大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

剣と所在

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意外、とでも言うのだろうか。
結構アーネの飯は美味かった。
まぁ、アーネ曰く「どれも基本的なものばかりですわ」との事。
あの森で人生の大半を過ごしていて、ずっと味のない芋ばっかり食ってたからか知らんが、どうも味覚が軽く麻痺しているらしい。だから、この飯が食堂のオバチャンの飯より圧倒的に劣っているとか言われてもよく分からん。
俺にはどっちも同じぐらい美味いんだがなぁ…。
『いいなー、美味そうだなー』
あぁそうか、シャルは亡霊だから味分かんねぇのか。
何となく優越感に浸りながら朝食を終え。
胸元のアクセサリー……に形を変えた俺の武器を見る。
ルトに銀剣を持ってかれ、金剣と白剣は握りながら意識を失った、ってのは覚えてたが…果たしてそこに何本剣があるのか。
若干怖い気持ちもありつつ、シャツの下を覗いてみると。
色と厚さの薄い胸板があるだけだった。
つまり?剣は?全て。
ルトアイツに────持っていかれた?
『おい、ちょっとま』
──殺す。
純粋な殺意が俺の心の奥底から一気に湧き出した。
それと同時に、ゾッとした。
剣を奪われた。二本も。それは即ち。
──負けた、という事だろうか?
ナナキと交わした最後の約束、それを守れなかった?
『おい!』
ナナキだけじゃなく、ナナキとの約束も?守れなかっ──。
『おい!!』
シャルの声がようやく俺に届いた。
あぁスマン、何事だ?
『お前、呼ばれてんぞ』
ん?俺を呼ぶ奴ってーとこの部屋にはまぁ一人しかいねぇよなぁ。
「どうした?アーネ」
「どうした?じゃありませんわよ。むしろこちらがどうした?ですわ。何だかとっても思いつめたような顔をして」
「うん?そう見えたか?」
『今すぐにでもルトを殺して俺も死ぬ!って感じだったな』
まぁ、お前からしたら俺の思ってることダダ漏れだからな。
けど、似たようなものがアーネにも伝わったらしい。
「死にそうな顔して殺気振り撒いてれば誰でも気になりますわよ」
「いや、何でもない──何でもなくないか」
少し考えて、適当に誤魔化す事をやめた。
「銀剣と金剣がどうやらルトに──《逆鱗》に取られたらしい。どうしても取り返すつもりだ」
「銀剣と金剣と言うと…貴女が愛用しているあの大剣のことですの?」
「あぁ、この間のイザコザはまぁ、そこが発端なんでな」
流石にほぼ間違いないだろうとはいえ、確実ではない理由だから、少し終わりを濁す。
「それなら、ユーリアさんが全て管理しているらしいですわ」
…………。
「明日、土曜だよな?」
「えぇ、そうですわね」
「…明日の朝十時にユーリアの話ってのを聞くから、その旨を伝えといてくれ。ついでに金剣と銀剣も持ってくるように言うのを忘れるなよ」
取り敢えず、上級生一人をどうにかする必要は無くなったようだ。
多分。
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