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魔王時代編

15.呪いの先に

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 苦痛を乗り越え進化を果し、最強の魔剣を掌握した。
 俺はさっそく性能チェックをすることにした。魔王城から少し離れた岩山に、魔剣の切先を向ける。

「【呪いの咆哮カースロア】」

 漆黒のエネルギーが放出される。岩山を抉るように突き抜け、更に先の山々を貫いていく。一緒に見ていたエレナとムウが、おぉ~という声を上げた。

「さすがの威力ね」

「ああ、しかも魔力は無限で撃ち放題だ。まさに最強の魔剣だよ」

「主殿に相応しい武器でありますな!」

 その後も試し斬りに勤しんだ。感想としては、試すまでもなかったという感じだ。全ての魔剣の頂点に君臨する力は絶大だった。俺は確実に魔王へ近づいた実感を得ている。
 ここでムウが魔剣を眺めながら疑問を口にした。

「主殿、なぜその剣は呪いの魔剣と呼ばれているのでありますか?」

「この世で生まれた恨みや憎しみ、あらゆる負の感情が、この剣に宿っているからだよ」

「ほう、そういうことだったでありますか」

 説明する俺を、エレナがじっと見つめている。

「ベル君、もしかして見たのかしら? 剣に宿ったものを」

「……ああ」

「やっぱりそう……平気?」

「平気ではないよ。ただ受け入れる覚悟はした」

「そう。ならいいわ」

 エレナは俺の精神を心配していたようだ。しかし俺の表情を見て、杞憂だったと感じている。そして今後は俺が魔剣をじっと眺めながら、エレナにむかってこう言った。

「それにさ。この剣が呪いの魔剣なんて呼ばれている理由は、他にもある」

「他に?」

「込められた呪いを受け止めたとき、一緒にこの剣についての知識も流れ込んできたんだ。この剣には無限の魔力を与える以上に強力な、ある意味無敵な力が宿っている」

「無敵な力?」

「この剣には、所有者の願いを三つだけ叶える力があるんだ」

 ムウが両目を見開いて驚いていた。エレナも大きく反応して、俺に尋ねてくる。

「願いを叶えるって、どんな願いでも?」

「そうみたいだよ。ただし、三つの願いを叶えた瞬間、使用者は死に至る」

「死――」

「それこそ本当の呪いだ」

 ティルヴィングが呪いの魔剣を呼ばれる所以は、願いを叶えた者を死に追いやる力を宿していたからだ。願いの成就による幸福と、死による報いを同時に受ける。死の呪いが、ティルヴィングには込められていた。

「死ぬのは三つの願いを叶えた直後だ。だから二つまでなら死ぬことは無い。だけど、二つの願いを叶えた者は三つ目の願いを叶えずにはいられない。まるで死に自ら飛び込むように、願いが叶うことに目が眩んでしまうんだ」

 なんの対価もなく、願いを叶えることはできない。わかっているはずの感覚を鈍らせ、死を与えて後悔させる。そういう後悔の念がこの魔剣に溜まっていく。
 そうして生まれたのが、呪いの魔剣なのである。
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