231 / 251
森の獣 1章 稲生編
正門戦線
しおりを挟む
「中々に様に成って来たな」
稲生は、練兵場での投擲の練習を終えて、
自画自賛していた。
体力は、一朝一夕でつくものではないが、
やらぬよりましと思い、トレーニングを
続けていた。
最近は、守備兵も稲生に絡んでこないため、
安息の時間を過ごしていた。
ノルドの店に顔を出したり、メリアムに大森林にある
薬草について学んだりとそれなりに
充実した日々を過ごしていた。
バルザース帝国の傭兵が獣の討伐に
向かって5日後、森より凄まじい獣の咆哮が
町に響いて来た。
その後、魔獣や魔物が町に来襲した。
バルザース帝国の傭兵が獣と会敵したのであろう。
「稲生、おぬしはまともに魔獣や魔物を
殺したことがないだろう。
獣との討伐の前に経験しておけ。
リン、稲生を補助魔術で援護しろ」
ワイルドは有無を言わさずに命じた。
そもそも稲生は、生物自体を
殺したことがなかったため、魔獣たちとはいえ、
気が進まなかった。
ひとまず、魔獣が来襲している正門に向かった。
「稲生、前もって言っておく。
殺しに慣れるな、酔うなよ。
言葉にすると難しいがとにかく、
そういう事だ」
リンが走りながら、話した。
正門付近には、大量の魔物と既に
守備兵が戦っており、乱戦の様相となっていた。
稲生は、血の臭いに吐きそうになるが、
リンが何かつぶやくと心が落ち着き、身体が軽くなった。
「稲生、とりあえず、心が冷徹になれる魔術と
身体能力を強化する魔術をかけた。
半刻ほどは効果が継続する。
守備隊からあぶれた魔物を狙ってくれ」
リンに言われ、まず、稲生は、投擲による攻撃を
行うことにした。
一投目から、ゲームでよく見るゴブリンのような
魔物の腹部に命中した。血が噴き出し、そのまま倒れた。
稲生は、その様を見るが、魔術のせいか心が
何も揺らがなかった。
二投、三投と同種の魔物に命中し、倒れた。
リンが短槍を構えて、ゴブリンに近づき、一槍で絶命させた。
稲生は小太刀を抜刀すると、近くのゴブリンに
斬りつけた。素人剣術であったが、
ゴブリンの肩口を切り裂いた。
その感触に稲生は、嫌悪を感じるも
心は平静を保っていた。
素人剣術ながら、数匹を倒した稲生は、
参戦しているワイルドを見た。
大斧を力任せに振り回すと、都度、
魔獣の死がそこにあった。
何度か、森より咆哮や爆発音がしたが、
それも聞こえなくなり、半刻もすると、魔獣や魔物は、
あらかた打ち取られ、残りは森に逃散した。
守備隊の犠牲者以外に町への被害はなかったようだ。
魔術の効果がきれると、戦場跡で
稲生は切り刻まれた死骸と臭気のせいで、
何度も嘔吐した。
吐きながら、こんな雰囲気に絶対になれてはいけない、
早く元の世界に戻ならければと心の底から思った。
そんな稲生をリンが気遣わしげな表情で見つめて、
無言で水を渡してくれた。
稲生は、練兵場での投擲の練習を終えて、
自画自賛していた。
体力は、一朝一夕でつくものではないが、
やらぬよりましと思い、トレーニングを
続けていた。
最近は、守備兵も稲生に絡んでこないため、
安息の時間を過ごしていた。
ノルドの店に顔を出したり、メリアムに大森林にある
薬草について学んだりとそれなりに
充実した日々を過ごしていた。
バルザース帝国の傭兵が獣の討伐に
向かって5日後、森より凄まじい獣の咆哮が
町に響いて来た。
その後、魔獣や魔物が町に来襲した。
バルザース帝国の傭兵が獣と会敵したのであろう。
「稲生、おぬしはまともに魔獣や魔物を
殺したことがないだろう。
獣との討伐の前に経験しておけ。
リン、稲生を補助魔術で援護しろ」
ワイルドは有無を言わさずに命じた。
そもそも稲生は、生物自体を
殺したことがなかったため、魔獣たちとはいえ、
気が進まなかった。
ひとまず、魔獣が来襲している正門に向かった。
「稲生、前もって言っておく。
殺しに慣れるな、酔うなよ。
言葉にすると難しいがとにかく、
そういう事だ」
リンが走りながら、話した。
正門付近には、大量の魔物と既に
守備兵が戦っており、乱戦の様相となっていた。
稲生は、血の臭いに吐きそうになるが、
リンが何かつぶやくと心が落ち着き、身体が軽くなった。
「稲生、とりあえず、心が冷徹になれる魔術と
身体能力を強化する魔術をかけた。
半刻ほどは効果が継続する。
守備隊からあぶれた魔物を狙ってくれ」
リンに言われ、まず、稲生は、投擲による攻撃を
行うことにした。
