165 / 176
最終章「プロポーズは指輪と共に!」
35 結婚相手は?
しおりを挟む「キトリーッ!!」
「兄様!? うぎゅぷっ!」
俺はロディオンの登場に驚いて、座っていたソファから立ち上がると、ロディオンはいつもの如く熱い抱擁を俺に見舞った。おかげで息ができない。
「あぁ、キトリー。神聖国で会ったぶりだね。元気にしてたかい?」
ロディオンはまるで数年ぶりに会ったみたいな口ぶりで言う。でも大体二カ月ぶりぐらいだ。全然元気にしている。しかし、今はそれを訂正するどころじゃない。
「にいたま、ぐるじぃ……!」
俺はロディオンの背中をぺしぺしっと叩く。するとロディオンはすぐさま俺をパッと離した。
「あぁ、すまない、キトリー。ついお前が可愛くて」
……なんかこれ、毎回の事になってきたな。
俺は新鮮な空気を吸いながら思う。しかしロディオンの陰に隠れて、その後ろに立つ人物に俺は気がついていなかった。
「りっちゃん、久しぶりね」
ロディオンの後ろからひょっこりと顔を出した人物に俺は目を見開く。
「ねぇ、ランネット様!?」
……あぶねっ、危うく『姉ちゃん!?』って呼ぶとこだった! てか、なんで姉ちゃんがこんなところに?! 神聖国からわざわざ遊びにきたのか!? でも、ロディオンと一緒のタイミングで??
俺は色々と考えを巡らす。だが、その後ろでレノがぼそっと言った。
「ランネット様がロディオン様のお相手ですよ」
「ええっ!?」
俺はレノの囁きに驚きの声を上げる。
……ロディオンの結婚相手が姉ちゃんッ!?
俺はロディオンとランネット様こと姉ちゃんの顔を見合わせる。するとロディオンは不思議そうな顔を見せた。
「おや? キトリーも私が結婚の申し込みをした時にその場に居たじゃないか」
「え、いつ、どこで?! というかこの前、神聖国で会ったのが初めましてじゃないの!?」
「そうだが、この人だと、思ってね。ビビッと来たんだ」
……ビビッとって、それ静電気じゃ?
俺は驚きのあまり、ちょっとぽかんっとしてしまう。しかしそんな中、姉ちゃんに視線を向ければ、姉ちゃんは何も言わずニコッと俺に微笑んだ。
『これでまた私達、姉弟ね』
そう姉ちゃんの瞳が言っていた。そして姉ちゃんもロディオンと結婚することにノリノリみたいだ。
……まあ、ロディオンはかなりのイケメンだからなぁ。前世からイケメンボーイズを追いかけていた姉ちゃんにとってはいい相手かも。それにロディオンは性格もいいし、優秀だし、優しいし。ちょっと俺が好きすぎるブラコンが玉に瑕だけど……でも現世の兄と前世の姉が結婚って、これって意外とすごいんでは??
俺はロディオンと姉ちゃんを改めて見る。
しかし、ぽけーっと見ている俺の傍で、ロディオンは俺達のやり取りを見守っていたジュリオット様とロメオさんに挨拶をした。
「ジュリオット様、ロメオさん、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。お久しぶりです、相変わらずお元気そうですね」
ロディオンは頭を下げて、ソファに並んで座る二人に挨拶をした。
「ああ。ロディオン君も相変わらず、キトリー君の事が大好きだねぇ」
ジュリオット様はふふっと笑って言った。するとロディオンは躊躇いもなく答える。
「はい、キトリーはこの世で一番可愛いですから!」
……いや、俺は可愛くないし、未来の嫁さんがいる前でなんちゅーことを。そこは嫁さんを一番に……って、姉ちゃんも『うんうん』って頷いてるし! そこは怒るところでは!?
俺は呆れた視線を二人に向ける。だが、俺に構わず四人はワイワイと楽しそうに話を続ける。俺のどこが可愛いとか、素晴らしいとか。
……ちょっと、誰か突っ込みなさいよ! てか、もう聞いてらんないんですけど!?
そう思うが、もはや止めに入る隙間はなく。俺は後ろに控えているレノに視線を向ける。
……レノ、止めてきて! てかロディオンの事、知ってたなら教えろよな!?
俺が視線で訴えるとレノはニコッと笑うだけだった。コノヤロウ~!
しかし、そんな俺にロディオンが声をかけた。
「ああ、そうだ。キトリー、父様から手紙を預かって来たよ」
「父様から?」
ロディオンは内ポケットに入れていた一通の手紙を俺に渡した。俺はそれを受け取り、じっと見る。
……なんだか嫌な予感。
俺はそう思うが、読まない訳にもいかず。
その日の夜、俺は自分の部屋のベッドに座って読むことにした――――。
45
お気に入りに追加
1,187
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる