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第七章ー隣国ー
ゼンとの再会
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「─あ…ゼンさん…おかえりなさい?」
「………」
隣国から転移してパルヴァン邸に帰って来て、そのままパルヴァン様の執務室へ─と向かっている時に、向かい側から歩いて来たゼンさんと出くわした。
何と挨拶をしていいか分からず、取り敢えず、“おかえりなさい”と言ってみると─ゼンさんは固まった。
ーあれ?何か間違った?あっ!もしかして…すごく怒ってる…とか?ー
「ゼンさん、固まってるわよ?」
「そりゃあ…ゼンさんじゃなくても固まるでしょうね…」
「…………は?」
やっとで出て来た言葉は“は”だった。
「兎に角、今はゼンさんに構ってる暇は無いから、このままグレン様の所まで行きましょう!」
と、ミヤさんはゼンさんに構う事無くグレン様の居る執務室に向かった。
「あの…ゼンさん?その…“ただいま”です。えっと…時間があったら、後でパルヴァン様の執務室に来てくださいね。失礼します。」
「ゼンさん、時間が無くても来た方が良いと思います。では─失礼します。」
ハルとティモスも、ミヤに続いてゼンの横を通り過ぎて行った。そして、残されたゼンは─
「──は?ハル様?いや…聖女…様も…居なかったか?は?」
ゼンは暫くの間、そのまま廊下で立ち尽くし、混乱する頭を何とか収めた後、ゆっくりとした歩調でグレンの執務室に向かった─。
「ここまで来ると、辺境地だけではなく、国同士の問題になるな─。」
「はい。なので…少し悔しいですけど、報告も兼ねて王城に行きたいと思ってます。謁見の申請をお願いできますか?」
「勿論。エディオル殿からの報告は国王陛下にも上がっているから、こちらからその件での謁見を要請すれば、すぐにでも通るだろう。ミヤ様と─ハル殿はいつなら動ける?」
「私が転移魔法を使えば、明日にでも動けます。」
「ふむ─。早い方が…良いだろうな。隣国にはエディオル殿が居るし、そのジンとやらが動きやすくする為にもな。」
と、パルヴァン様は直ぐに国王様に手紙を飛ばした。
「─それで、フジ様の提案通り、こちらに戻って来れたと?」
「はい、そうです。そのブレスレットには、結構な魔力が籠められてたみたいです。」
「─そう…ですね…しかも、ミヤ様もご一緒とは…」
ーゼンさんが遠い目になっているのは─珍しいよねー
「あの…ゼンさん。黙って居なくなってすみませんでした。あの時は何て言うか…心が疲れちゃってたみたいで…。」
黙って出て行った事を謝ると
「ハル様。謝るのはこちらの方です。あの時は、本当に何もかもがうまくいかず、私も正常な判断ができていなかったと思います。すみませんでした。」
と、お互いが謝り合っていると
「まぁ、一番悪いのは上の人達よね?これから会えるのよね─まだ会いたくなかったけど。でも、これを機に、色々と約束事を決めるのも良いかもね?」
と、ミヤさんがニッコリ微笑みながら言う。
「確かに─。いい機会だな。シルヴィア、お前も一緒に行くか?」
「あぁ─そうだな。久し振りに…王妃陛下に会うのも良いかもしれないな。」
パルヴァン様もシルヴィア様も笑顔だ。
「オレ─私も行きたいのは山々ですが…ク─預かっている娘の事もありますので、残念ですが留守番をしておきます。」
ゼンさんが、本当に残念そうに言うのでついつい…
「?いざとなれば、日帰りもできるので、大丈夫じゃないですか?ゼンさんも行きたいと言うなら、私は大丈夫ですよ?」
素直に“転移魔法、何人でも何回でもどんと来い!”みたいに言うと、ゼンさんはまた少し固まってしまった。
魔法に関しては、特に困る事もなくサクッと色々無制限にできてしまうので、自分が規格外な事をうっかり忘れてしまう。
「ゼンさん、ハルの魔法に関しては、あまり深く考えない事をお勧めするわ。じゃなければ、こっちが疲れるだけだから。」
ーミヤさん。フォローになっているようで、なってませんからね?ー
「ははっ。確かにな。ゼン、お前も来い。ミヤ様とハル殿の今後の話もしたいからな。その時に、お前も居た方が──スムーズに事が進むだろう?」
「──成る程。でしたら、オ…私も行きます。ハル様、宜しくお願いします。」
「──ハイ。コチラコソ、ヨロシクオネガイシマス。」
ー三ボス+シルヴィア様(パルヴァン三強+ミヤさん)が勢揃いですよ?大丈夫─じゃないかもですね?ー
でも、私も、私のこれからが掛かっているのだ。この4人に──おんぶに抱っこしていただきます!!