一投目から、ゲームでよく見るゴブリンのような
魔物の腹部に命中した。血が噴き出し、そのまま倒れた。
稲生は、その様を見るが、魔術のせいか心が
何も揺らがなかった。
二投、三投と同種の魔物に命中し、倒れた。
リンが短槍を構えて、ゴブリンに近づき、一槍で絶命させた。
稲生は小太刀を抜刀すると、近くのゴブリンに
斬りつけた。素人剣術であったが、
ゴブリンの肩口を切り裂いた。
その感触に稲生は、嫌悪を感じるも
心は平静を保っていた。
素人剣術ながら、数匹を倒した稲生は、
参戦しているワイルドを見た。
大斧を力任せに振り回すと、都度、
魔獣の死がそこにあった。
何度か、森より咆哮や爆発音がしたが、
それも聞こえなくなり、半刻もすると、魔獣や魔物は、
あらかた打ち取られ、残りは森に逃散した。
守備隊の犠牲者以外に町への被害はなかったようだ。
魔術の効果がきれると、戦場跡で
稲生は切り刻まれた死骸と臭気のせいで、
何度も嘔吐した。
吐きながら、こんな雰囲気に絶対になれてはいけない、
早く元の世界に戻ならければと心の底から思った。
そんな稲生をリンが気遣わしげな表情で見つめて、
無言で水を渡してくれた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。
異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。
途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。
しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。
その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する
花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。
俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。
だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。
アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。
絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。
そんな俺に一筋の光明が差し込む。
夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。
今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!!
★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。
※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
最強スキルで無双したからって、美女達によってこられても迷惑なだけなのだが……。冥府王は普通目指して今日も無双する
覧都
ファンタジー
男は四人の魔王を倒し力の回復と傷ついた体を治す為に魔法で眠りについた。
三十四年の後、完全回復をした男は、配下の大魔女マリーに眠りの世界から魔法により連れ戻される。
三十四年間ずっと見ていたの夢の中では、ノコと言う名前で貧相で虚弱体質のさえない日本人として生活していた。
目覚めた男はマリーに、このさえない男ノコに姿を変えてもらう。
それはノコに自分の世界で、人生を満喫してもらおうと思ったからだ。
この世界でノコは世界最強のスキルを持っていた。
同時に四人の魔王を倒せるほどのスキル<冥府の王>
このスキルはゾンビやゴーストを自由に使役するスキルであり、世界中をゾンビだらけに出来るスキルだ。
だがノコの目標はゾンビだらけにすることでは無い。
彼女いない歴イコール年齢のノコに普通の彼女を作ることであった。
だがノコに近づいて来るのは、大賢者やお姫様、ドラゴンなどの普通じゃない美女ばかりでした。
果たして普通の彼女など出来るのでしょうか。
普通で平凡な幸せな生活をしたいと思うノコに、そんな平凡な日々がやって来ないという物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる