FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
28 / 378
一年生の二学期

🍭

しおりを挟む
 ぺこりと頭を下げた奈緒に、魚子が「杏奈に言えば、上手くやってくれるから」と冷たく諭す。
「いいえ、わたしは、転校 し ま せ んっ」
「クビになるよ」
「それでもやる」
 頑として突っぱねた菜緒を見て、魚子が不愉快な様子をあらわにして訊いた。
「なんでそんなに頑ななの? 転校したほうがいいよ。ひらがなから書くとか、あいうえおを言うとかからしてくれるところに行きなって。それから出直してきたらいいじゃん、今じゃなくたって。健常者についてこれないでしょ? 大変なのあんただよ。周りに迷惑かけてまで来るところじゃないしさ。右半身不随なのに、なんで来ちゃったの」
 それを聞いた途端、顔をしかめた奈緒が急にキレて叫んだ。
「なによ、わたしは病気だから仕方がないでしょ。わたしだってなりたくてなったんじゃないやい。もうもう、そんなことするから小沢さんにシメられる。杏奈ちゃんも先生に言う。わたしだって怒る。わたしは好きで障がい者になったんじゃないもん。みんなだってやーやーやーって言うもん。それなのにそんなひどいこと言っていいと思っているのぉ? ひどいんだぁ。わたしだって、じょ し こうせい だやいっ」
 そう言って魚子の肩をぽかりと叩いた。
「ここんとこ、こうしてやるっ」
 えらい勢いでがばりと襲いかかって爪を立て、一心不乱に二の腕をつねる。
「なんとかがなんとかだから、自分でやるんだったら、もー、はーあぁ」ため息をつき、「ああっん、あんだぁ!」と叫んで「あなた、あのねぇ、わたし、なんとかないからいいよね」とまくしたてる。
 手がつけられなくなった奈緒に、何度も二の腕をむしられた魚子は、思わず頬を強くはたいた。
 一瞬呆けたこの子が我に返って叫ぶ。
「あーあー、なぐった。いけないんだ、わたしもぷんぷんでぷんって怒るんだから。信じられないから、わたしは、小沢さんに言います。杏奈ちゃんに言います。そうして怒られればいいっ」
 罪悪感を取り押さえるような表情になるも、魚子は奈緒ののど元を掴んで黙らせる。
「いたい、離して、いたい」
 奈緒は苦しそうにもがくが、圧倒的な力の前になす術が無く、プレハブの壁に押さえつけられた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】

S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。 物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。

夏の決意

S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

礼儀と決意:坊主少女の学び【シリーズ】

S.H.L
青春
男まさりでマナーを知らない女子高生の優花が成長する物語

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

処理中です...