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イダラマの同志編

1576.大魔王ヌーの魔瞳

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「ざ、残念な事だがエイジよ、我々は『同志』達の事については何も知らぬし、たとえ知っていたとしても決して『同志』を売るような真似はせぬぞ!」

「然り! 殺すというのであれば好きにするがよい!」

 そう啖呵をきった『テツヤ』と『タケル』の目を確認するエイジだったが、数秒程待ってから再び溜息を吐いた。

 どうやら彼らは本当に『同志』と呼んでいる前時代の『妖魔召士』達の事を売るつもりはないらしく、先程までの怯えは何だったのかと思う程に、決意の固さがその『目』からも伝わってくるのであった。

「お主らのその心の持ちようこそは、確かに小生達『守旧派』のものと同一なのだがな、何故そんなお主らが『改革派』のヒュウガなどに染まってしまったのだろうな」

 今、目の前でエイジに向けて『何も話さないぞ』とばかりに睨みつけている二人の様子にエイジは、自分を含めた前時代の『妖魔召士』達のようだとその心意気を認めながらも、何故ヒュウガについていったのかとばかりに疑問を抱くのであった。

「やれやれ……。かつては同じ『守旧派』であった仲間から強引に聞き出すような真似は避けたかったのだが、前時代の『妖魔召士』が絡んでいるとなれば、放置しておくわけにもいくまい……」

 溜息を吐きながらエイジがそう告げると、これまで誰も居なかった場所から唐突に背丈のある男が出現するのであった。

「だから最初から俺の言う通りにしておけばよかったんだよ……」

 突然の男の出現に『テツヤ』と『タケル』は驚きを見せながらも身構え始める。

「すまぬな、ヌー殿。元は同じ方向を見ていた組織の仲間達だったのだ。話せばもう少し分かる者達だと思っていたのだが……」

「過去に同じ考えを持っていたものであっても、一度自分と袂を分かつ事になれば全く別物となる。てめぇの抱いている考えは無駄なもんだ。さっさとそんな無意味な考えは捨てて、現実を見るべきだぞエイジ」

 長年の経験から『ヌー』は、一度でも自分と相容れない道を選び行った者に対して、過去の話を持ち込む事は無意味な事だと吐き捨てて、裏切者には情をかけるなと告げるのだった。

「ヌー殿の言葉を全て鵜呑みにするつもりはないが、それでも今回ばかりは『妖魔召士』組織の命運もかかっているといっても過言ではない。すまぬが取り決め通りに頼む事にしよう……」

 現在のエイジはもう一人で気ままに動く『はぐれ』の『妖魔召士』ではなく、これからの『妖魔召士』組織を背負って導いていかねばならない身であるが故に、自分のやり方に反してでも結果を出さなければならなかった。

「分かっているとは思うが、見返りなしに協力するのは今回だけだぞ」

 大魔王『ヌー』はあの酒場で、エイジを認めるに至った出来事を思い出しながら、その時の事を持ち出して借りを返すつもりでそう告げるのだった。

「ああ、よろしく頼む」

 二人のやり取りを黙って聞いていた『テツヤ』と『タケル』は何かをされるという事だけは理解したようで、身構えていた状態から『魔瞳』を使おうと同時に目を青くさせ始めるのだった。

 だが、二人の『妖魔召士』が『青い目』を発動させることはなかった。

 ――何故なら、この二人の『妖魔召士』の『魔力』を遥かに上回る大魔王が、その本来の『力』を示すがごとく『三色』の光を自身に纏わせながら、彼の目の前に居る『テツヤ』と『タケル』に対して『金色の目』を行使したからである。

 ――魔瞳、『金色の目ゴールド・アイ』。

 現在の三色併用を使用している状態の大魔王『ヌー』の魔力値は、当代の『上位妖魔召士』程度の『耐魔力』で防ぎきれる程度ではない。

 それどころか前時代の『上位妖魔召士』や、あのランク『8』の『黄雀こうじゃく』ですらも抗えようがない程にまで『ヌー』は強くなっているのである。

 『テツヤ』と『タケル』の『青い目ブルー・アイ』を完全に無力化した大魔王ヌーの『金色の目ゴールド・アイ』は、そのまま彼らの精神を支配するに成功するのであった。

「エイジ、こいつらはもう俺が思うままに操れる状態だ。それで何から聞くんだ?」

 事もなげにそう告げるヌーに苦笑いを浮かべながらもエイジは、組織の長として必要な情報を得るべく、ヌーを通して『テツヤ』と『タケル』の『同志』の存在を事細かく明るみにさせていくのであった――。
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