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第四章ー王都ー
ティモスの動揺②
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「「ティモス!」」
「エディオル、どうだった?途中で、大きな魔力を感じたが…大丈夫だったのか!?」
王城の控え室に戻ると、待っていた3人が声をあげた。そして、エディオルが3人に軽く経緯を説明した。
「あの…フェンリルが?」
「あぁ。自身で光の檻から出て、枷も外れていた。それでもおとなしくしている─と言うか、あの薬師殿から離れようとしないから、今も薬師殿の側に居る。」
「贄に…ルディが…そのフェンリルの贄だから…ですか?」
レオンが恐る恐る尋ねる。それにはティモスが答えた。
「違います。逆に、あのフェンリルはルディを護っていました。何故か、フェンリルが、ルディを王城に連れて行くのを本気で嫌がっていたので、仕方なくルディを神殿に置いて来たんです。」
そのフェンリルは、何故かルディが王城を嫌がっている事を知っていると言う事だ。
「それで、実行犯の2人はキッチリ拘束してクレイルに任せてある。パルヴァン辺境地が絡んでいるから、王としても放っておく事はできないだろう?だから…ちゃんと生かしてある。」
その言葉にランバルトはギョッとした。どうして、エディオルがここまでキレているか分からないからだ。
「あ…あぁ…そうだな。これは直ぐに父上に報告する。レオン殿も、急いでグレン殿に連絡を取った方が良いだろう?薬師殿の事は…神殿でしっかり預かっておくから安心して欲しい。グレン殿には王城から連絡を取るか?それとも、邸に戻るか?」
「お心遣い、感謝致します。リーナ…我が妻が身重な身なので、邸に戻ります。連絡も、我が邸から飛ばします。王家の方々にご迷惑をお掛けして、申し訳ありません。それと…ルディの事、宜しくお願い致します。ティモス、お前はどうしたい?御者なら、私でもできるから。」
そう。ティモスは、レオン夫婦ではなく、ルディの護衛として来ているのだ。ティモスは、チラリとエディオルを見る。
「残るのであれば、部屋を用意させよう。」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
ティモスは、素直にエディオルに礼を言い、その言葉を聞いたレオンは、カテリーナを伴って王城を後にした。
ー大変な事になったー
ティモスもレオンもカテリーナも、内心では焦っていた。グレンとシルヴィアの怒り狂う様が想像できる事は勿論だが、ルディ─ハルの事だ。
どこまで話すか…話さないか…。
彼女の意識がすぐに戻れば、本人の意思の確認のもとで話を進められるが、意識がなかなか戻らなければ?本当に困ったなぁ…と、各々が頭を抱えた。そして…
ーギデル、その首、洗って待っておけー
と、毒づいた。
「ティモス殿、今日はこの部屋を使ってくれ。」
そう言われてカルザイン様に案内されたのは、神殿の客室だった。もう、すっかり夜も遅い時間になってしまったので、ルディの所には、明日の朝に行く事になった。
しかし…どうしても確認しておきたい事があった。
「カルザイン様…少し…時間を頂いても?」
「あぁ…そう来ると思っていた。」
カルザイン様は開けていた扉を閉めて、部屋にあるソファーに座った。
「…カルザイン様は…どこまで…気付いているんですか?」
先ずは、この確認からだと思ったから、思い切って訊いてみる。
ー俺の勘違いなら…ハル…すまないー
「どこまで…か…。」
ソファーに深く腰を掛け、足を組んで、右手を口元にやり思案する姿は、男の俺でも目を奪われそうになる程の男前だった。
ー世間の令嬢達の気持ちが解るとか…ヤバいなー
なんて思っていると
「…還れなかった…のだろうか?」
ーあぁ…やっぱり。カルザイン様は…ハルだと気付いていたんだ。でも…ー
「あのー…俺の記憶違いでなければ、カルザイン様は、先日の視察の時にはルディには会っていませんでしたよね?それなのに…何故、ルディの容姿を聞いただけで…分かったんですか?」
それが最大の疑問だった。結構近い距離で挨拶もした、ダルシニアン様とオーブリー殿でさえ気付かなかったのに。ルナ達に言わせると、動きがハルだと言うが…動きって…さっぱり分からない。
「会ってはなかったが…俺達が帰る日に、パルヴァン邸総出の見送りがあっただろう?あの時に…彼女を見掛けて…まさかと…。」
「…え!?」
え??あの見送りの中にハルも居たのか?え?何処に?居たとしても…絶対後ろの方に居た筈だろう。え?それで見えたの?え?見えたとしても、容姿が全く違うよな?
