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第二章ー浄化の旅と帰還ー

閑話ーステファン=オーブリーー

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*お気に入り登録が80を超えて、心臓がバクバクしているみんです(///∇///)ありがとうございます。木に登る勢いで嬉しいです。感謝の気持ちを込めて、閑話1話を投稿しました。よければ、読んで下さい(*´ω`*)勿論、読まなくても本編に影響はありません*








『心に効くポーションは…無いので…えっと…クッキー食べますか?料理で余った材料で、作ったんですけど…。良かったらどうぞ?』

コテンと少し首を傾げながら、持っていたクッキーを俺達に差し出す薬師殿。
旅に出てから1年。まともに言葉を交わすのは初めてだった。





聖女様3人は、毎日のように騎士団の訓練場で、魔導師達と聖女の力の訓練をしていた。3人とも遠目でも分かる程の目をひく美人だった。男だらけの訓練場にほぼ毎日やって来るのだ。俺も含めて、騎士達はいつもソワソワしていた。それと同時に耳にする“巻き込まれただけの異世界人”の噂。

ー聖女様達と違って我が儘だー

その噂の子に付けられた侍女達が、泣きながらその子の事を周りに訴えていた。
その時の俺は、別に俺には関係ないし…と思っていた。
旅の同行に希望したのも、もしかしたら、聖女様と…と、下心もあったからだ。


なのに──


あのクッキーの一件以来、あの薬師殿の事が気になって仕方がない。

聖女様達とは違って…小さい。小さくて可愛い。長目の前髪と眼鏡のせいで、いまいちよく顔は分からないけど…可愛い。

ー“恋心”ではなく“妹"感覚なんだろうか?ー


それから、何日か経ったある日、1人でポーションの確認をしていた薬師殿を見付けて、また話し掛けた。やっぱり可愛い…それに、何となく癒されるなぁ…と思っていたところで、あのフェンリルの出現だ。薬師殿は絶対に守ると思っていたのに…。薬師殿がカルザイン様の腕の中にいるのを見て…モヤモヤした気持ちが沸き上がった。



フェンリルの一件からは、バタバタと忙しくなり、薬師殿とも話す機会はおとずれず、おまけに聖女様達の浄化の勢いも凄まじくて…あっと言う間に帰城する事になった。あまりの浄化のスピードに、ダルシニアン様が軽くひいていたのは…気のせいにしておこう。

帰りは、観光を兼ねてゆっくりと帰る。聖女様と騎士達の交流を深めると言う狙いもあるのだろう。聖女様がこの世界に残り、この世界の者と婚姻を結ぶと言うのは、有難い事だから。ただ…この聖女様達は、絶対に元の世界に還るだろう。そして…それは彼女も…。

帰城の途に就いてから3日目、ようやく薬師殿と話せる機会がおとずれた。しかも、ミリリーナ殿の機転で二人きりになれた。
そこで、ようやくお互いの自己紹介をした。


『あ、改めまして。私、薬師として同行させてもらった“ハル”です。えっと…多分…短い間となると思いますが、宜しくお願いします。って…今更ですけど…ん?何だかよく分からない挨拶になってすみません?』

本当に、よく分からない挨拶だったけど、可愛かった。『ハル』か…名前まで可愛いな。

それからは、観光地で街を歩く時は、俺は聖女様ではなく、ハル殿と一緒に居るようにした。ハル殿は、最後の夜会にも参加しないと言う。ならば、この帰城する迄の間だけしか一緒に居られないと言う事だ。


1人で街を歩いている時、ガラス越しに並んだブレスレットに目が留まった。水色の石が三つ付いたそれは…俺の瞳と同じ色。

ーこれを、ハル殿が着けてくれたらー

あぁ…そうか。俺は、ハル殿が…好きなんだ。そこで、ようやく自分の気持ちに気が付いた。ハル殿は、もうすぐ還ってしまうのに…。

もっと早く出会って話せていたら─

もっと早くに気持ちに気付いていたら─

ふるふると軽く頭を振る。それでもきっと、彼女達は還るだろう。

ならば─

キュッと手を握り締め、反対の手でその店の扉を開けた。






違う世界に居ても…俺の色をハル殿に着けて欲しかったから。







*本日も、いつもと同じ時間に本編も投稿します。宜しくお願いします*


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