「言葉が通じなくなった─ね。」
ゼンさんに、宮下香の事を訊けば、今はこのパルヴァン邸の地下牢に居るとの事だった。しかも、“聖女”ではなくなったせいか、急に言葉が通じなくなったそうだ。ルナさんとリディさんが、断片的に耳にした単語から、どうやら宮下香は日本語を口にしているらしい。
「王城に行く前に、可能であれば会って話がしたいと思ってるんだけど…ハルはどうする?」
「私…私も彼女と話したいです。できれば─1人で。」
ミヤさん達と一緒に会うと、ミヤさん達に頼ってしまうかもしれない。でも、彼女には…私の思っている事を、私の口から伝えたい─伝えなければいけないと思っているから。
「ミヤ様もハル様も、大丈夫でしょう。あのク─娘は、聖女ではないし魔力もない、ただの娘ですから。」
と、宮下香と会って話をする許可はアッサリと下りた。
「………」
隣国から転移してパルヴァン邸に帰って来て、そのままパルヴァン様の執務室へ─と向かっている時に、向かい側から歩いて来たゼンさんと出くわした。
何と挨拶をしていいか分からず、取り敢えず、“おかえりなさい”と言ってみると─ゼンさんは固まった。
ーあれ?何か間違った?あっ!もしかして…すごく怒ってる…とか?ー
「ゼンさん、固まってるわよ?」
「そりゃあ…ゼンさんじゃなくても固まるでしょうね…」
「…………は?」
やっとで出て来た言葉は“は”だった。
「兎に角、今はゼンさんに構ってる暇は無いから、このままグレン様の所まで行きましょう!」
と、ミヤさんはゼンさんに構う事無くグレン様の居る執務室に向かった。
「あの…ゼンさん?その…“ただいま”です。えっと…時間があったら、後でパルヴァン様の執務室に来てくださいね。失礼します。」
「ゼンさん、時間が無くても来た方が良いと思います。では─失礼します。」
ハルとティモスも、ミヤに続いてゼンの横を通り過ぎて行った。そして、残されたゼンは─
「──は?ハル様?いや…聖女…様も…居なかったか?は?」
ゼンは暫くの間、そのまま廊下で立ち尽くし、混乱する頭を何とか収めた後、ゆっくりとした歩調でグレンの執務室に向かった─。
「ここまで来ると、辺境地だけではなく、国同士の問題になるな─。」
「はい。なので…少し悔しいですけど、報告も兼ねて王城に行きたいと思ってます。謁見の申請をお願いできますか?」
「勿論。エディオル殿からの報告は国王陛下にも上がっているから、こちらからその件での謁見を要請すれば、すぐにでも通るだろう。ミヤ様と─ハル殿はいつなら動ける?」
「私が転移魔法を使えば、明日にでも動けます。」
「ふむ─。早い方が…良いだろうな。隣国にはエディオル殿が居るし、そのジンとやらが動きやすくする為にもな。」
と、パルヴァン様は直ぐに国王様に手紙を飛ばした。
「─それで、フジ様の提案通り、こちらに戻って来れたと?」
「はい、そうです。そのブレスレットには、結構な魔力が籠められてたみたいです。」
「─そう…ですね…しかも、ミヤ様もご一緒とは…」
ーゼンさんが遠い目になっているのは─珍しいよねー
「あの…ゼンさん。黙って居なくなってすみませんでした。あの時は何て言うか…心が疲れちゃってたみたいで…。」
黙って出て行った事を謝ると
「ハル様。謝るのはこちらの方です。あの時は、本当に何もかもがうまくいかず、私も正常な判断ができていなかったと思います。すみませんでした。」
と、お互いが謝り合っていると
「まぁ、一番悪いのは上の人達よね?これから会えるのよね─まだ会いたくなかったけど。でも、これを機に、色々と約束事を決めるのも良いかもね?」
と、ミヤさんがニッコリ微笑みながら言う。
「確かに─。いい機会だな。シルヴィア、お前も一緒に行くか?」
「あぁ─そうだな。久し振りに…王妃陛下に会うのも良いかもしれないな。」
パルヴァン様もシルヴィア様も笑顔だ。
「オレ─私も行きたいのは山々ですが…ク─預かっている娘の事もありますので、残念ですが留守番をしておきます。」
ゼンさんが、本当に残念そうに言うのでついつい…
「?いざとなれば、日帰りもできるので、大丈夫じゃないですか?ゼンさんも行きたいと言うなら、私は大丈夫ですよ?」
素直に“転移魔法、何人でも何回でもどんと来い!”みたいに言うと、ゼンさんはまた少し固まってしまった。
魔法に関しては、特に困る事もなくサクッと色々無制限にできてしまうので、自分が規格外な事をうっかり忘れてしまう。
「ゼンさん、ハルの魔法に関しては、あまり深く考えない事をお勧めするわ。じゃなければ、こっちが疲れるだけだから。」
ーミヤさん。フォローになっているようで、なってませんからね?ー
「ははっ。確かにな。ゼン、お前も来い。ミヤ様とハル殿の今後の話もしたいからな。その時に、お前も居た方が──スムーズに事が進むだろう?」
「──成る程。でしたら、オ…私も行きます。ハル様、宜しくお願いします。」
「──ハイ。コチラコソ、ヨロシクオネガイシマス。」
ー三ボス+シルヴィア様(パルヴァン三強+ミヤさん)が勢揃いですよ?大丈夫─じゃないかもですね?ー
でも、私も、私のこれからが掛かっているのだ。この4人に──おんぶに抱っこしていただきます!!
「言葉が通じなくなった─ね。」
ゼンさんに、宮下香の事を訊けば、今はこのパルヴァン邸の地下牢に居るとの事だった。しかも、“聖女”ではなくなったせいか、急に言葉が通じなくなったそうだ。ルナさんとリディさんが、断片的に耳にした単語から、どうやら宮下香は日本語を口にしているらしい。
「王城に行く前に、可能であれば会って話がしたいと思ってるんだけど…ハルはどうする?」
「私…私も彼女と話したいです。できれば─1人で。」
ミヤさん達と一緒に会うと、ミヤさん達に頼ってしまうかもしれない。でも、彼女には…私の思っている事を、私の口から伝えたい─伝えなければいけないと思っているから。
「ミヤ様もハル様も、大丈夫でしょう。あのク─娘は、聖女ではないし魔力もない、ただの娘ですから。」
と、宮下香と会って話をする許可はアッサリと下りた。
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