「えっと…あの…以前のルディとは…容姿が全く違うと思うんですけど…。」
目の前のカルザイン様が、一瞬キョトンとして
「いや─どんな容姿をしてても…分かるだろうな…。」
ーマジか!?ー
多分だが、カルザイン様本人も、何故ルディがハルだと分かったのか、ハッキリと分かっていないんだろう。ただ、本当に、本能的に分かった─と言う事だろう。
あぁ、そうか。フェンリルも、きっとカルザイン様の気持ちに気付いていたんだろう。
この人なら…ハルを大切にしてくれるだろう。
俺は、そんな2人を見守っていけたら良いな…と、思った。
❋暫くティモス視点が続きます❋
「エディオル、どうだった?途中で、大きな魔力を感じたが…大丈夫だったのか!?」
王城の控え室に戻ると、待っていた3人が声をあげた。そして、エディオルが3人に軽く経緯を説明した。
「あの…フェンリルが?」
「あぁ。自身で光の檻から出て、枷も外れていた。それでもおとなしくしている─と言うか、あの薬師殿から離れようとしないから、今も薬師殿の側に居る。」
「贄に…ルディが…そのフェンリルの贄だから…ですか?」
レオンが恐る恐る尋ねる。それにはティモスが答えた。
「違います。逆に、あのフェンリルはルディを護っていました。何故か、フェンリルが、ルディを王城に連れて行くのを本気で嫌がっていたので、仕方なくルディを神殿に置いて来たんです。」
そのフェンリルは、何故かルディが王城を嫌がっている事を知っていると言う事だ。
「それで、実行犯の2人はキッチリ拘束してクレイルに任せてある。パルヴァン辺境地が絡んでいるから、王としても放っておく事はできないだろう?だから…ちゃんと生かしてある。」
その言葉にランバルトはギョッとした。どうして、エディオルがここまでキレているか分からないからだ。
「あ…あぁ…そうだな。これは直ぐに父上に報告する。レオン殿も、急いでグレン殿に連絡を取った方が良いだろう?薬師殿の事は…神殿でしっかり預かっておくから安心して欲しい。グレン殿には王城から連絡を取るか?それとも、邸に戻るか?」
「お心遣い、感謝致します。リーナ…我が妻が身重な身なので、邸に戻ります。連絡も、我が邸から飛ばします。王家の方々にご迷惑をお掛けして、申し訳ありません。それと…ルディの事、宜しくお願い致します。ティモス、お前はどうしたい?御者なら、私でもできるから。」
そう。ティモスは、レオン夫婦ではなく、ルディの護衛として来ているのだ。ティモスは、チラリとエディオルを見る。
「残るのであれば、部屋を用意させよう。」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
ティモスは、素直にエディオルに礼を言い、その言葉を聞いたレオンは、カテリーナを伴って王城を後にした。
ー大変な事になったー
ティモスもレオンもカテリーナも、内心では焦っていた。グレンとシルヴィアの怒り狂う様が想像できる事は勿論だが、ルディ─ハルの事だ。
どこまで話すか…話さないか…。
彼女の意識がすぐに戻れば、本人の意思の確認のもとで話を進められるが、意識がなかなか戻らなければ?本当に困ったなぁ…と、各々が頭を抱えた。そして…
ーギデル、その首、洗って待っておけー
と、毒づいた。
「ティモス殿、今日はこの部屋を使ってくれ。」
そう言われてカルザイン様に案内されたのは、神殿の客室だった。もう、すっかり夜も遅い時間になってしまったので、ルディの所には、明日の朝に行く事になった。
しかし…どうしても確認しておきたい事があった。
「カルザイン様…少し…時間を頂いても?」
「あぁ…そう来ると思っていた。」
カルザイン様は開けていた扉を閉めて、部屋にあるソファーに座った。
「…カルザイン様は…どこまで…気付いているんですか?」
先ずは、この確認からだと思ったから、思い切って訊いてみる。
ー俺の勘違いなら…ハル…すまないー
「どこまで…か…。」
ソファーに深く腰を掛け、足を組んで、右手を口元にやり思案する姿は、男の俺でも目を奪われそうになる程の男前だった。
ー世間の令嬢達の気持ちが解るとか…ヤバいなー
なんて思っていると
「…還れなかった…のだろうか?」
ーあぁ…やっぱり。カルザイン様は…ハルだと気付いていたんだ。でも…ー
「あのー…俺の記憶違いでなければ、カルザイン様は、先日の視察の時にはルディには会っていませんでしたよね?それなのに…何故、ルディの容姿を聞いただけで…分かったんですか?」
それが最大の疑問だった。結構近い距離で挨拶もした、ダルシニアン様とオーブリー殿でさえ気付かなかったのに。ルナ達に言わせると、動きがハルだと言うが…動きって…さっぱり分からない。
「会ってはなかったが…俺達が帰る日に、パルヴァン邸総出の見送りがあっただろう?あの時に…彼女を見掛けて…まさかと…。」
「…え!?」
え??あの見送りの中にハルも居たのか?え?何処に?居たとしても…絶対後ろの方に居た筈だろう。え?それで見えたの?え?見えたとしても、容姿が全く違うよな?
「えっと…あの…以前のルディとは…容姿が全く違うと思うんですけど…。」
目の前のカルザイン様が、一瞬キョトンとして
「いや─どんな容姿をしてても…分かるだろうな…。」
ーマジか!?ー
多分だが、カルザイン様本人も、何故ルディがハルだと分かったのか、ハッキリと分かっていないんだろう。ただ、本当に、本能的に分かった─と言う事だろう。
あぁ、そうか。フェンリルも、きっとカルザイン様の気持ちに気付いていたんだろう。
この人なら…ハルを大切にしてくれるだろう。
俺は、そんな2人を見守っていけたら良いな…と、思った。
❋暫くティモス視点が続きます❋
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