最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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サカダイ編

1419.高まる期待感

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 イツキの言葉に真意を探ろうと睨むように視線を送っていたシゲンだったが、やがて少しの時間の後に口を開くのだった。

「いいだろう……。ソフィ殿の話を口にする事を条件に、お主とサテツ殿以外の『退魔組』の者達を解放してやることを認める」

「無理を言ってすまないな。言い分を認めてくれて感謝するよ。妖魔退魔師の総長殿」

 ――こうして妖魔退魔師の総長として『シゲン』は、イツキの要求に応えて『交渉』を成立させるのだった。

「どうやらお二人の話し合いは終わったようですね。そろそろこちらも総長にご報告したいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」

 そして二人の話がまとまったタイミングで副総長の『ミスズ』が部屋に姿を見せるのだった。

 どうやらシゲンとイツキがぶつかり合う前に部屋の前に到着していたのだろうが、総長シゲンに考えがあっての戦闘が行われていたのだろうと判断したようで、彼を信頼して止めに入る真似もせずに彼女は部屋の前でずっと待っていたようであった。

「ああ……。しかしその前にそこのイツキ殿をヒュウガ殿の方ではなく、退魔組の者達を入れている牢に入れておいてくれ」

「分かりました」

「それとその牢にいる『退魔組』の者達の中から数名程、イツキ殿の代わりに解放する事にしたから出す用意をしておいてくれ。その者達の事と何があったかの事情は、また追って話すからよろしく頼む」

「……分かりました」

「頼んだぞ」

 一度目と同じ返事をしたミスズではあったが、少しだけニュアンスが異なり、本当にいいのかと尋ねる意味を込めての意味合いで返事をした様子であった。

 シゲンの視線を承諾の意と受け取ったミスズは頷き、そして視線をシゲンからイツキへと変える。

「ではイツキ殿。再び最初の部屋に戻って頂きますが、どうやら縛っても意味はなさそうですのでそのまま移動をお願いします。この期に及んで暴れるような真似はしないと信用していますが、もし何かあれば腕の一本は覚悟して頂きますのでご了承下さいね」

 イツキから視線を外さずにそう告げると、ミスズは眼鏡をくいっと上げながら軽く微笑むのだった。

「拘束を無理矢理解いたのは謝るから、そんな怖い顔しないでくれよ……。今更そんな真似をするつもりはないよ」

「ふふっ。分かっていますよ。それでは行きましょうか」

「ああ。案内よろしく」

 そう言ってイツキとミスズは、シゲン一人を残して部屋から去っていくのだった。

「ふっ……。数年ぶりに『金色』の『力』を使わせられたな。しかし過剰すぎるというわけでもなかった。あのまま使わなければ少々面倒な事になっていただろう」

 部屋で自分一人となったシゲンは再び自分の手に『金色』を集約し始めると、その掌を見つめながら笑みを浮かべるのだった。

「間違いなくあのイツキという男は『ヒュウガ』殿などより強い力を有していただろう。しっかりと指導する『師』という存在が居れば今頃は『妖魔召士』組織でも相当に上り詰められていた筈だ。俺の見立てでは『サイヨウ』殿や『シギン』殿と並ぶ程の逸材だと思えたが……。しかしそれでもあの口ぶりでは『ソフィ』殿には全く歯が立たなかったとみるべきだろうな。詳しい話をしっかりとイツキ殿には話してもらわねばまだ分からないが、俺の予想を上回る存在であることは間違いはなさそうだ」

 シゲンはイツキという男の強さを理解した事で、これまで以上にソフィに対する期待感を持つのであった。

(我々が『妖魔山』の管理の権利を得たタイミングで『金色の体現者』の出現に、ソフィ殿達の出現が重なるか……。これは偶然なのか? それとも『妖魔山』の禁止区域に居る何者かの導きなのか? どちらにせよこの好機チャンスを逃す手はないな)

 最早『妖魔山』以外にこの『ノックス』の世界で自分の力量を試す存在が居なくなったと判断していたシゲンは、今回の『妖魔山』の管理の権利を得た事で、これ以上の好機はないとばかりに笑みを零すのだった。
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