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サカダイ編
1418.予想外のイツキの言葉
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シゲンにソフィと戦った時の状況や、戦ってみて感じたソフィの強さの事などを話せば、捕縛されている自分にある程度の自由が与えられる。
その上に総長シゲン直々に便宜を図ってくれて、今後生きやすい環境を整えてくれるかもしれないと感じたイツキは、自分が今どれだけ重要な立場なのかを自覚した後、直ぐに客観的にも考え始めるのだった。
(他に何か利用できる手立てはないか? あくまでこれは『金色の体現者』だとかいう『力』を生まれ持っていた俺があの『ソフィ』殿と戦ったからこそ、こんな好機の場を与えられているんだ。誰にも直ぐに真似ができる状況ではないし、あの『妖魔山』にソフィ殿が妖魔退魔師と共に同行する今しか出来ない交渉なのだ。考えろ。何かもっとこの場面を活用出来て、この俺だけじゃなく他にも捕らえられた『ユウゲ』や『ミヤジ』達も自由に出来て、今後一生楽に暮らせる方法を探れ!)
イツキはこの恵まれた交渉の場を与えられた事で、手にした好機を最大限に活かせとばかりに、自分に言い聞かせながら脳内で常人では考えつかないことや、思いつかない案を次々と考えては打ち消していき、このシゲンを相手に首を縦に振らせる『交渉案』を恐ろしい速度で考え始めるのだった。
唐突に目の前で黙り込んで何かを考え始めたイツキを見て、シゲンはその思案を見透かすように笑みを浮かべた。そして先手を打つように口を開いた。
「そういえば『旅籠町』の件で捕縛された『煌鴟梟』の者達は『ヒュウガ』殿に利用される形で二人ほど連れ出されたようだが、その中の一人の方は『煌鴟梟』の組織から離れていた筈のお主の元へ向かっていたようだな?」
ずっと思案を続けていたイツキは、そのシゲンの言葉に視線を上げるのだった。
「ミヤジの事を言っているのか? 確かにアイツは『ヒュウガ』殿に利用されて俺を『加護の森』に向かわせる為に『旅籠町』から連れ出されたようだが、アイツ自身は『ヒュウガ』殿の企みを知っていたわけじゃない。アイツは単に俺の為に利用されただけに過ぎないし、トウジにしたってそうだ。アイツは『ヒュウガ』殿の誘いを断って自分自身で生きていこうと決意をしていた筈だ。アイツはそういうやつだったからな……!」
彼は奥底に封印していた感情が、シゲンとの会話で再び表に出てこようとするのを必死に抑えつける。
そして『トウジ』も『ミヤジ』もヒュウガに単に利用されただけだと強調するように告げる。
シゲンはわざと『ヒュウガ』に利用された『煌鴟梟』の件の二人を引き合いに出した事で、イツキの意識を上手く誘導させて結論を出させやすいように、自分の思い通りに仕向け始めるのだった。
「お主の言葉を全てそのまま信用するつもりはないが、それでもソフィ殿の事を話してくれるのであれば、お主だけではなく、その『ミヤジ』という男も自由にしてやってもいい。本当であれば『旅籠町』を脅かしていた『煌鴟梟』の幹部の者達を解放する事はあり得ない事だ。ソフィ殿の件が無ければ二度と日のあたる場所に出される事はなかったという事を考慮して、よく考えて答えを出して欲しい」
「ああ、分かっているさ。こんな取引は本来ならあり得ないだろうからな」
そして口元に手をやったイツキは再び思案を始めたが、今度はそこまで長い時間ではなかった。
「悪い……。ソフィ殿の事は正直に見た事を話すから、俺の代わりに『サノスケ』『ミヤジ』そして『退魔組』の退魔士衆である『ヒイラギ』『クキ』『ユウゲ』。そしてその退魔士達の護衛剣士である『ヤエ』『ミナ』『サキ』そして『退魔組』の部屋住みとして働いていた者達の解放を頼めないか? もちろん頭領であった『サテツ』殿の解放は難しいだろうから、単に命令に従っていただけの連中を解放してやってほしいんだ」
そのイツキの申し出にシゲンは、予想がまるっきり外れたようで不思議そうに眉を寄せた。
「どういうつもりだ……? 確かに『退魔組』の頭領である『サテツ』を出すわけにはいかないが、今回のヒュウガ殿が出したであろう命令に、直接関係のなかった『退魔組の者達や先程の交渉に挙がった『煌鴟梟』の者達を解放してやることはそこまで難しい事ではないが、お主自身はいいのか?」
「もちろん俺も出してくれるっていうなら出してもらいたいところだが、これだけの人数を無理言って解放してもらうんだ。当然俺も出してくれって自分から言うつもりはない。ただ『ユウゲ』や『ミヤジ』達はこんな俺を信じてついてきてくれた者達だ。実際『ユウゲ』に至っては、ヒュウガ殿の命令を受けた時に『ケイノト』を離れるかとまで進言したんだ。それを俺が断った。そして結局俺についてきたせいでアイツも捕縛されちまった。ミヤジにしたってそうだ。一度はあのまま何処へでも逃げられる自由の身になったっていうのに、わざわざ俺のところにきちまったせいでアイツも捕縛されちまった。だから、俺はいいからアイツらを出してやってくれねぇか?」
「……」
(どういうつもりだ?)
