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最終章 勇者編
第106話 ドワーフの酒場
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奴だ。
今そこの角にアルヴァルがいた。
洞窟の分岐を曲がって見えなくなった。
あの魔力は何度も遭遇しているから間違えない。
案内人に別れを告げアルヴァルの後を追う。
出た先はなんと酒場だった。
ドワーフ達が飲んでいる酒をみて非常に驚いた。
蟻蜜酒だったからだ。
幻覚を見たり中毒症状が出る危ない酒のはずなんだが、そんな様子のドワーフは一人もいない。
「この酒、ドワーフ以外に飲ませたか」
俺はドワーフのバーテンに話し掛けた。
「飲ませるとおかしくなるんで、止めてるな」
「なら分かっていると思うがこれは毒だ」
「ドワーフなら毒耐性を持っているから平気だろ」
「そんな無責任な」
「ここは酒場だ。あんたが飲むのなら酒を売ってやってもいい」
「その黄金色の酒を全部買う。酒は仇敵が飲む」
「ほう、その酒を飲んでいる所を確認するがいいか」
「ああ、存分にやってくれ。しかし、なんでそんなに、こだわるんだ」
「ドワーフにとって酒は命。命を無駄にする奴は許しちゃおけない」
とっさに仇敵に飲ませると言ったが実はあてがある。
ロックワームに飲ませてやろうと思ったのだ。
鉱毒に対する耐性はあっても、蟻蜜毒に対する耐性はないかもしれないのでそう言った。
ドワーフが平気なところをみると自信はないがな。
「ドワーフは酒が命。覚えたよ。聞くが毒の酒を売りに来た男は何か言ってなかったか」
「それはお前が約束を果たしてからだ。酒が大事に飲まれたか確認しない事にはな」
「分かったよ」
蟻蜜酒を全て買い取ってこの場を後にした。
アルヴァルには逃げられるし、散財するしで散々だ。
他にも蟻蜜酒を出している酒場があると思ったので、案内人を呼び出し酒場めぐりした。
そして、同じ様な問答をして、酒を全て買い取った。
アイテム鞄の中が酒でパンパンだ。
「腰の物が泣いているな」
酒場でお爺さんドワーフが話し掛けて来た。
「なんだよ。いきなり」
「見せてみろ。鞘をみるに碌な手入れもしてないだろう」
俺は渋々腰の剣を外して渡す。
お爺さんは剣を抜くと刀身を眺めた。
「全然、使ってないな」
「俺はゴーレム使いだ。ゴーレムが戦う。俺の剣は護身用だよ」
「なかなか良い作だが、使い手がなっとらん。これはわしが預かっておく」
「ちょっと待て。俺の剣なんだが」
「職人として資格の無い奴が、剣を持つのは許せん」
「もういいよ。じゃ」
「待て。若い者はせっかちでいかん。代わりの剣をやろう」
お爺さんに案内されて、工房へお邪魔する。
抜き身の剣がそこには沢山、飾ってあった。
お爺さんは壁から鉄の剣を一振り外すと俺に差し出す。
「振ってみい」
俺は剣を素振りした。
「凄い。しっくりくる」
「それで存分に魔獣を仕留めたら剣を取りに来るが良い。その時に剣を返してやろう」
最初は損をしたと思ったがなんか得をした気分だ。
もう剣は返してもらわなくてもいいかな。
「あの爺さんは有名人なんだ」
帰り道で案内人が突然、喋り始めた。
「そうだろうな。あんな事をしていればな」
「あの人、王の剣を打った事もあるんだぜ」
「そんな人の剣を持てたのは儲けたな」
「あんたに言いたいのは。あの爺さんがくたばる前に、剣を受け取りに行きなって事だ」
「なるほどね。職人の意地に答えなきゃ、男がすたるって訳か」
「そういう事だな」
「よし数日のうちに取りに行こう」
宿に帰ると食堂でマリリがモリー、ユフィア、リリオの三人と話し込んでいる。
「おかえり」
「お土産は」
「おかえりなさいませ」
「師匠、おかえり」
「土産はない。みんな集まってどうしたんだ」
「照明の簡易魔道具が大人気で」
「しょうがない。照明メイカーを作るから、ゴーレム騎士団に小遣い稼ぎさせるんだな。モリーとユフィアは自分で作るんだぞ」
「えー、めんどくさいよ」
「これも、修行だ。回路魔法が上手くなるのは数をこなさないと」
「ちぇ」
「マリリさんは簡易魔道具作れるようになった?」
「ええ、洗浄の簡易魔道具を作っているわ」
「マリリさんは免許皆伝だな」
「もう教えてくれないの」
「じゃあ、生活魔法のスキルを教えるよ」
「期待してますよ。せ・ん・せ・い」
「師匠、俺ゴーレムが操れるようになったんだ」
「よし、魔力結晶ゴーレム一体を譲ってやるから、訓練するんだな」
「ありがとう」
「モリーにはないの。差別だ」
「しょうがないな。モリーとユフィアにもあげるよ。大事に使うんだぞ」
「わーい」
「わたくしは出来れば木のゴーレムが良いですわ」
「じゃあ、ユフィアにはトレントゴーレムをあげよう」
「無理を言ってすみません」
「遠慮しなくて良い。余っているからな。そうだ。マリリさんにはこれ」
俺はライタが作った造花の花束をアイテム鞄から出した。
「フィルも女心が分かるようになったのね」
