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第五章ー聖女と魔法使いとー

トラウマ

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「さっきは…すみませんでした!」

と、真っ青な顔をしながら謝罪をするオーブリー様。そして、何故か私の横で威圧を掛ける程の綺麗な笑顔をしているカルザイン様。

えっと…そこまで必死に謝る必要ありますか?そこまで必死に謝られると、私が悪かったのか?と思えて来る。

それに…黒いモヤが纏わり付いていたから、正常な状態じゃなかった可能性もある。

「あのー…もう謝罪はいいので、顔を上げて下さい。」

そう言うと、オーブリー様はようやく顔を上げた。

「あー…何で抱き付いてしまったのか…その…自分でもよく分からないと言うか…その…」

「あのー、本当に…もういいですから…。きっと…では…なかったんだと思いますから…。」

私がそう言うと、オーブリー様とカルザイン様はハッとしたような顔をした。

「あれ?何となく…いつもよりスッキリ…してる?」

横に座っているカルザイン様が、私の方へと視線を向けて来たので、コクリと頷き肯定する。すると、カルザイン様からの威圧が無くなった。

ーよくわからないけど…良かったー







オーブリー様曰く、記憶が曖昧になる事はなく、思考が鈍くなったような感覚だったそうだ。異変を感じ始めたのは…レフコースと私が出会った、あの夜会以降からだった。

ーあれ?それじゃあ…ゲーム…聖女様とは関係無い…のかなぁ?ー

でも…と、チラリとオーブリー様を見る。

うん。やっぱり…さんなんだよね。攻略対象者と言われても不思議じゃない位整っている顔。あぁ…関係が有り無し関係無く、ゲームの情報がもっと欲しいです!お姉さん達!!

兎に角…オーブリー様に纏わり付いていた黒いモヤも無くなった。後は…どうやってこの状態を保つか─なんだけど…。お茶を定期的に飲んでもらう…しかないかな?この辺は、また王太子様か宰相様?かに相談かな?

「オーブリー殿は、その異変の原因に心当たりはあるのか?」

私が色々考えていると、カルザイン様がオーブリー様にそう尋ねた。すると、オーブリー様は少し思案した後

「そう言えば…今、神殿の地下牢に、魔導師を入れているんですけど…そいつの尋問を行った後…からだっような気がします。」



魔導師ー



、魔力封じの首輪ね。魔力を封じると同時に、少しずつ吸い取ったりもするんだ。しかも、魔力が強ければ強い程効果も強くなるんだ。君…凄く…強いんじゃない?』


『なぁ、ギデル。この子の魔力に興味あるんだけど…やっぱり、贄はカテリーナにしないか?』



あれ?あの後…あの魔導師は…何て言った?


の私は普通の状態じゃなかった。魔力封じの首輪を着けられていた間の記憶が曖昧なのだ。どんどん魔力が奪われて行って、意識を持って立っているだけで精一杯だった。



ゾワリッ



の感覚が甦り…身体が震え出す。

と同時に、レフコースの耳がピクリッと反応する。

『主、大丈夫か?』



ー思い出せ…、あの魔導師は…何て言った?ー


『主?』








『…残念…。』







そう…だ…。あの魔導師は…『』と言ったんだ。







で─。









ゾワリッ






ーあぁ…ちょっと…ヤバい…のかもしれないー




「…レフ…コース…」



『主ーっ!?』

レフコースが私を呼ぶのと同時に、レフコースの魔力が膨れ上がり体が大きくなる。

「えっ!?」

「レフコース殿!?」

『主、どうした?何があった?』

レフコースが大きくなった体で、私をくるんと包み込むように丸まる。

あの時と同じように、レフコースが私を守ってくれる。そう思うと少しずつ落ち着いて来る。も、もう駄目かもと思った。

「ハル殿!?どうした?大丈夫…ではなさそうだな…。オーブリー殿、すまないが、今日はこれで終わりにさせてもらう。」

「あ──はい。それは勿論。」

「レフコース殿、私が運ぶが…良いか?」

『勿論。主を…頼む。』

「ハル殿、少しの間、我慢してくれ。」

そう言うと、エディオルはハルを抱き上げた。



ーあぁ…また、この人に…助けられたんだー


フワリと、シトラス系の爽やかな香りがする。

ーあ、この…香りは確か…ー

「…ディ…さま…だった…んだ」

意識が曖昧ながらも、ポロリと言葉が溢れた。




ーエディオル=カルザイン様ー




ここに来てばかりの頃のカルザイン様は、本当に…怖かった。助けられても、お礼どころか、まともに顔を見る事もできなかった。

それなのに─

ハルの私もルディだった私も助けてくれた。

そう言えば…実は、私はハルだと告げた時、カルザイン様だけは驚いてなかった…ような…?まさか…ね?

それからは、優しく笑うカルザイン様しか見ていない…気がする。

そして、今もこうして助けてくれている。
と同じ、シトラス系の香りで気持ちが落ちついていく。
体が触れている所から、カルザイン様の温もりで、あの嫌な感覚が無くなっていく。

ーあぁ…なら安心できる。大丈夫なんだー

と、カルザイン様にスリッと擦り寄って


意識を手放した










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