382 / 2,022
本編
一閃と一戦
しおりを挟む
……ッ……リリッ…ギッ…!
耳障りな音を立てて俺の銀剣と、特徴的な細い剣が押し合う。
「よぉニケぇ…さっきぶりぃ…!初っ端から戦技使うの、やめねぇ?」
「……レィア、さん」
突っ込んできたニケ、その戦技を銀剣の腹を盾に見立てて両手で抑え込む。
普通に構えたら絶対にぶっ飛ばされると判断して、髪を杭のように地面に打ち込み、ぶっ飛ばされないようにした。
のに。
『おい、宿屋の前まで押し込まれたぞ!』
巨大な化け物が爪で地面を抉ったような三本の爪痕。
俺が押された跡だ。
「何があったか、馬鹿な僕にはよく分かりません。恐らく、レィアさんには必要な事だったのでしょう。でも…でも!」
キン!と小気味いい音をたててニケが距離を取る。
「僕は警備兵です!元犯罪者が都市長の自宅に侵入し、暴力と略奪を働いたのなら、取り締まるのが僕の…役目です!」
周りの警備兵はずっと遠くに離れている。巻き添えを食らうのを避けるためだ。
ここに割り込めるとしたら、同じ警備隊長クラスの人間だろう。
「何かあるって分かってくれてんだろ?なら、ここは見逃してくれねぇ?」
緩く銀剣をかつぎ、少しばかりの期待を持ってニケに問いかけ投げる。
「それは…出来ません」
まぁ、だろうな…。
ニケも俺達と同じ聖学の出身。
仮にここで俺達をわざと逃がしたりすれば、どんな理由だろうと誰もがこう思うに違いない。
「聖女様の英雄を排出する聖学が、プクナイムと敵対した」、と。
だからニケは絶対に俺達を捕獲したいはずだ。じゃないとこの溝は修復し難くなる。
だが、もしもここで捕縛に成功した所で、俺が犯罪者としてここで終わるのは見えている。だから俺も捕まる訳には行かない。
ニケが再び構える。
距離にして約五メートル。特徴的な細長い剣を両手で握り、胴体の腰のあたりへとグッと寄せる。身体も捻り、倒れんばかりの前傾姿勢。
タダでさえ小さい彼女が、さらに小さく、しかし存在感はどんどん膨れ上がる。
『今代の。不完全でいいから緋眼を使え。捕捉出来んぞ、ありゃ』
もちろん。出し惜しみはナシだ。
本物の緋眼、その偽物を見せてやるよ。
チリッ、と目の上で跳ねるスパークを幻視する。
左と右の緋眼を重ね、右目に再び転写するイメージ。
右と左で見る世界が異常なまでにズレる事で、強烈な違和感を感じ、堪え難い不快感が頭を揺らす。
クラクラと揺れる世界の中、鮮烈なまでの闘気が凝縮され、はち切れんばかりに膨らんでいるのが分かる。
──来る!
「《輝閃迅弾》!」
その瞬間、世界は色を変えた。
耳障りな音を立てて俺の銀剣と、特徴的な細い剣が押し合う。
「よぉニケぇ…さっきぶりぃ…!初っ端から戦技使うの、やめねぇ?」
「……レィア、さん」
突っ込んできたニケ、その戦技を銀剣の腹を盾に見立てて両手で抑え込む。
普通に構えたら絶対にぶっ飛ばされると判断して、髪を杭のように地面に打ち込み、ぶっ飛ばされないようにした。
のに。
『おい、宿屋の前まで押し込まれたぞ!』
巨大な化け物が爪で地面を抉ったような三本の爪痕。
俺が押された跡だ。
「何があったか、馬鹿な僕にはよく分かりません。恐らく、レィアさんには必要な事だったのでしょう。でも…でも!」
キン!と小気味いい音をたててニケが距離を取る。
「僕は警備兵です!元犯罪者が都市長の自宅に侵入し、暴力と略奪を働いたのなら、取り締まるのが僕の…役目です!」
周りの警備兵はずっと遠くに離れている。巻き添えを食らうのを避けるためだ。
ここに割り込めるとしたら、同じ警備隊長クラスの人間だろう。
「何かあるって分かってくれてんだろ?なら、ここは見逃してくれねぇ?」
緩く銀剣をかつぎ、少しばかりの期待を持ってニケに問いかけ投げる。
「それは…出来ません」
まぁ、だろうな…。
ニケも俺達と同じ聖学の出身。
仮にここで俺達をわざと逃がしたりすれば、どんな理由だろうと誰もがこう思うに違いない。
「聖女様の英雄を排出する聖学が、プクナイムと敵対した」、と。
だからニケは絶対に俺達を捕獲したいはずだ。じゃないとこの溝は修復し難くなる。
だが、もしもここで捕縛に成功した所で、俺が犯罪者としてここで終わるのは見えている。だから俺も捕まる訳には行かない。
ニケが再び構える。
距離にして約五メートル。特徴的な細長い剣を両手で握り、胴体の腰のあたりへとグッと寄せる。身体も捻り、倒れんばかりの前傾姿勢。
タダでさえ小さい彼女が、さらに小さく、しかし存在感はどんどん膨れ上がる。
『今代の。不完全でいいから緋眼を使え。捕捉出来んぞ、ありゃ』
もちろん。出し惜しみはナシだ。
本物の緋眼、その偽物を見せてやるよ。
チリッ、と目の上で跳ねるスパークを幻視する。
左と右の緋眼を重ね、右目に再び転写するイメージ。
右と左で見る世界が異常なまでにズレる事で、強烈な違和感を感じ、堪え難い不快感が頭を揺らす。
クラクラと揺れる世界の中、鮮烈なまでの闘気が凝縮され、はち切れんばかりに膨らんでいるのが分かる。
──来る!
「《輝閃迅弾》!」
その瞬間、世界は色を変えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる