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一年生の二学期
🐿️
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奈緒が顎を下げて宙を見やると、魚子が「そっち右」とつっこむ。
「こっちが“ひどり”」
「ひだり」
「ひだり」奈緒が慌てて言い直し、「なんですかそれは」と、怪訝な顔をしながらすごい目力で真剣に訊く。
魚子は無視して続けた。
「もっと少人数制で教えてくれるところで手取り足取りしてもらったほうが、将来のためだと思うよ。それに、今度の期末テストどうするの。ひらがなだってろくに書けないんじゃ、点の取りようないじゃない。せっかく入ったのに、落第点だなんて時間の無駄だと思うよ」
あからさまにいやな顔をして、奈緒が叫ぶ。
「あらやだ。テスト どうしましょう」
「だーかーらー、卒業できるレベルに下げなさいってこと」暖乃がゆっくりとした口調で教える。
「うーん」と悩み込んだ奈緒が訊いた。
「でも、どうすれば よいですか?」
暖乃は答えず、この子を刺すように見つめる魚子の目を見る。そしてその言葉を待った。
「まず、先生に言いな。いや――杏奈に言いな」
考えながらそう言った魚子が続ける。
「あたしらが伝えてあげる。勉強についていけないから、転校してやり直したいって。それを先生に伝えてもらおう」
奈緒は、不信のまなざしを送る。
それを払拭させようと、魚子がへらりと薄笑う唇から言葉を溢す。
「成瀬だって、卒業できないのは困るでしょ、ただでさえ年上なのに、これ以上年上になったらおばさんになっちゃうじゃん。いつまでたっても卒業できないんだから。やり直しは早いほうがいいよ。考えてみてよ、高校三年間って、短いようでとても大切な時間だよ。それをわけわかんないまま留年繰り返して退学になるより、転校して楽しく過ごした方がいいじゃん。そうじゃなきゃ、この先ずっと補習の毎日で、そのまま卒業できずに終わっちゃうよ」
「それはいや」奈緒が眉をひそめる。
「でしょ。この学校バカばっかだけど、今進学校への転換図ってる真っ最中なんだよね。今はまだ在学認めてくれているけど、来年再来年は分からないよ」
不安をあおられて、奈緒は蒼くなった。
「え~? それなら、来年、再来年、卒業し ま す」
「だから無理だって」魚子と暖乃が口をそろえる。
「それは 分からない でしょう。わたしだって頑張るん だ か ら、そお したら、あれやってこれやって、教えてもらえば、なんとかなるから、お願い します」
「こっちが“ひどり”」
「ひだり」
「ひだり」奈緒が慌てて言い直し、「なんですかそれは」と、怪訝な顔をしながらすごい目力で真剣に訊く。
魚子は無視して続けた。
「もっと少人数制で教えてくれるところで手取り足取りしてもらったほうが、将来のためだと思うよ。それに、今度の期末テストどうするの。ひらがなだってろくに書けないんじゃ、点の取りようないじゃない。せっかく入ったのに、落第点だなんて時間の無駄だと思うよ」
あからさまにいやな顔をして、奈緒が叫ぶ。
「あらやだ。テスト どうしましょう」
「だーかーらー、卒業できるレベルに下げなさいってこと」暖乃がゆっくりとした口調で教える。
「うーん」と悩み込んだ奈緒が訊いた。
「でも、どうすれば よいですか?」
暖乃は答えず、この子を刺すように見つめる魚子の目を見る。そしてその言葉を待った。
「まず、先生に言いな。いや――杏奈に言いな」
考えながらそう言った魚子が続ける。
「あたしらが伝えてあげる。勉強についていけないから、転校してやり直したいって。それを先生に伝えてもらおう」
奈緒は、不信のまなざしを送る。
それを払拭させようと、魚子がへらりと薄笑う唇から言葉を溢す。
「成瀬だって、卒業できないのは困るでしょ、ただでさえ年上なのに、これ以上年上になったらおばさんになっちゃうじゃん。いつまでたっても卒業できないんだから。やり直しは早いほうがいいよ。考えてみてよ、高校三年間って、短いようでとても大切な時間だよ。それをわけわかんないまま留年繰り返して退学になるより、転校して楽しく過ごした方がいいじゃん。そうじゃなきゃ、この先ずっと補習の毎日で、そのまま卒業できずに終わっちゃうよ」
「それはいや」奈緒が眉をひそめる。
「でしょ。この学校バカばっかだけど、今進学校への転換図ってる真っ最中なんだよね。今はまだ在学認めてくれているけど、来年再来年は分からないよ」
不安をあおられて、奈緒は蒼くなった。
「え~? それなら、来年、再来年、卒業し ま す」
「だから無理だって」魚子と暖乃が口をそろえる。
「それは 分からない でしょう。わたしだって頑張るん だ か ら、そお したら、あれやってこれやって、教えてもらえば、なんとかなるから、お願い します」
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