろされ始めた。
やはり、早かったか。
何故か彼女が何かを堪えるような顔をして、俯いた。
しかし、それでも発動した戦技は問題なく任務を遂行する。
そして。
色が戻った視界に、遅れて地を踏み砕くバガァァァツ!!と言う派手な音と共に、俺の身体から赤い鮮血が舞った。
戦いにおいて、色という情報は限りなく不要な情報だ。最初にそれが抜け落ち、代わりに目に映るもの全てがゆっくりと、粘度の高い水の中にいるようにゆっくりと、ゆっくりと動く。
ニケの足を伝うエネルギーが太もも、膝、足首を通る瞬間ごとに加速、より強大な力を持ち、つま先にそのエネルギーが流れ込んだ瞬間、そのエネルギーが消えた。
違う、踏み込んだんだ。
身体全身を使っての跳躍。
ぐっ、と小さくなっていたニケの身体が地面を離れ、それと同時に全力で伸びる。
文字にすればたったそれだけの行動だが、ニケが──スキル《超加速》を持つ者がそれをするという事においては意味が全く変わってくる。
緋眼が熱を持ったように熱くなる。もっと、もっとだ。
もっと踏み込め。
ここからが本番だ。
色だけでなく、俺とニケ以外の風景、それすらも溶けて掻き消え、黒一色の地面と薄気味悪い灰色の空のみが俺の目に映る。
ニケの身体が宙に浮いた瞬間にスキルを使ったのか、このゆっくりと動く世界であってもその速度は異常。
地面を見れば、あんな勢いで踏み込んだのに、陥没などしていない。
あまりの早さに、地面が陥没するより早く彼女が地面を離れたらしい。
つくづく、馬鹿らしくなるほど疾い。
狙いは──右足?なるほど、確実に足を落として捕縛する気か。
やったことはないが、多分足も髪のように切り離されても動きそうだが…まぁ、切り離される気はサラサラない。
彼女と違い、ノロノロとしか動けない俺の身体。
彼女ほど早くは動けないが、こうすればいい。
いつもよりずっと強く柄を握り、心の中で呟いた。
──《破断》
肩に担がれていた銀剣、それを俺の足目掛けて流星の如く駆けるニケ目掛けて振るう。
普通の斬撃より速い斬撃を繰り出すのなら、戦技に頼ればよい。威力も速度も段違いの物が出る。
気のせいか、彼女が一瞬驚いたような顔をしたが、構わずにそのまま突撃してくる。戦技は発動した後、止めることは出来ないからだ。
それに。
いくら早くとも、銀剣の刃が彼女を割るより早く、彼女の細剣が俺の足を断ち切るだろう。
ニケが残り一メートルで俺の足へ着弾するような距離になってようやく、俺の銀剣が振り下ろされ始めた。
やはり、早かったか。
何故か彼女が何かを堪えるような顔をして、俯いた。
しかし、それでも発動した戦技は問題なく任務を遂行する。
そして。
色が戻った視界に、遅れて地を踏み砕くバガァァァツ!!と言う派手な音と共に、俺の身体から赤い鮮血が舞った。
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