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第四章ー王都ー
動く者
しおりを挟む*クレイル視点*
「エディオル!?」
ルディ殿の容姿を確認した後、駆け出したエディオルに驚く。
「ダルシニアン様、俺も、そのフェンリルの居る所に案内していただけませんか?」
「あ…あぁ、それは勿論。“贄”にすると聞いたんだ。放ってはおけないからね。急ごう。」
「ティモス、頼んだぞ!」
「承知しました。」
「レオン殿、申し訳ないが、殿下の事も宜しく頼みます。」
レオン殿は次期パルヴァン辺境伯を継ぐ者だ。他の近衛を呼ぶには時間が掛かる。この場はレオン殿に任せて大丈夫だろう。
「はい、お任せ下さい。私の方こそ…ルディの事、宜しくお願いします。」
その返事を聞いた後、クレイルとティモスも急いで神殿地下へと向かった。
ーエディオルの奴、全く姿が見えない。それ程早く走って行ったって事か。それよりー
「ひょっとして、ティモス殿はレオン殿とカテリーナ殿ではなく、ルディ殿の護衛だった?」
神殿に向かって走りながら、ティモス殿に声を掛けた。
「……」
ティモス殿はそれに答えないが、沈黙は肯定と同じだ。パルヴァン伯を救ったのはハル殿かと思っていたが、ひょっとしたら、ルディ殿だったんだろうか?
王城を駆け抜け更に奥へ進み、視界に神殿が見えて来た時、ようやくエディオルの姿を捉える事ができた。
「…ホントに…走るの早いなぁ…」
と、苦笑しかけた時、神殿の方から一気に魔力が溢れ出た。
「─っ!?神殿で…何が起こってる!?」
ーこの魔力は誰のだ!?ー
「まさか…本当に…ルディ殿をフェンリルの贄にするつもりか?」
「っ!ダルシニアン様、先に行きます!」
息を呑んだティモス殿は、更にスピードを上げて神殿へと走って行った。
*ティモス視点*
まさか、王城内でハルに危険があるとは思わなかった。そもそも、ギデルは平民だから、王城に入って来れないと思っていた。だから油断してしまった。でも、一つ分かった事がある。グレン様に何らかの恨み?を持つ貴族が居て、ギデルを手助けしていると言う事が─。早急に調べないといけないな。
前を走るカルザイン様の姿を捉える。
カルザイン様は、視察の時にはハル─ルディーには会っていなかったよな?だから、さっきルディの容姿を訊いて来たんだろうけど…。その容姿を聞いた途端、顔色を変えて駆け出した。何故だ?
ールディがハルだと…気付いてる?ー
「まさか…な…。」
接点もあまりなく、寧ろ、嫌われているかもと言っていたし。
まぁ、兎に角、今はハルを助ける事に集中しなければな。
カルザイン様が神殿の中に入って行くのが見え、俺も急いで神殿へと入って行った。
*エディオル視点*
『エディオルとランバルトは、会ってない?パルヴァン付きの薬師のルディ。容姿は─プラチナブロンドの髪に…淡い水色の瞳だったよ。』
聞いた瞬間に、自然と体が動いた。彼女がフェンリルの贄に?そんな事は、絶対にさせない。
ーフェンリルを従属させるには、贄を捧げなくてはいけないー
まことしやかに言われているが…実際は有り得ないのだ。その事を知っているのは、パルヴァン辺境伯、王族やその王族が信を置いている者だけだ。
「─っ!?」
神殿迄後少しと言うところで、神殿から魔力が一気に溢れ出て来た。
「くっそ…間に合え!」
神殿に入り、そのまま地下室へと走り続けると、フェンリルを捕らえている部屋の扉の前に、誰かが立っているのが見えた。あのローブは…魔導師か?いや─魔導師なら、先程の魔力に反応し、こんな所で立っているだけとは…有り得ない。ならばー彼女を連れ去った二人組のうちの1人か─。
そのまま、走りながら佩帯していた剣に手を添える。
ー簡単に殺しはしないが、手加減もしないー
相手が俺に気付き、相手も剣を手にする。俺も躊躇う事なく剣を抜き、そのまま一気に間を詰める。
「ギデル!!」
後ろから付いて来ていたティモス殿が叫ぶ。
やはり、叩き潰して良い相手らしい。
「─なっ!?」
「─遅い。」
相手が剣を振るう前に、切りつける。出血し苦痛を伴うが…死ねない程度に。
呻きながら倒れたソレを目にも留めず、その部屋の扉を開けた。
魔力で溢れかえっている部屋。
そこに、静かに怒りを表しているフェンリル。そのフェンリルの前足の間に─
彼女が横たわって居るのが見えた。
「─っ!」
ー落ち着け!焦るな!もう間違えるな!ー
深呼吸しながら、部屋全体を見回す。
フェンリルと対峙している魔導師?が1人。あの男が、彼女をフェンリルの贄にしようとした奴だろう。理由は分からないが、フェンリルが怒りを向けているのは、その男にだ。
ーフェンリルは…彼女を護ってる?ー
ストンと、何故か納得した。ならば、俺がとる行動はただ一つ─。
彼女をチラリと見ると、彼女の体の下で魔法陣が展開しているのが見えた。
“贄”にする為の魔法陣だろう。
ー赦さないー
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