大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

返却と雑談

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結果というかなんと言うか。
本は後からアーネに返してもらった。
絶対に動いちゃダメなんですわよ!絶対ですわよ!と念押しされた上で返してきてくれた。
司書さん、結構怒ってたらしいけど、事情説明したら許してくれたらしい。けど、今回は特別だって言われたんだと。
「なんでも、『我が殴る前に殴られているのであろう?ならば既に制裁は済んでいるとしようではないか』と身体中の筋肉を膨張させながら言ってましたわ」
司書さん…アナタはどこを目指してるんですか…。
え?司書って筋肉…いらないよね?あの人、なんか野生の熊ぐらいなら素手で殴り殺せそうなんですが。
ちなみに性別は多分…多分、女性。まぁ、あの筋肉は完全に性別を超越してるから関係ないか。
それはさておき。
アーネが俺の予想より圧倒的に早く帰ってきた理由なんだが。
「……あいつって料理出来たんだな」
一ヶ月…いや、もう二ヶ月か。そんだけこの部屋で過ごしてて、一切使われていなかったキッチンが使われているのを初めて見た。
…食えるものが出てくるといいんだが…。
え?俺の料理の腕?森で延々と芋蒸かしてただけだぞ?
出来るわけねぇだろ。
『よぉ、お姫様。お目覚めかい?』
よぉ、糞亡霊。除霊されちまえ。
『んー?俺達は亡霊だが、除霊はされない…ってか出来ないぞー。そういや亡霊ゴーストの類いは神官とか巫女とかその辺りのヤツが使える神聖魔法じゃなきゃ除霊出来ないから、間違っても斬ってやろうとか考えるなよ?アイツらは実体がないしな』
んなこた知ってるわ。
『さて、いい加減俺も現在の状況を知りたいんだが』
あれ?お前知らねぇの?
『俺達はお前が起きてないと出てこれねぇの。だから今代のが寝てる間は俺達も飽ききったクソみてぇな訓練所みたいな所に放り込まれてたんだよ』
いや、知らねぇから。
…んー、とにかく言うことがあるとしたら、班のメンバーと《不動荒野》がお見舞にきて、ユーリアとケバいババァが俺に話があるらしいって事ぐらいかな。
『ユーリア?ケバいババァ?誰だそれ』
あぁ、知らなかったっけ?ユーリアってのは隣の部屋に住んでる紫の髪した大貴族。
『大貴族だぁ?そりゃアレか?ゼヴァルナアークのルトってやつの兄弟か?』
いや、そっちじゃなくてグランデンジークって耳長種エルフの家系だな。ユーリアの方はそれでいいか?
『………』
ん?どうした?シャル。
『…あぁスマン、で、ケバイ・ババァってのは?あんましいい印象がない名前だけど』
違う違う。ケバイ・ババァじゃなくてケバいババァ。単に若作りしてるだけのうちの学校の学校長だよ。ちなみに大ッ嫌い。
『ふーん。で、今の状況は?』
へぇ、こっちは無反応なのか。
で、今の状況だっけ?アーネが飯作ってくれてるって感じだな。
『ご飯?アーネちゃんが?』
…なんか似合わねぇな。お前がちゃん付けとか。
『…うるせぇ』
とか言い合ってたら、キッチンが静かになってきた。
さて、鬼が出るか蛇が出るか…。
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