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第一章

第17話:戦友

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「わっはははは、エドアルド殿下と肩を並べて戦える、楽しいのう」

「気楽な事を言ってくれる、俺はまだ戦う気などなかったのだぞ」

「嘘をつけ、嘘を。
 エドアルド殿下が本気で戦いたくないと思っていたのなら、俺が何を言っても開戦しなかっただろうが。
 こうして開戦したと言う事は、今戦う事にも意味があるからであろう」

「カルロのくせによく理解しているなと言いたいところだが、どうせグレタに教えてもらったのだろう」

「うっははははは、その通りよ、グレタは俺の頭だからな。
 俺の代わりに全部考えてくれて、好きに戦わせてくれる。
 あんないい嫁さんは世界中探しても他におらん。
 エドアルド殿下も早くいい嫁をもらう事だな」

 ウァレリウス・ウディネ伯爵家は正式にアウレリウス・ジェノバ公王家に臣従を誓ってくれたのだが、同時に厄介な献策をしてくれた。
 賢婦人の誉れ高いソニア夫人が考えた策なのか、それとも正式にカルロと結婚したグレタ夫人が考えた事なのか、正直これだけは俺にも分からない。
 もしかしたら両人が綿密に相談して決めた策なのかもしれない。
 それくらいよくできた、俺も考えていた侵攻作戦だった。

 問題は侵攻作戦に参加する貴族軍が、指揮官も将兵も全く信用できない事。
 それどころか、アウレリウス・ジェノバ公王家の名誉と評判を穢しかねない、民に対する乱暴狼藉を働く可能性がとても高い連中なのだ。
 そんな連中を友軍として戦うのは吐き気がするくらい嫌だ。
 しかしソニア夫人とグレタ夫人が考えた侵攻作戦だから、下劣な貴族を炙り出して厳罰に処すための罠が数多く仕掛けてある。

 俺としては、もう少し後でやった方がいいと思っていた、味方に集まってきた貴族を篩にかける謀略だった。
 だが、作戦の優先順位は、立案者が何を大切にするかで簡単に入れ替わる。
 確実に勝つことを優先するのか、それとも手に入る利を優先するのか。
 俺が最初にこの侵攻作戦を考えた時には、お嬢様や公王家の安全を最優先に考えていたのだが、今は優先順位を変えた方がよくなっている。

 ソニア夫人とグレタ夫人は、俺が作戦変更する前にその点を指摘して、自分達の能力を俺に見せつける事で、ウァレリウス・ウディネ伯爵家の価値を高める気だ。
 女性に生まれてきたのが本当に惜しまれる人材だ。
 この世界では女性が高位の軍人になる事ができない。
 王妃や王女、貴族令嬢を護るための女性騎士や戦闘侍女は存在するが、男性と同じようには評価されない、報われない立場になってしまう。

「エドアルド殿下、領民に乱暴狼藉しようとする貴族家が現れました」

 予定通り、品性下劣な行動をしようとした糞野郎が現れた。
 あまりにも愚かすぎて怒りよりも呆れてしまう。
 あれほど何度も公王家の名誉のために乱暴狼藉は許さないと訓示したのに、まだ味方の貴族領を通過させてもらっている時に、味方貴族の領民を襲うのか。

「捕らえて貴族家の指揮官と共に斬首にするぞ」

「本当に宜しいのでございますか」

「味方貴族の領民を襲うような暴挙をするのだから、かなりの高位貴族か王族であることは分かっている。
 だからこそ、身分で手心を加えないために、家名は報告するなと言ってあるのだ。
 例え相手が大国の王子と配下であっても、例外なく斬首にする、分かったな」
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