104 / 120
最終章 勇者編
第104話 新たな弟子
しおりを挟む
「こんにちは」
リリオネルの家のドアを叩いた。
「どうぞ」
昨日の爺やがドアを開けてくれた。
こぢんまりとしたリビングのテーブルに着く。
「兄ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。昨日は怒られなかったか」
「もの凄く怒られた」
「じいさん、今日はなんで呼んだんだ」
「今日、私が呼んだのは、坊ちゃんの後見人になって欲しいからです」
「なるのは構わないが。俺は他国の人間だ」
「存じております。昨日少しばかり調べました。Sランク冒険者で貴族になっている事も」
「具体的には何をして欲しい」
「坊ちゃんは命を狙われています。それから守って欲しいのです」
「誰から狙われているんだ」
「それが、敵と味方の区別がつかないのです。坊ちゃんは闇ギルドの総元締めの血を引くお方なのです」
「闇ギルドには良い印象がないな」
「昔の闇ギルドは今とは違っていたのです。そもそもの発足はやむなく犯罪を犯した者同士が集まって出来た組織なのです。あなたも知っているでしょう貴族の横暴を」
「貴族に反発する互助組織みたいな物だったと」
「そうです。それが禁忌の研究に乗り出す者が出て来て後は分かるでしょう」
「違法な事を屁とも思わなくなったって事か」
「そのとおりです」
たぶん最初はいけ好かない貴族に逆らったなどの犯罪者が集まったのだろうな。
レジスタンスにならずに利益を追求する者に成り下がったってところか。
「今も昔かたぎな闇ギルドの人間はいるのか」
「ええ、数は少ないですが」
「闇ギルド総元締めに権限は今もあるのか。なさそうなんだが」
「闇ギルドのギルドマスターが一堂に会する会議があるのです。その議長を総元締めがやる事になってます」
「なるほど。邪魔に思う者や、操りたいと思う者が居る訳だな」
「そうです」
「俺の母国、ガリアン王国に連れて行って欲しいのだな」
「お願いできますか」
「いいだろう。後見人にはなろう。身分的にはリリオネルは俺の弟子にする。それでいいか」
「結構です。鍛えてやって下さい」
「俺、兄ちゃんの弟子になるのか」
「師匠と呼べ。じいさんはどうするんだ」
「私はもうあちこち旅をするには歳を取りすぎました」
「えっ、爺やも一緒じゃないの。やだ。やだ。やだ」
「坊ちゃん、人生に別れはつきものです。もう良い歳なんですから、だだを捏ねるのはみっともないですぞ。一人前の男になって爺を訪ねてきて下され」
「うん、早く一人前になるよ」
リリオネルをモリーとユフィアの所に連れて行った。
「モリー、ユフィア、新しい弟子のリリオだ。さあ姉弟子に挨拶しろ」
「俺、リリオ。よろしくお願いします」
リリオネル五世改めリリオが力を込めて挨拶した。
「私はモリー。元気があるのね。感心、感心」
「ユフィアよ。よろしくね」
「今やっている仕事を見せてやれ」
「うん、今からやるよ。回路魔法! これで完成。簡易魔道具に触ってみて」
「うわ、灯りが灯った」
「どうだ。これを今から覚えてもらう。それとゴーレムだ」
俺はアイテム鞄から魔力結晶ゴーレムとミスリルの剣を取り出し操り始めた。
ゴーレムが剣を振ると風切り音が狭い部屋に響く。
リリオは目を輝かせてゴーレムを見ていた。
「俺もこれができるようになるの」
「ああ、すぐにできる様になるさ。そうだ、ケネスの道場にも通わせてやろう」
「ずるい。モリーも通いたい」
「そうだな、一緒に通え。ユフィアはいいのか」
「私は遠慮します」
「じゃあ、ユフィアには何か習い事を一つやらせてやろう」
「刺繍がいいです」
「リリオ、次はゴーレム騎士団の人達と会わせてやろう」
「うん」
ゴーレム騎士団の面々はマリリの護衛を除いて宿の裏庭で訓練をしていた。
「うわっ、格好いい」
「好きなだけ見てると良いさ」
ゴーレム同士の剣を使った訓練をリリオは穴が空くほど見つめていた。
そこへ、マリリがやって来た。
「フィル、可愛い子供を連れているのね」
「新しい弟子のリリオだ」
「マリリよ。師匠のしごきに耐えられないとか。困った事があれば言ってね」
「リリオです。その時はお願いします」
「俺は弟子をしごいたりしないぞ」
「どうかしら。エルフ国に行った時に簡易魔道具を沢山作らせたでしょ」
「あれはマリリさんが無茶な注文するから」
「そんな、私が酷いって言うの」
「そんな事ないけど」
「マリリさんに恋人はいますか」
おい、リリオなんてこと聞くんだ。
「いないわね。リリオが立候補してくれるの」
「します。俺、します」
「そうね、あと十年たったらね」
「リリオ、それぐらいにしとけ」
「何、フィルも立候補するの」
なんて答えよう。
「領地がもらえ……」
「何、聞こえなかったわよ」
「そろそろ帰り支度しないと」
リリオネルの家のドアを叩いた。
「どうぞ」
昨日の爺やがドアを開けてくれた。
こぢんまりとしたリビングのテーブルに着く。
「兄ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。昨日は怒られなかったか」
「もの凄く怒られた」
「じいさん、今日はなんで呼んだんだ」
「今日、私が呼んだのは、坊ちゃんの後見人になって欲しいからです」
「なるのは構わないが。俺は他国の人間だ」
「存じております。昨日少しばかり調べました。Sランク冒険者で貴族になっている事も」
「具体的には何をして欲しい」
「坊ちゃんは命を狙われています。それから守って欲しいのです」
「誰から狙われているんだ」
「それが、敵と味方の区別がつかないのです。坊ちゃんは闇ギルドの総元締めの血を引くお方なのです」
「闇ギルドには良い印象がないな」
「昔の闇ギルドは今とは違っていたのです。そもそもの発足はやむなく犯罪を犯した者同士が集まって出来た組織なのです。あなたも知っているでしょう貴族の横暴を」
「貴族に反発する互助組織みたいな物だったと」
「そうです。それが禁忌の研究に乗り出す者が出て来て後は分かるでしょう」
「違法な事を屁とも思わなくなったって事か」
「そのとおりです」
たぶん最初はいけ好かない貴族に逆らったなどの犯罪者が集まったのだろうな。
レジスタンスにならずに利益を追求する者に成り下がったってところか。
「今も昔かたぎな闇ギルドの人間はいるのか」
「ええ、数は少ないですが」
「闇ギルド総元締めに権限は今もあるのか。なさそうなんだが」
「闇ギルドのギルドマスターが一堂に会する会議があるのです。その議長を総元締めがやる事になってます」
「なるほど。邪魔に思う者や、操りたいと思う者が居る訳だな」
「そうです」
「俺の母国、ガリアン王国に連れて行って欲しいのだな」
「お願いできますか」
「いいだろう。後見人にはなろう。身分的にはリリオネルは俺の弟子にする。それでいいか」
「結構です。鍛えてやって下さい」
「俺、兄ちゃんの弟子になるのか」
「師匠と呼べ。じいさんはどうするんだ」
「私はもうあちこち旅をするには歳を取りすぎました」
「えっ、爺やも一緒じゃないの。やだ。やだ。やだ」
「坊ちゃん、人生に別れはつきものです。もう良い歳なんですから、だだを捏ねるのはみっともないですぞ。一人前の男になって爺を訪ねてきて下され」
「うん、早く一人前になるよ」
リリオネルをモリーとユフィアの所に連れて行った。
「モリー、ユフィア、新しい弟子のリリオだ。さあ姉弟子に挨拶しろ」
「俺、リリオ。よろしくお願いします」
リリオネル五世改めリリオが力を込めて挨拶した。
「私はモリー。元気があるのね。感心、感心」
「ユフィアよ。よろしくね」
「今やっている仕事を見せてやれ」
「うん、今からやるよ。回路魔法! これで完成。簡易魔道具に触ってみて」
「うわ、灯りが灯った」
「どうだ。これを今から覚えてもらう。それとゴーレムだ」
俺はアイテム鞄から魔力結晶ゴーレムとミスリルの剣を取り出し操り始めた。
ゴーレムが剣を振ると風切り音が狭い部屋に響く。
リリオは目を輝かせてゴーレムを見ていた。
「俺もこれができるようになるの」
「ああ、すぐにできる様になるさ。そうだ、ケネスの道場にも通わせてやろう」
「ずるい。モリーも通いたい」
「そうだな、一緒に通え。ユフィアはいいのか」
「私は遠慮します」
「じゃあ、ユフィアには何か習い事を一つやらせてやろう」
「刺繍がいいです」
「リリオ、次はゴーレム騎士団の人達と会わせてやろう」
「うん」
ゴーレム騎士団の面々はマリリの護衛を除いて宿の裏庭で訓練をしていた。
「うわっ、格好いい」
「好きなだけ見てると良いさ」
ゴーレム同士の剣を使った訓練をリリオは穴が空くほど見つめていた。
そこへ、マリリがやって来た。
「フィル、可愛い子供を連れているのね」
「新しい弟子のリリオだ」
「マリリよ。師匠のしごきに耐えられないとか。困った事があれば言ってね」
「リリオです。その時はお願いします」
「俺は弟子をしごいたりしないぞ」
「どうかしら。エルフ国に行った時に簡易魔道具を沢山作らせたでしょ」
「あれはマリリさんが無茶な注文するから」
「そんな、私が酷いって言うの」
「そんな事ないけど」
「マリリさんに恋人はいますか」
おい、リリオなんてこと聞くんだ。
「いないわね。リリオが立候補してくれるの」
「します。俺、します」
「そうね、あと十年たったらね」
「リリオ、それぐらいにしとけ」
「何、フィルも立候補するの」
なんて答えよう。
「領地がもらえ……」
「何、聞こえなかったわよ」
「そろそろ帰り支度しないと」
0
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる