大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

本と安静

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という訳で絶対安静となり、ベッドから絶対に離れちゃだめですわよ!とアーネに言われた俺。
けどまぁ、アーネが学校に行ってる間に図書館にでもこっそり行こうかと思っていた。
あの空白の本達がどうも引っかかるから、シャルと相談でもしながらまた探そうかと。
……結果論を言うなら、甘かった。
そりゃもう、砂糖菓子の百倍ぐらい。
「え?」
「何を驚いてるんですの?そもそも、貴女が昏睡している間に誰が貴女の世話をしていたと思ってるんですの?」
いや、まぁ、そりゃお前なんだろうけどさ…。
そもそも、だから十五号室の生徒が怪我した場合は保健室とかじゃなくて自室に運ばれるんだしな。
保健室とか基本的にベッドいっぱいだし。
ちょっと話がズレたか。
まぁつまり、アーネが俺の体調に問題ないと判断するまで学校休んで一緒に部屋にいるってだけな話なんだが。
「マジかよ…」
「マジですわ」
そう言うと、アーネは着替えたりするために、ひょいと脱衣場に入った。
何やら顔を洗うジャブジャブという音と共に何やらくぐもった叫び声のような悲鳴のような声が聞こえたが、多分大丈夫。ほら、すぐ出てきた。
「なんか変な声出してた?」
「い、いえ。なんでもありませんわ」
ふーん。顔真っ赤だけど、大丈夫だろうか。
「取り敢えず、朝食を準備しますわね」
「ん?おお、少し悪いけど食堂まで取ってきてくれ」
そう言って、俺は貸し出してもらった本を……本……あれ、本?
サァッ──!とやや少ない血が引いた。
「おいアーネ…って、もう行っちまったか…」
少し震える手で借りた本の表紙を開くと、長方形の白い紙が張り付いていて、その上に『返却期限《絶対厳守!!》』と書いてある。
その最新の日付は………。
「…過ぎてる、よな」
そりゃ当然だ。五日間寝込んでて二泊三日の本が期限切れにならない訳が無い。
ヤバい、どうしようか。
図書室まで往復大体十五分。走れば十分と言った所か。
ついさっきアーネが出た様だから…十分なら間に合う…か?
「いや、躊躇してる時間が勿体ない…!行くしかないだろ…!」
司書さん、メチャクチャなのである。
そりゃもう、明らかに司書には不要だろってぐらい。裏でダンベル使ってビルドアップしてんじゃねぇの?ってぐらい。
そして、期限までに返さなきゃ…わかってるよな?って言いながらシャドーボクシングしてた司書さんから察するに…。
「返さなきゃ…殺られるッ…!!」
流石に死因が『本を返さなかったために司書の怒りに触れ、撲殺』とか笑えない!断じて笑えないッ!!
俺は急いで本を髪に放り込むと、部屋のドアを開けて──。
「何してるんですの?」
アーネと鉢合わせた。
「いやぁ…これには深い訳が…」
「ベッドに!寝てなさいッ!!」
しこたま怒られた。
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