大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

傷と剣

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「くそ、あーいてて…」
聖女様に再びお姫様抱っこされて元の馬車のベッドの上。既に聖女様はどこか…っていうか自分の馬車に戻ったんだろう。今は俺一人だ。
時間的に、そろそろ夜の九時ごろか。
そんな事を確認しながら、ベッドに転がり、そっと腕に…というか身体中至るところに巻かれた包帯の一部を剥がしてみる。
英雄に聞いた話だと、顔以外ほぼ全部に裂傷が入っていたそうな。
ちなみに、背中だけはどうしてもわからなかったらしい。ナイス、俺の髪。
そんなわけで剥がした包帯の下は…?
「うわぁ…」
こりゃ痛むわ。
大体、幅は二センチあるかどうか、と言った程度の裂傷が、ほんの少しめくった包帯の下、そこにびっしりと刻まれている。えーと…。
「いだだだだだだ!」
あー痛かった。ちょい涙出たわ。
開いて見たけど、深さは大体一センチもないぐらいだった。
いくらかすり傷程度の傷とはいえ、この数が全身にあるとなると、何があったんだって話だ。
魔族の魔法だろうか?それにしては見た目が派手な割に殺傷力が低い気がする。
いや、重体だったらしいから、低いわけではないのだが、こんな細かい傷を身体中に作るぐらいなら、首筋だとか、太腿の付け根にデカい傷を二、三本つければ出血多量で死ぬ気がするんだが…。
まぁ、助かったのだからいいか。
包帯を巻きなおし、溜め息をつく。
今日一日で、山ほど出来事があった。
数え直すのも面倒だが、無視出来ない事ばかりだ。
それに、ナナキから遺された比翼の剣と、記憶。特に比翼の剣二本は、これからどうしようかと悩む。
銀の方はまだいい。だが、問題は金の方だ。
正直、重くて片手で持てないんだよな。
いや、持つことは出来るが、振り回すというか、実戦では使えない気がする。
さっき持ち上げたのは、かなり全力だったし。
やっぱり、身体を鍛え直さなきゃいけないか…。
とりあえず、しばらくは金の方を慣らす意味合いも込めて使う予定だ。あと、早く習得しなきゃいけない戦技アーツもある。
そう、《征断せいだん》だ。
あの戦技アーツは、元々『強力な攻撃を剣の腹で受け止めた時、中の剣を開放する』という動きを戦技アーツ化したものだ。…余談だが、俺の《煌覇こうは》の発想の元となっている。
つまり、何百回、何千回と相手の攻撃を受け止め、剣を取り出さなきゃいけない。ついでに言うと、それほど強力な攻撃も別に用意しなきゃならないし、慣れるまで《煌覇こうは》のロック解除みたいなキーワードも唱えなきゃいけない。
キーワードは後からナナキの記憶からサルベージだな…。
今日はナナキの記憶に溺れながら眠りにつくとしよう。
せめて、今日ぐらいはいいだろう?
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