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最終章 勇者編

第105話 ドワーフ国へ出動

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 現在、リリオは孤児院で暮らしている。
 モリーとユフィアの二人とすっかり仲良くなったみたいだ。
 ホームシックに掛かるかと思ったが、リリオは今まで何年かおきに各地を転々としていたと言った。
 久しぶりの孤児院で三人の会話に耳を傾ける。

「聖アルフェロラ国の魚は美味しかった。また行きたい」

 モリーがそう言った。
 次の満月になっても聖アルフェロラ国から救援依頼は届かない。
 方がついたという事なのだろう。
 当分は行く用事はないが、リリオが成人した時には一度行かないとな。

「そうですね。水路を小船で散策するのは楽しかったですわ」
「俺は二年住んでいたから、もう良いや」

「たぶん、近いうちに違う国から救援要請が入るから、また旅行に行けるぞ」
「わくわく。楽しみ」
「次はどんな所なんでしょう」
「俺は行った事のない所がいいな」

「さあ、お喋りはここまでだ。リリオはぬいぐるみ遊びの続き。モリーとユフィアは簡易魔道具作成だ」
「はい」
「頑張ります」
「はい、師匠」

 三人が作業を始める。
 俺はやる事がないので本を読み始めた。

 孤児院の部屋の扉があわただしくノックされる。

「開いてるよ。入って」

 入って来たのは近衛騎士だった。

「サンダー準男爵。出動要請です」
「すぐ出動すると伝えてくれ」
「やったー、もう人形遊びしなくてもいいんだ」
「リリオ、旅先でも修行は続けるぞ」
「そんな」

「私達もそれやったから、仕方ないよ」
「そうですね。基礎は大事ですわ」
「動物のぬいぐるみで遊ぶのが嫌なんだよ。格好わるい」

「しょうがない奴だな。後で騎士人形を作ってやる」
「やったー」



 今回の要請はドワーフ国からだった。
 国の正式名称は旭鉱きゅうこうドワーフ国。
 でもだれもその名前では呼ばないドワーフ国で通じる。

「頭の固い軍もようやく学習してくれたようです。先鋒を譲ってくれました」

 王宮でランデ男爵から説明を受ける。

「被害が少ない方がいいんじゃないか」
「出動がないともうからないのですよ」
「ふーん、武器とか食料の手配の利権か」
「そうですよ。まったく困ったものです」
「今回も手っ取り早く行こうぜ」
「ええ、そのように願いたいものです」

 今回も輸送機で何時ものメンバーだ。
 リリオは輸送機二回目だが、相変わらず窓にへばりついている。
 そんなに高い所が好きなのか。
 今度ハングライダーに乗せてやろう。

 ドワーフ国は山なので輸送機が降りられない。
 手前の草原に降りてそこから馬ゴーレムに乗り移動だ。

 山のふもとに着くと大きいトンネルの入り口が口を開けていた。
 ここがドワーフ国の入り口か。
 ここからは水魔法の流動で移動しよう。

 トンネルには石畳が敷いてあるのですんなりと首都まで進めた。
 灯りはどうやら鏡で日光を反射して確保しているようだ。
 ガイド役のドワーフによれば機密事項らしい。

 首都といってもトンネルに穴が開いているだけの殺風景なものだった。
 ある横穴に通される。

 ここが王宮の代わりみたいだ。
 横穴の壁にはタペストリーと武具が飾ってあった。

「ようこそ。お客人」

 ドワーフの将軍が暖かく迎えてくれた。

「お世話になるよ」
「さっそく、説明させてもらおう。ロックワームの大軍が手に負えないのだ」
「ロックワームは前にやった事がある」
「ほう、疑っている訳ではないが、どうやって倒した」
「死魔法だ。即死の魔法を使う」
「そんな物があるのか」
「失敗しても俺一人が死ぬだけだ」
「失敗は困る。こちらにも都合があるのでな」
「俺も死にたくはないから、微力は尽くさせてもらう」

 ランデ男爵が後を引き取り話し合いは終わった。

 まずは一当てだな。
 ロックワームが出る坑道に案内される。
 先頭はもちろんストーンゴーレムだ。

 ある地点に差し掛かると地面が隆起し地震かと思われるほど揺れた。
 現れたロックワームにストーンゴーレムが食われる。
 俺は死魔法を発動した。
 ぐったりとするロックワーム。
 そして、坑道の前後が幾つも隆起を始める。

「不味い。走れ。逃げるぞ」

 俺達は間一髪、ロックワーム達の虎口から逃れることができた。
 集団になるとロックワームも厄介だな。
 これは毒ミートゴーレムの出番か。

 帰り道に案内人から話を聞く。

「ロックワームに効く毒なんてあるのか」
「聞いた事ないですぜ」

 そうか。
 鉱石自体が毒みたいな物だから、その中で暮らしていれば毒耐性もつくんだろうな。

「何か考えないと」
「頼みますぜ。案内人仲間も何人かくわれとりやす。仇を討ってくだせぇ」
「ああ、任せとけ」

 各個撃破なら死魔法が使える。
 何か上手い手を考えないと。
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