最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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イダラマの同志編

1575.そこに待ち受けていた者は

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 ヒュウガと共に『牢』を出された『テツヤ』と『タケル』は途中から自分達二人だけが、ヒュウガとは別れさせられて別の部屋へ案内されているという事に薄々と気づきながら、目隠しをされた状態で廊下を歩かされていた。

「いったい何処へ連れて行くつもりなのだ?」

「先程の騒音が何か関係をしておるのだろうが、そろそろ何があったのか教えてくれてもよいのではないか?」

 そして自分達だけにされた事で不安を感じさせられている『テツヤ』達は、口々に案内役であろう『妖魔退魔師』に質問をぶつけるのであった。

「やれやれ、君達も白々しいね。外に居る君達の『同志』達に自分達を助けるように『退魔組』の者達に命じたのは君達なのだろう?」

 廊下を歩かせられている二人はその言葉に、内心でドキリとさせられるのであった。

「は、はて? いったい何の事を言っておるのだ? 我々はずっと『牢』に入れられていたのだぞ? そ、そのような伝言が誰に出来るというのであろうか?」

「し、然り。我々も悲鳴や戦闘で起きている騒音でしか事情は知らぬ故、何があったのかと『牢』の中でふ、不思議に思っておったのだ!」

「ふーん。まぁ、詳しい事情はこれから案内する部屋でじっくり聞かせてもらうから、とりあえず黙って部屋までついてきてよ」

 前を歩く案内人である『妖魔退魔師』の言葉に、とぼけてみせた『テツヤ』と『タケル』であったが、ようやくこの案内人が『組長格』である『スオウ』の声だという事に気づいた二人は、この後は何も口にせず黙って後をついていくのであった。

 …………

 そしてそれから少し歩いた後、扉が開く音を耳にした『テツヤ』達は、部屋の中に入れられた後に、椅子に座るように促されるのだった。

「さて、これから君達の目を見えるように目隠しを取るけど、余計な事は考えないでね?」

 スオウの言う余計な事とは『魔瞳まどう』の事であろう。

 流石に『組長格』である『スオウ』には『魔瞳』は回避されるだろうという事は理解しているため、黙って頷いて見せる二人であった。

「よいしょっと」

 そして『テツヤ』と『タケル』の目隠しがスオウによって取り除かれて、久方ぶりに二人の目に、部屋の明かりが飛び込んでくるのであった。

「え……?」

「なっ!?」

 そして目が見えるようになった二人の前に、全く予想だにしていない人物が机を挟んで座っているのだった。

 ――その予想外の人物の名は、彼らと同じ『妖魔召士』にして、当代の『妖魔召士』の長となった『エイジ』であった。

「久しぶりだな、テツヤ殿にタケル殿」

「お、お主はエイジ!?」

「な、何故お主がここに居るのだ!?」

 案内された先には『妖魔退魔師』組織の誰かが居るであろうと予測を立てていた『テツヤ』達だったが、まさかその場に居るのが『妖魔召士』組織を抜けた筈のはぐれとなった『エイジ』であったために、驚きを隠せない二人であった。

「お主らが『牢』に入れられている間に小生も色々とあってな。再び『妖魔召士』組織に戻る事となったのだ」

「それどころか現在の『エイジ』殿は、当代の『妖魔召士』組織の正式な長だからね」

「「!?」」

 スオウの横からの口出しの言葉に、更に驚きを深める二人であった。

「は、はぁ!? そ、そんな話は最近まで聞いたことがなかったぞ!」

「し、然り! ほんの少し前まではお主は『ケイノト』の裏路地で『はぐれ』の『妖魔召士』としてひっそりと暮らしていた筈だ!」

 流石にあの『ヒュウガ』から間諜を任されていた二人だけあって、サカダイの町の間諜を務めながらも色々と他の町の情報も仕入れていた様子であった。

「だから先程お主らが『牢』に入れられている間に、小生にも色々とあったと申したところであろう」

 そう言って小さく溜息を吐いたエイジだが、そこで目を細めて射貫くような視線をテツヤ達に向けた。

「さて、そんな事よりも小生が聞きたい事は、お前らが『退魔組』の者達を使って前時代の『妖魔召士』達をこの場に差し向けた事についてだ――」

「「!?」」

 この場に呼ばれたという事は色々と探りを入れられるだろうと覚悟はしていた『テツヤ』達だったが、話す前からもうそこまで知られているのかと内心で舌打ちをするのであった。
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