「これ特別な品だから」
『ヒューヒューやるね。女はいつでも花がほしいもんだ』
ライタの戯言は放っておいて、明日はロックワームとの対決だ。
今そこの角にアルヴァルがいた。
洞窟の分岐を曲がって見えなくなった。
あの魔力は何度も遭遇しているから間違えない。
案内人に別れを告げアルヴァルの後を追う。
出た先はなんと酒場だった。
ドワーフ達が飲んでいる酒をみて非常に驚いた。
蟻蜜酒だったからだ。
幻覚を見たり中毒症状が出る危ない酒のはずなんだが、そんな様子のドワーフは一人もいない。
「この酒、ドワーフ以外に飲ませたか」
俺はドワーフのバーテンに話し掛けた。
「飲ませるとおかしくなるんで、止めてるな」
「なら分かっていると思うがこれは毒だ」
「ドワーフなら毒耐性を持っているから平気だろ」
「そんな無責任な」
「ここは酒場だ。あんたが飲むのなら酒を売ってやってもいい」
「その黄金色の酒を全部買う。酒は仇敵が飲む」
「ほう、その酒を飲んでいる所を確認するがいいか」
「ああ、存分にやってくれ。しかし、なんでそんなに、こだわるんだ」
「ドワーフにとって酒は命。命を無駄にする奴は許しちゃおけない」
とっさに仇敵に飲ませると言ったが実はあてがある。
ロックワームに飲ませてやろうと思ったのだ。
鉱毒に対する耐性はあっても、蟻蜜毒に対する耐性はないかもしれないのでそう言った。
ドワーフが平気なところをみると自信はないがな。
「ドワーフは酒が命。覚えたよ。聞くが毒の酒を売りに来た男は何か言ってなかったか」
「それはお前が約束を果たしてからだ。酒が大事に飲まれたか確認しない事にはな」
「分かったよ」
蟻蜜酒を全て買い取ってこの場を後にした。
アルヴァルには逃げられるし、散財するしで散々だ。
他にも蟻蜜酒を出している酒場があると思ったので、案内人を呼び出し酒場めぐりした。
そして、同じ様な問答をして、酒を全て買い取った。
アイテム鞄の中が酒でパンパンだ。
「腰の物が泣いているな」
酒場でお爺さんドワーフが話し掛けて来た。
「なんだよ。いきなり」
「見せてみろ。鞘をみるに碌な手入れもしてないだろう」
俺は渋々腰の剣を外して渡す。
お爺さんは剣を抜くと刀身を眺めた。
「全然、使ってないな」
「俺はゴーレム使いだ。ゴーレムが戦う。俺の剣は護身用だよ」
「なかなか良い作だが、使い手がなっとらん。これはわしが預かっておく」
「ちょっと待て。俺の剣なんだが」
「職人として資格の無い奴が、剣を持つのは許せん」
「もういいよ。じゃ」
「待て。若い者はせっかちでいかん。代わりの剣をやろう」
お爺さんに案内されて、工房へお邪魔する。
抜き身の剣がそこには沢山、飾ってあった。
お爺さんは壁から鉄の剣を一振り外すと俺に差し出す。
「振ってみい」
俺は剣を素振りした。
「凄い。しっくりくる」
「それで存分に魔獣を仕留めたら剣を取りに来るが良い。その時に剣を返してやろう」
最初は損をしたと思ったがなんか得をした気分だ。
もう剣は返してもらわなくてもいいかな。
「あの爺さんは有名人なんだ」
帰り道で案内人が突然、喋り始めた。
「そうだろうな。あんな事をしていればな」
「あの人、王の剣を打った事もあるんだぜ」
「そんな人の剣を持てたのは儲けたな」
「あんたに言いたいのは。あの爺さんがくたばる前に、剣を受け取りに行きなって事だ」
「なるほどね。職人の意地に答えなきゃ、男がすたるって訳か」
「そういう事だな」
「よし数日のうちに取りに行こう」
宿に帰ると食堂でマリリがモリー、ユフィア、リリオの三人と話し込んでいる。
「おかえり」
「お土産は」
「おかえりなさいませ」
「師匠、おかえり」
「土産はない。みんな集まってどうしたんだ」
「照明の簡易魔道具が大人気で」
「しょうがない。照明メイカーを作るから、ゴーレム騎士団に小遣い稼ぎさせるんだな。モリーとユフィアは自分で作るんだぞ」
「えー、めんどくさいよ」
「これも、修行だ。回路魔法が上手くなるのは数をこなさないと」
「ちぇ」
「マリリさんは簡易魔道具作れるようになった?」
「ええ、洗浄の簡易魔道具を作っているわ」
「マリリさんは免許皆伝だな」
「もう教えてくれないの」
「じゃあ、生活魔法のスキルを教えるよ」
「期待してますよ。せ・ん・せ・い」
「師匠、俺ゴーレムが操れるようになったんだ」
「よし、魔力結晶ゴーレム一体を譲ってやるから、訓練するんだな」
「ありがとう」
「モリーにはないの。差別だ」
「しょうがないな。モリーとユフィアにもあげるよ。大事に使うんだぞ」
「わーい」
「わたくしは出来れば木のゴーレムが良いですわ」
「じゃあ、ユフィアにはトレントゴーレムをあげよう」
「無理を言ってすみません」
「遠慮しなくて良い。余っているからな。そうだ。マリリさんにはこれ」
俺はライタが作った造花の花束をアイテム鞄から出した。
「フィルも女心が分かるようになったのね」
「これ特別な品だから」
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