シゲンはイツキの真意を確かめようとジッと睨むように視線を送る。
そのシゲンの視線を逸らさずにイツキは、本気だとばかりに視線で返すのだった。
……
……
……
その上に総長シゲン直々に便宜を図ってくれて、今後生きやすい環境を整えてくれるかもしれないと感じたイツキは、自分が今どれだけ重要な立場なのかを自覚した後、直ぐに客観的にも考え始めるのだった。
(他に何か利用できる手立てはないか? あくまでこれは『金色の体現者』だとかいう『力』を生まれ持っていた俺があの『ソフィ』殿と戦ったからこそ、こんな好機の場を与えられているんだ。誰にも直ぐに真似ができる状況ではないし、あの『妖魔山』にソフィ殿が妖魔退魔師と共に同行する今しか出来ない交渉なのだ。考えろ。何かもっとこの場面を活用出来て、この俺だけじゃなく他にも捕らえられた『ユウゲ』や『ミヤジ』達も自由に出来て、今後一生楽に暮らせる方法を探れ!)
イツキはこの恵まれた交渉の場を与えられた事で、手にした好機を最大限に活かせとばかりに、自分に言い聞かせながら脳内で常人では考えつかないことや、思いつかない案を次々と考えては打ち消していき、このシゲンを相手に首を縦に振らせる『交渉案』を恐ろしい速度で考え始めるのだった。
唐突に目の前で黙り込んで何かを考え始めたイツキを見て、シゲンはその思案を見透かすように笑みを浮かべた。そして先手を打つように口を開いた。
「そういえば『旅籠町』の件で捕縛された『煌鴟梟』の者達は『ヒュウガ』殿に利用される形で二人ほど連れ出されたようだが、その中の一人の方は『煌鴟梟』の組織から離れていた筈のお主の元へ向かっていたようだな?」
ずっと思案を続けていたイツキは、そのシゲンの言葉に視線を上げるのだった。
「ミヤジの事を言っているのか? 確かにアイツは『ヒュウガ』殿に利用されて俺を『加護の森』に向かわせる為に『旅籠町』から連れ出されたようだが、アイツ自身は『ヒュウガ』殿の企みを知っていたわけじゃない。アイツは単に俺の為に利用されただけに過ぎないし、トウジにしたってそうだ。アイツは『ヒュウガ』殿の誘いを断って自分自身で生きていこうと決意をしていた筈だ。アイツはそういうやつだったからな……!」
彼は奥底に封印していた感情が、シゲンとの会話で再び表に出てこようとするのを必死に抑えつける。
そして『トウジ』も『ミヤジ』もヒュウガに単に利用されただけだと強調するように告げる。
シゲンはわざと『ヒュウガ』に利用された『煌鴟梟』の件の二人を引き合いに出した事で、イツキの意識を上手く誘導させて結論を出させやすいように、自分の思い通りに仕向け始めるのだった。
「お主の言葉を全てそのまま信用するつもりはないが、それでもソフィ殿の事を話してくれるのであれば、お主だけではなく、その『ミヤジ』という男も自由にしてやってもいい。本当であれば『旅籠町』を脅かしていた『煌鴟梟』の幹部の者達を解放する事はあり得ない事だ。ソフィ殿の件が無ければ二度と日のあたる場所に出される事はなかったという事を考慮して、よく考えて答えを出して欲しい」
「ああ、分かっているさ。こんな取引は本来ならあり得ないだろうからな」
そして口元に手をやったイツキは再び思案を始めたが、今度はそこまで長い時間ではなかった。
「悪い……。ソフィ殿の事は正直に見た事を話すから、俺の代わりに『サノスケ』『ミヤジ』そして『退魔組』の退魔士衆である『ヒイラギ』『クキ』『ユウゲ』。そしてその退魔士達の護衛剣士である『ヤエ』『ミナ』『サキ』そして『退魔組』の部屋住みとして働いていた者達の解放を頼めないか? もちろん頭領であった『サテツ』殿の解放は難しいだろうから、単に命令に従っていただけの連中を解放してやってほしいんだ」
そのイツキの申し出にシゲンは、予想がまるっきり外れたようで不思議そうに眉を寄せた。
「どういうつもりだ……? 確かに『退魔組』の頭領である『サテツ』を出すわけにはいかないが、今回のヒュウガ殿が出したであろう命令に、直接関係のなかった『退魔組の者達や先程の交渉に挙がった『煌鴟梟』の者達を解放してやることはそこまで難しい事ではないが、お主自身はいいのか?」
「もちろん俺も出してくれるっていうなら出してもらいたいところだが、これだけの人数を無理言って解放してもらうんだ。当然俺も出してくれって自分から言うつもりはない。ただ『ユウゲ』や『ミヤジ』達はこんな俺を信じてついてきてくれた者達だ。実際『ユウゲ』に至っては、ヒュウガ殿の命令を受けた時に『ケイノト』を離れるかとまで進言したんだ。それを俺が断った。そして結局俺についてきたせいでアイツも捕縛されちまった。ミヤジにしたってそうだ。一度はあのまま何処へでも逃げられる自由の身になったっていうのに、わざわざ俺のところにきちまったせいでアイツも捕縛されちまった。だから、俺はいいからアイツらを出してやってくれねぇか?」
「……」
(どういうつもりだ?)
シゲンはイツキの真意を確かめようとジッと睨むように視線を送る。
そのシゲンの視線を逸らさずにイツキは、本気だとばかりに視線で返すのだった。
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