大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

朝と屁理屈

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ガタガタと揺れる感覚が止まり、それが逆に変に感じて俺は目を覚ました。
今は多分、朝の…七時ぐらいか?
ふむ、何が起きたのか気になるな。
ちょっと見てみるか。
そ~っとベッドから降り、歩いてみると、痛いといえば痛いが、昨日程ではない。多分、寝ているうちに傷の殆どがカサブタとかで覆われたんだろ。
まぁ、今度は連戦技アーツ・コネクトの反動で全身筋肉痛だが、それは我慢出来る程度だから、我慢すればいいか。
「いてて、いた、いたた」
「何をしてるんですか?」
誰かに声をかけられ、ふとそちらを見ると、先生が。ちなみに先生のモヤは先生の身体の約半分にゆったりと溜まっている。
朝起きたら治ってるかなー?とか思ってたけど、ホントこれ何なんだろうな?
大体見当がついてきたけど、確証はないからなぁ…。
「あ、おはよ」
「えぇ、おはようございます。で、シィルさんは何を?」
「いや、馬車が止まったんで何事かと…」
そう言うと、先生は「何言ってんだこのバカ」、と言いはしないものの、そんな感じの顔になった。
「単に馬の休憩ですよ。夜通し歩かせていたので、流石に休ませないと馬が疲労で倒れてしまいます」
いや、夜通し歩かせたならその疲労で倒れそうなもんだが。
ん?いや、もしかして…強化魔法?
えぇ…そんな事に使うのか…。
いや、充分ありがたいっちゃありがたいんだが。
多分、俺とかラウクムくんとか、アーネのためにゆっくり歩かせてるんだろうから。
「で、先生はどうした?」
「なんだかタメ口になってきましたね…」
そこはどうでもいいから。ついでに一人称も変わったけど気にすんな。
「ナーバーヤさんとケイナズさんの容態を見に…」
セリフの途中で思わず胸ぐら掴んだ。
「な、何を」
「俺も連れてってくれねぇ?」
口をぱくぱくとして驚く先生。
なんか、昨日も見た気がする。誰とは言わないけど。
「どっちも面会謝絶だから、待ってるしかなかったけど、先生が行くなら俺もいいよね?」
一応、疑問の体はとっているものの、ほぼ強迫である。本人から見ても。
「いえ、しかしシィルさんの怪我がまだ完治してないのでしょう?なら、少しでも寝て早く治して…」
「寝てて治るなら、こっちが見舞いにいっても早く治るんじゃね?なら、一人より二人だ。さぁいこうぜ?先生?」
なんていう屁理屈。自分で言ってて頭おかしいんじゃねぇの?って思う。
けど、どうしても一目見とかないと。
特にアーネ。世話になってるし、結構不味い状況らしいから。
流石に、これ以上誰にも死んで欲しく無いからな…。
先生はしばらくモゴモゴと口の中で何か言っていたが、やがてこっちをみて、ため息一つ。
この所作もどっかで見たような気が…。
「仕方ありません、シィルさんも来てください」
勝った。
そう思った瞬間だった。
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