上 下
33 / 203
第二章ー浄化の旅と帰還ー

帰還③

しおりを挟む
*本日、3話目です*









「本当は、ハル殿のエスコート役は、私じゃなかったんだけどね…」

後少しで“召喚の間”に着くと言う所で、ダルシニアン様が口を開いた。

「え?」

どう言う事だろうか?と思いダルシニアン様を見上げるが、そのダルシニアン様は、私ではなく、真っ直ぐ前を向いたままだった。

は…素直じゃないから…」

そう言った後、困った様な呆れた様な顔しながら、フッと私の方に視線を向ける。

「えっと?」

『誰が?』と訊こうとした時、ダルシニアン様が先に口を開く。

「ハル殿…ここで…お別れだ。本当にありがとう。お元気で…。」

気が付けば、そこは“召喚の間”で、少し先の方でお姉さん達が私が来るのを待っていた。









『やっと還れるわね。』

『やっぱり異世界とか聖女召喚って言うのは、本で読むだけで良いわー。』

『ねぇ、日本に還ったら、またで集まろうよ!』

『え?誘ってくれるんですか?』

『当たり前じゃない!』

そんな話を日本語で話している。なので、王太子様は、少し複雑な顔をしてミヤさんを見詰めている。きっと、最後に少しでも会話がしたかったんだろう。きっと、そんな王太子様の様子にミヤさんは気付いてると思う。だからこその…日本語での会話なんだろう。

「準備が整いました。」

10人程居る魔導師様のうちの1人が声を上げた。

王太子様達はこの部屋の壁際へと下がり、魔導師様達10人が円形に広がり私達4人を取り囲む様に立つ。そして、私達4人はここに来た時と同じ様にギュッと手を繋ぎ合った。

10人の魔導師様達が一斉に魔術を発動させる。すると、私達の足下に魔法陣が展開され、金色に輝きだした。

ここに来る前と同じ景色だった。

ーゾワリー

ここに来る前とは違う感覚が、足下から這い上がって来る。お姉さん達を伺い見るが、お姉さん達は還れる事を喜んでいるだけの様だ。

ー何だろう?気持ち…悪い?ー

知らず知らずのうちに、繋いでいる手に力が入る。

「ハル?大丈夫?」

手を繋いでいたミヤさんが、私の異変に気付き顔を覗き込んで来たその時、金色の光が一気に溢れ出す。

「ーっ!?」

それと同時に、後ろ?に強く引っ張られる感覚に襲われた。

召還された時と同じ景色なのに、体だけが付いていかない感覚。それにミヤさんとフジさんが慌て出す。右手にミヤさん、左手にフジさんと手を繋いでいたのに、引き剥がされそうな感覚。金色の光が辺り一面に広がっている為、周りがあまりよく見えない。おそらく、魔導師様や王太子様にも見えていないのだろう。返還の魔法陣が止まる事はなかった。

そのまま、何故かお姉さん達が見えなくなってくる。それでもまだ、何とかミヤさんとフジさんと、手は繋がっていた。段々お姉さん達の声も聞き取れなくなってくる。
相変わらず、後ろに引っ張られる感覚が続いている。

ー嫌だ!怖いーっ!ー

その次の瞬間、お姉さん達と手が離れた

「ハルーっ!!」
「ハルちゃん!?」

慌てた様な声で私を呼ぶミヤさんとフジさん。ミヤさんが、必死になって私の手を掴もうと手を伸ばして来る…が…。私が手に着けていたブレスレットに、指が引っかかっただけで…





ーその手が私に届く事はなかったー



    
しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈 
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

処理中です...