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第一章
離れ離れ初日
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<sideアズール>
「では、アズール。行ってくる」
「ふぇ……っ、ルー……い、って、らっちゃい、ぐすっ……」
ルーが笑顔で見送ってほしいって言っていたから、絶対に笑っていってらっしゃいするんだ! って決めてたのに……。
いざ、ルーが行ってしまう時間になると、どうしようもなく涙が溢れ出てきた。
ルーが王さまになるためには絶対に行かなきゃいけないんだ!
ここで僕が引き止めるなんて絶対にしちゃいけない!
抱きつきたいのを必死に我慢して、いってらっしゃいを言うと
「アズール……抱っこさせてくれないか?」
と僕の前にしゃがみ込んできた。
「あじゅーる、がまん、ちた……」
「ああ、そうだな。アズールは我慢してくれた。でも悪い。私が我慢できないんだ。出かける前にアズールを抱きしめたい。いいか?」
「るーっ!!」
僕が手を伸ばすと、膝立ちで僕をギュッと抱きしめてくれた。
ルーの匂いに包まれる。
この匂いに一週間も会えないのは辛いけど、頑張るしかないんだ。
しばらく抱き合っていると、
「ルーディー王子。そろそろお時間でございます」
と声がかけられた。
その言葉にルーはゆっくりと僕の身体から腕を離した。
ルーの温もりが離れていくのが寂しい。
でもずっとここにいるわけにはいかないもんね。
「アズール、それでは……行ってくる」
「うん……いって、らっちゃい」
もう涙でうまく言葉も喋れない。
そんな僕にルーは新しいブランケットを渡してくれた。
「私がいない間、これを私だと思って一緒に寝てくれ」
渡されたブランケットからはルーの匂いが溢れ出ている。
今まで貰ったブランケットの中で一番いい匂いかも知れない。
これならルーのいない一週間を我慢できるかも。
「ルー、ありがとう!」
嬉しくて涙も引っ込んじゃった。
「ああ、それでは行ってくる」
何度目かの言葉を告げながら、ルーは馬車に乗って旅立ってしまった。
ルーの姿が遠くなって見えなくなるまで僕はずっと門の前から離れられなかった。
「ふぇ……っ、ルーっ……」
「アズールさま。よく頑張りましたね」
「ベン……あずーる、がんばった?」
「はい。とても頑張っておられましたよ」
ベンの言葉に救われる。
悲しいけど、でもルーは帰ってきてくれるんだもんね。
僕はルーのくれたブランケットを頭から被って、家のなかに戻った。
「あ、アズール。そのブランケットは部屋に置いてきた方がいいのではないか?」
「おとーさま、どうして?」
「えっ、いや。せっかくの王子からの贈り物だ。汚したり無くしたりすると困るだろう? それに部屋に置いておいた方が王子の匂いが逃げないのではないか?」
確かにそうかも!!
さすがお父さまだ!
「ぼく、へやにおいてくる」
「そうか、いい子だな」
なんだかとっても嬉しそうだ。
僕がいい子だったからかな?
トテトテと階段を上がる。
僕の身長には結構高い階段。
ルーがいるときはずっと抱っこしてくれるから楽ちんだったけど、これから一週間はずっと自分で歩くんだよね。
それが普通なんだろうけど、でも変な感じ。
「わぁっ!」
勢い余って後ろにひっくり返りそうになったけど、さっとマックスが支えてくれて助かった。
「ありがとう、まっくす」
「いいえ、当然のことでございます」
いつも僕のそばにいて、何かあったらいつでも守ってくれるルーと、後ろからいつも見守ってくれているマックス。
僕はそんな優しい二人に守られてるから、安心なんだ。
そういえば、ルーは誰に守られているんだろう?
「ねぇ、まっくす」
「どうかなさいましたか?」
「ルーはとおくまで、いくんでしょう?」
「そうでございますね」
「ルーのことは、だれが、まもってるの?」
「ご心配なく。ルーディー王子は騎士団長のヴェルナーがお供しております」
「そうなの? まっくすも、ぼくとおなじだね」
「同じ、と申しますと?」
「だって、べるなーといっしゅうかん、あえないんでしょう? ぼくと、おなじ。さみしくてないちゃ、だめだよ。あずーるも、がんばるから」
マックスが仲間になった気がして一生懸命伝えると、マックスはキョトンとした顔をしながらもすぐに笑顔になって、
「はい。泣いたり致しません。一緒に頑張りましょうね」
と言ってくれた。
仲間がいる。
それだけで僕はなんだか強くなって、頑張れそうな気がした。
部屋に入り、寝室のベッドの上によじ登りルーから貰ったブランケットを広げて置く。
するとお父さまの言った通り、寝室中にルーの匂いがふわりと漂う。
「わぁー、いい匂い。ちょっとだけ、包まれよう」
まだ離れたばかりなのに、ルーの匂いを嗅いでいると寂しくなってきて、そのブランケットの下に潜りこむと、まるでルーに抱きしめられているように感じられる。
昨日の夜は、ルーがもう出かけちゃうと思ってあまりよく眠れなかったから、ルーの匂いに包まれているとだんだんと眠くなっていた。
いつの間にか、僕はすっかり眠りこんでしまっていた。
「では、アズール。行ってくる」
「ふぇ……っ、ルー……い、って、らっちゃい、ぐすっ……」
ルーが笑顔で見送ってほしいって言っていたから、絶対に笑っていってらっしゃいするんだ! って決めてたのに……。
いざ、ルーが行ってしまう時間になると、どうしようもなく涙が溢れ出てきた。
ルーが王さまになるためには絶対に行かなきゃいけないんだ!
ここで僕が引き止めるなんて絶対にしちゃいけない!
抱きつきたいのを必死に我慢して、いってらっしゃいを言うと
「アズール……抱っこさせてくれないか?」
と僕の前にしゃがみ込んできた。
「あじゅーる、がまん、ちた……」
「ああ、そうだな。アズールは我慢してくれた。でも悪い。私が我慢できないんだ。出かける前にアズールを抱きしめたい。いいか?」
「るーっ!!」
僕が手を伸ばすと、膝立ちで僕をギュッと抱きしめてくれた。
ルーの匂いに包まれる。
この匂いに一週間も会えないのは辛いけど、頑張るしかないんだ。
しばらく抱き合っていると、
「ルーディー王子。そろそろお時間でございます」
と声がかけられた。
その言葉にルーはゆっくりと僕の身体から腕を離した。
ルーの温もりが離れていくのが寂しい。
でもずっとここにいるわけにはいかないもんね。
「アズール、それでは……行ってくる」
「うん……いって、らっちゃい」
もう涙でうまく言葉も喋れない。
そんな僕にルーは新しいブランケットを渡してくれた。
「私がいない間、これを私だと思って一緒に寝てくれ」
渡されたブランケットからはルーの匂いが溢れ出ている。
今まで貰ったブランケットの中で一番いい匂いかも知れない。
これならルーのいない一週間を我慢できるかも。
「ルー、ありがとう!」
嬉しくて涙も引っ込んじゃった。
「ああ、それでは行ってくる」
何度目かの言葉を告げながら、ルーは馬車に乗って旅立ってしまった。
ルーの姿が遠くなって見えなくなるまで僕はずっと門の前から離れられなかった。
「ふぇ……っ、ルーっ……」
「アズールさま。よく頑張りましたね」
「ベン……あずーる、がんばった?」
「はい。とても頑張っておられましたよ」
ベンの言葉に救われる。
悲しいけど、でもルーは帰ってきてくれるんだもんね。
僕はルーのくれたブランケットを頭から被って、家のなかに戻った。
「あ、アズール。そのブランケットは部屋に置いてきた方がいいのではないか?」
「おとーさま、どうして?」
「えっ、いや。せっかくの王子からの贈り物だ。汚したり無くしたりすると困るだろう? それに部屋に置いておいた方が王子の匂いが逃げないのではないか?」
確かにそうかも!!
さすがお父さまだ!
「ぼく、へやにおいてくる」
「そうか、いい子だな」
なんだかとっても嬉しそうだ。
僕がいい子だったからかな?
トテトテと階段を上がる。
僕の身長には結構高い階段。
ルーがいるときはずっと抱っこしてくれるから楽ちんだったけど、これから一週間はずっと自分で歩くんだよね。
それが普通なんだろうけど、でも変な感じ。
「わぁっ!」
勢い余って後ろにひっくり返りそうになったけど、さっとマックスが支えてくれて助かった。
「ありがとう、まっくす」
「いいえ、当然のことでございます」
いつも僕のそばにいて、何かあったらいつでも守ってくれるルーと、後ろからいつも見守ってくれているマックス。
僕はそんな優しい二人に守られてるから、安心なんだ。
そういえば、ルーは誰に守られているんだろう?
「ねぇ、まっくす」
「どうかなさいましたか?」
「ルーはとおくまで、いくんでしょう?」
「そうでございますね」
「ルーのことは、だれが、まもってるの?」
「ご心配なく。ルーディー王子は騎士団長のヴェルナーがお供しております」
「そうなの? まっくすも、ぼくとおなじだね」
「同じ、と申しますと?」
「だって、べるなーといっしゅうかん、あえないんでしょう? ぼくと、おなじ。さみしくてないちゃ、だめだよ。あずーるも、がんばるから」
マックスが仲間になった気がして一生懸命伝えると、マックスはキョトンとした顔をしながらもすぐに笑顔になって、
「はい。泣いたり致しません。一緒に頑張りましょうね」
と言ってくれた。
仲間がいる。
それだけで僕はなんだか強くなって、頑張れそうな気がした。
部屋に入り、寝室のベッドの上によじ登りルーから貰ったブランケットを広げて置く。
するとお父さまの言った通り、寝室中にルーの匂いがふわりと漂う。
「わぁー、いい匂い。ちょっとだけ、包まれよう」
まだ離れたばかりなのに、ルーの匂いを嗅いでいると寂しくなってきて、そのブランケットの下に潜りこむと、まるでルーに抱きしめられているように感じられる。
昨日の夜は、ルーがもう出かけちゃうと思ってあまりよく眠れなかったから、ルーの匂いに包まれているとだんだんと眠くなっていた。
いつの間にか、僕はすっかり眠りこんでしまっていた。
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